2024年04月16日( 火 )

作図、見積もりの手間を解消して「時短革命」~次世代加工部品調達プラットフォーム、ミスミの「meviy」(メヴィー)(後)

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国内製造業における調達の市場規模は約138兆円で、そのうち機械部品が約8兆円を占めている。機械部品とは生産設備・装置に必要とされる各種部材(ボルトや金型基盤など)、この調達には実に多くの「時間」を擁し、また多くの無駄があった。業界の特質と風潮からあえて必要とされてきたタイムロス、それが「不要」であることを知らしめたサービスがある。

メヴィーは採用すべきサービスか?答えは「YES」

ミスミグループ・D2M企業体社長の吉田光伸氏

 加工部品の調達プロセスで、時短に成功したメヴィー。すでにTOYOTAやキヤノンなど大手メーカーが採用し、利用企業は増え続けている。では、地方に拠点を置く中小企業にとってメヴィーの使い勝手はどうなのか。新たなサービスを活用する際、まず懸念されるのが「価格」と「人材」だ。同社3D2M企業体社長・吉田光伸氏への取材を基に、この2点を考察する。

 まずは価格面の検証。メヴィーの活用費用とメヴィーを利用した調達品の相場はどうなっているのか。

 実はメヴィー自体の利用、つまり3Dデータをアップロードして見積金額と納期を確認することについては無料となっている。システムを利用するには企業ごとのアカウントを作成する必要があるが、アカウント登録にも費用はかからない。また機械部品の価格は同社の50年以上に渡るものづくりの経験を踏まえ、AIによる自動見積によって変動しない金額を設定している。地域差や時期によるバラつきが多い業界で安定した価格で機械部品を提供するのは、ミスミの歴史を生かしたメヴィーの大きな特徴の1つである。

 次に人材、メヴィーを扱う「ヒト」に関する要素はどうなのか。いま在籍する人材でサービスを利用することができるのかは、中小企業経営者にとって懸案事項の1つだろう。

 一度体験するとすぐにわかるが、メヴィーのシステムは非常にコンパクトかつ明瞭に設計されている。吉田氏は「メヴィーはUI、UXの両面にとくに力を入れている。つまり、わかりやすさと使いやすさを徹底して追及した」と話す通り、初心者に近い人材であっても選んだカテゴリーから希望の仕様を選択するだけで、また加工の属性を自由に設定できるなどこだわった設計にも対応することが可能だ。

 板金加工でいえば、「曲げる」と「穴をあける」加工が必要だった場合、曲がっている個所に穴が近いと技術的に不可能、もしくは可能であっても値段が跳ね上がり納期にも大きな影響が出ることがある。図面に落とすことはできるが、実際に加工は困難な状況だ。これに対してメヴィーでは、実現不可能な仕様を選択した際にアラートを表示する仕組みを擁しており、さらに「曲げと穴の間に必要な距離を提示」することで解決策まで設計者に伝えることができる。このサジェスト機能は、ヒューマンエラーによる誤発注を未然に防ぐとともに、設計者ごとの癖を減らし、社内の設計が標準化されるなど、幅広い利点をもたらす。

経営の観点からみる導入のメリット

meviyは、2019年度の経済産業省大臣賞を受賞した

 メヴィー採用によって得られる「調達時間の削減」は、機械製造におけるコストの大幅削減を可能にする。基本的に機械メーカーは発注(購買)部門と設計部署がわかれている場合が多く、発注部門は、設計部門から渡される図面を基に合い見積もりをとって、発注先を選定している。そのため、図面を作成する設計部署は費用に対する意識が高くない場合が多い。

 しかし、メヴィーの場合、設計者自身が見積システムを利用することで、ちょっとした仕様変更でコストを削減できることを知ることができる。全体のリードタイムも大幅に削減されているため、トータルで大きなコスト削減効果が期待できる。

 「仕様を少し変えるだけで、なかには数倍近く値段が違うものもあります。これまで考えられなかったような大きなコストが、手間をかけずに削減できるのは大きなメリット」(吉田氏)。

 こうしてメヴィーの活用により、設計部門と購買部門の両面からコストダウンができるようになるのだ。さらに、こうした時短・コストダウンの積み重ねにより、開発にかける時間をより増やすことができる。グローバル化の進展と新興国の台頭により、機械メーカーは他社との差別化を図る必要に迫られている。人材不足から現状維持が精一杯の企業も多くあるなか、メヴィーによって得られた時間と浮いた費用は、自社の特性をさらに強化する商品開発にあてられるべきだ。

 吉田氏は「メヴィーを普及させるうえで最大の壁は、『まず導入してもらうこと、使ってもらうこと』。一度使っていただければ、良さを実感してもらえる自信はあります」とする。世界基準の競争のなかで、厳しい闘いを強いられている国内機械メーカー。部品調達における無駄を極限まで排したメヴィーが、救世主となるかもしれない。

(了)
【麓 由哉】

<COMPANY INFORMATION>
(株)ミスミグループ本社
代表取締役会長:西本 甲介
代表取締役社長:大野 龍隆
所在地:東京都文京区後楽2-5-1
設 立:1963年2月
資本金:130億2,300万円
売上高:(19/3連結)3,319億3,600万円

 

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