2024年04月30日( 火 )

作図、見積もりの手間を解消して「時短革命」~次世代加工部品調達プラットフォーム、ミスミの「meviy」(メヴィー)(中)

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国内製造業における調達の市場規模は約138兆円で、そのうち機械部品が約8兆円を占めている。機械部品とは生産設備・装置に必要とされる各種部材(ボルトや金型基盤など)、この調達には実に多くの「時間」を擁し、また多くの無駄があった。業界の特質と風潮からあえて必要とされてきたタイムロス、それが「不要」であることを知らしめたサービスがある。

ミスミの3大イノベーション、標準化、半製品、確実短納期

 こうした状況のなか、ミスミが成し遂げた「第一革命」ともいえるのが商品の“標準化”だった。つまり本来は特注品である部品を、カタログに掲載された寸法や仕様の一覧表から選ぶだけでセミオーダーのように購入できるようにしたのだ。このカタログ販売は大盛況となり、ミスミの名を世に知らしめるきっかけとなった。

 販売開始当初はポケットに収まるサイズであったカタログは、徐々に商品数を増やした結果“名物”的分厚さとなり、20年3月現在商品点数は2,940万点、サイズバリエーションを含めると800垓(1兆の800億倍)点と業界最大級となっている。

 このカタログ販売を支える第二革命が“半製品”だ。半製品とは、最終加工の手前まで加工された状態を指す。既製品であればあらかじめサイズや材質など決まっているため、事前に生産して在庫しておけば短納期での出荷が可能となる。しかし、機械部品として求められる多くはサイズも材質も一部品ごとに異なる特注品だ。その時々によって顧客が求める部品が変わるため、発注ごとに一からつくり始めなければならず、納期が長期化してしまう。これを解消したのが半製品だ。商品を受注ごとに最初から生産するのではなく、カタログに掲載された仕様の範囲内で途中まで加工し、在庫しておく。あとは受注が入った際に、最終加工部分のみ行うことで生産時間の大幅削減を実現した。これにより、顧客は細かい仕様の機械部品でも短納期で調達することが可能となった。

meviyのサービス画面/切削プレート3Dview

 標準化および半製品によって実現したのが機械部品の“確実短納期”、第三の革命だ。通常、特注品は顧客から図面を受け取り、価格と納期を見積もり、受注となった後に製作、納品されていた。図面からの見積もりは約1週間かかり、受注後の製作から納品までは約2週間が通常だった。

 これに対し、同社はカタログ販売によって見積もり自体をなくし、価格のみならず納期まで明示することができた。また大量の半製品を世界各地に在庫することで、納品先に合わせた加工場で生産、画期的な「標準2日目出荷」を実現した。同社は20年3月現在、世界各国に営業拠点64カ所、配送センター17カ所、生産拠点23カ所を擁しており、納期遵守は99%以上を保持している。

 この3つのイノベーションにより起こった時短の革命は、製造業界を大きく進展させた。同社は約30万社の直接取引を行っており、その6割以上が海外企業となっている。

第4のイノベーション「meviy(メヴィー)」

meviyで調達した製品例

 同社は16年、業界にさらなるイノベーションを巻き起こした。次世代加工部品調達プラットフォーム「meviy(メヴィー)」(以下、メヴィー)のサービス開始だ。メヴィーはAI技術を導入することで、カタログ販売の限界を超えたサービスを提供する、まさに加工部品調達のデジタル革命といえる。

 メヴィーの最大の特徴は、機械の加工部品の見積もりから発注までのプロセスをコンパクトかつスマートにしたことにある。カタログ販売で標準化を実現した同社だが、機械をつくるにはさらに複雑な加工部品が必要となる。カタログ販売による標準化には限界があり、それに外れたものは図面を作成しての見積もりが必要となる。カタログでは指定できない細かな仕様で発注ができるメリットはあるものの、図面の作成や見積もりのやりとりなど手間も時間も要した。メヴィーはこの課題をAI自動見積もり技術と3D CADデータ(以下、3Dデータ)の活用から解決した。

 メヴィーでは見積もりを希望する商品の3Dデータをアップロードすることで、瞬時にAIが自動で見積金額と納期を算出することができる。アップロードしたデータを基に細かい仕様をその場で自由に変え、都度見積金額を確認することが可能となる。そのため、発注者は見積金額を何度も問い合わせる必要がなく、またカタログでは選択することができない仕様や部品でもメヴィーでは発注できるようになった。

 そしてメヴィーでは、発注者から提供された3D設計データを基に製造プログラムを自動で生成、各工場とダイレクトに連携することで最短1日出荷という驚異的なスピードを実現させた。これにより複雑な機械の加工部品であっても、発注者の作図、見積り待ちの時間が必要なくなり、かつ短納期が可能となった。

(つづく)
【麓 由哉】

<COMPANY INFORMATION>
(株)ミスミグループ本社
代表取締役会長:西本 甲介
代表取締役社長:大野 龍隆
所在地:東京都文京区後楽2-5-1
設 立:1963年2月
資本金:130億2,300万円
売上高:(19/3連結)3,319億3,600万円

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