2024年03月19日( 火 )

ストラテジーブレティン(252号)~「コロナパンデミック中間総括」(前)

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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載していく。今回は2020年5月28日付の記事を紹介。

 日経平均株価、NYダウ工業株は、2~3日でそれぞれ1,000円、1000ドルという急騰を繰り返す局面に入ってきた。すでにコロナショック後ほぼ4割の暴落から、半値戻しを達成しており、半値戻しは全値戻しの格言通り、本格的上昇場面に入った可能性が濃厚である。

 武者リサーチは、コロナパンデミックによる暴落は、日本株式長期上昇のステップボードになる可能性が大きいと考えてきた。その根拠は6月10日に発売される、『アフターコロナ、V字回復する世界経済』(ビジネス社)に詳述している。以下はそのはしがきである。

 武漢だけだと思っていたコロナ感染が瞬く間に全世界に蔓延し、医療崩壊はイタリア、米ニューヨーク州など先進国を直撃した。全世界の被害は感染者数500万人、死者数30万人と発生源の中国の70倍に達し、最悪シナリオをはるかに超えたパンデミックの展開であった。

 世界的に経済活動がほぼ停止状態になり、あらゆる経済指標は戦後最悪、失業率は大恐慌以来最高になった。この新型コロナは感染力が著しく強く、ワクチンの完成、集団免疫獲得までは、Withコロナの時代が続く。あと半年から最長で3年、この間経済の完全回復は困難である。人的接触を回避しながら恐る恐る経済活動が再開されても、第二波、第三波の流行が起きその都度活動は圧迫される。

 世界株価はコロナ感染勃発後に4週間で4割という史上最速ペースの暴落となった。しかしその後2週間で下落の半値戻しを達成、これまた史上最速の戻りであった。フィナンシャルタイムズなど経済ジャーナリズムは、この株価の急回復はユーフォリア(多幸感)で持続性がないとキャンペーンを張っている。エコノミスト誌は「ウォールストリート(株価)とメインストリート(現実の経済社会)の危険な断絶」という特集(5/9-15日号)で、楽観を戒めている。先進国の感染者数は3月末でピークを打ち、経済は戦後最悪の低水準から上向いてきている。米国はじめ各国政府・中央銀行は禁じ手を連発して財政・金融救済策を打ち出し、経済金融の崩壊を防いでいる。これが市場に安心感をもたらしているのである。手放しに楽観できる状況にないのはいうまでもないが、当局も報道も専門家も、ことさらに楽観しないようにバイアスをかけていることも事実である。経済と市場はもっと合理的であるはずである。

 リーマン・ショック後しばらく鳴りを潜めていた悲観論者が、「だから見たことか」とばかりに登場し、憂鬱なムードをさらに暗くしている。悲観論の根底には、リーマン・ショック後の経済成長は禁じ手政策の連発による砂上の楼閣であり持続性はない、という大局観がある。コロナパンデミックは、いずれ下されるべき審判を速めたに過ぎない、というわけである。

 これに対して武者リサーチははっきりと、長期経済ブームの波は終わってはいない、コロナの後は再度上昇の波に戻ると主張したい。理由はコロナが歴史の流れを押し進めると考えられるからである。コロナパンデミックという世界的惨事が歴史の流れをせき止めていた障害物を一気に押し流し、長期的に経済成長率を高め、株価を押し上げると考える。

 誰しも一番知りたいのは、今まで続いていた経済繁栄が終わったのか、それとも一時的に遮断されただけなのか、であろう。コロナが起きる直前までは世界経済はブーム状態、ネット情報通信革命が進展し、米国の失業率は3.5%と史上最低まで低下、株価はリーマン・ショック後10年間で4倍になった。この長期的経済ブームが続くとすれば、株価の鋭角的戻りは必ずしもユーフォリアとはいえない。むしろ大きく下落したところは絶好の仕込み時ともいえる。

 米国株式を100年単位で振り返ると、20年間で10倍になるという長期ブームとその後の10年間の調整が繰り返されてきた。1950~60代年NYダウは100ドルから1000ドルへと10倍になったが、1970年代の10年間は1000ドルとまったくの横ばいであった。1980~90年代の20年間には1000ドルから10,000ドルへと10倍になったが、2000年代の10年間はITバブル崩壊、リーマン・ショックという2つの暴落があり、ならしてみれば10,000ドルで横ばいであった。2010年代に入り再度20年10倍の勢いで上昇相場が始まっていた。この戦後3回目の大波が終わったのかどうかが問われる。

(つづく)

(後)

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