2024年03月29日( 金 )

アンピールマンションの設計偽装 仲盛昭二氏が新栄住宅へ質問書を送付!

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 構造設計一級建築士 仲盛昭二氏は、新栄住宅(本社:福岡市)が分譲したアンピールシリーズマンションについて 構造設計の偽装があったとして、6月8日、分譲会社である新栄住宅に対し 質問書を送付した。
(質問書は以下の通り)


新栄住宅(株)
代表取締役社長 木庭 律明 様

令和2年6月8日
仲 盛 昭 二   
TEL:080-3900-1386

質 問 書 

 私は、先日、アンピール香椎駅前の中古物件を購入するため 売買契約を締結し、手付金300万円を支払いました。住所の変更を済ませ 引越しの準備を進めている期間に、同マンションの図面と構造計算書を拝見しました。これは、将来売却することを想定して、安全性に問題がないかを確認するためでした。
 結果の詳細は別紙にて添付いたしますが、A棟・B棟・C棟の3棟とも耐震強度が不足しており、構造計算の偽装が明らかになりました。
 私がアンピールマンションの購入を決めた理由は、福岡のマンション業界のトップである御社が分譲されたマンションは安心して購入できると思ったからです。しかし、私の期待は裏切られてしまいました。
 アンピール香椎駅前における構造計算の偽装および耐震強度不足が判明したので、決済日の前に 不動産仲介会社2社(三井不動産リアルティ九州、福屋不動産販売)を通じて 売主に「構造計算の偽装および耐震強度不足の事実」を伝えました。売主。不動産仲介会社2社の三者とも「構造計算の偽装および耐震強度不足の事実」を認め、手付金を返還され、契約解除となりました。
 もし ほかのアンピールマンションシリーズにも構造計算の偽装があれば 放置できないので、他のアンピールマンションについても調べたところ、アンピール百年橋においても偽装が発覚しました。また、他の13件についても同様の現象となっており、これらは解体・建替を要する違法建築です。
 つきましては、以下の質問にお答えいただき、御社が販売されたマンションの適法性について説明をお願いいたします。

アンピール香椎駅前に関する質問
 アンピール香椎駅前は鉄骨鉄筋コンクリート造(以下「SRC造」)です。SRC造の保有水平耐力計算において、必要保有水平耐力を求めるために用いる重要な係数の1つである構造特性係数(Ds値)は、建築基準法施行令 第82条の3および建設省告示「昭55建告1792号」に定められており、この規定に適合しない建物は法令違反となります。
 本マンションの張間方向においては、鉄骨柱に有効な鉄骨部材(ウエブ材)が配置されていないため、本来は鉄筋コンクリート造(以下「RC造」)のDs値を用いて保有水平耐力計算をしなければなりません。しかし、建築確認申請用の構造計算においては、Ds値をSRC造として低減されたDs値に偽装した保有水平耐力計算が行われています。(構造計算書 保有水平耐力比の欄において 構造形式が「表現上だけのSRC造」となっており 実態とは法的にも技術的にも異なった 不正な構造計算となっています)

【質問1】張間方向に鉄骨が存在しない架構を有する場合の保有水平耐力計算における構造特性係数Ds値の不正について

 張間方向に鉄骨が存在しない架構の場合、張間方向の保有水平耐力計算において、低減されたSRC造のDs値(構造特性係数)ではなく、RC造のDs値を用いた計算をしなければ 法令規準違反になります。しかし、アンピール香椎駅前では、RC造のDs値ではなく 低減されたSRC造のDs値(構造特性係数)を用いた計算不正な構造計算が行われています。
 貴社は、法令違反の設計が行われたマンションを販売された事実を認めますか?もし、認めない場合は、アンピール香椎駅前が法令違反でなく、適正な耐震強度を有していることを、構造計算書の該当箇所を示して 具体的な説明をお願いいたします。

アンピール百年橋に関する質問

【質問2】
 アンピール百年橋は、質問1と同じ偽装の他、1階鉄骨柱脚が非埋め込み形であり、1階の構造特性係数(Ds)をRC造の値としなければならないところ、SRC造として低減されたDsにて計算が行われています。
 貴社は、法令違反の設計が行われたマンションを販売された事実を認めますか?もし、認めない場合は、アンピール百年橋が法令違反でなく、適正な耐震強度を有していることを、構造計算書の該当箇所を示して 具体的な説明をお願いいたします。

【質問3】
 アンピール百年橋の1階鉄骨柱脚は非埋め込み形なので、1階鉄骨柱脚の鉄量は柱頭の鉄量と同等以上でなければならないと定められています。しかし、アンピール百年橋の1階柱脚の鉄量は柱頭の51%しかなく、規定に対して49%も不足した状態となっています。
 貴社は、アンピール百年橋の1階柱脚の鉄量が規定を満足していない法令違反の状態であることを認めますか?もし、認めない場合は、アンピール百年橋が規定を満たしている立証してください。

 ここで指摘したマンションは、不正に作成された構造計算書による建築確認申請が行われ、審査機関のチェックミスなどにより 不正に建築確認済証の交付がなされたものであると考えられます。行政は善意で建築確認審査を行っており 不正に設計されたものと認識していないと思われるので、「建築確認済証が交付されている」というような虚偽の回答は控えてください。

 ここに挙げた「アンピール香椎駅前」「アンピール百年橋」以外にも13件のアンピールシリーズのマンションにおいて、同様の現象が生じています。

 耐震強度が不足したマンションが倒壊した場合、当該マンションの住人のみならず、近隣の建物や歩行者にも危害を与えることになり、アンピールマンションの区分所有者が被害者だけではなく加害者という立場になります。
 アンピールマンションが倒壊し、近隣の住民たちまで巻き込むような事態は避けるべきであると思いますが、貴社は どうお考えになるでしょうか?
 上記で質問した3項目は、いずれも高度な検証を要するものではなく、10分もあれば確認できる内容です。構造計算書の該当する部分を示して簡潔に説明できるものです。
 3項目の質問への回答は、令和2年6月22日までに、文書にて仲盛までお願いいたします。


 仲盛氏が新栄住宅に送付した質問書は以上の通りである。当社データ・マックス特別取材班では、仲盛氏が新栄住宅へ送付した質問書を踏まえて、アンピール香椎駅前の設計を行った司建築設計事務所(福岡市)および アンピール百年橋の設計を行った群設計工房(福岡市)、建築確認の管轄である福岡市建築指導部に対しても、6月10日 質問書を送付した。
 新栄住宅のアンピールマンションは福岡市近郊を中心に相当な数が分譲されており、中古での売買も多い。これらのマンションに違法建築の疑いがあり、地震が発生した場合の安全性にも疑問が残る。マンションを販売した新栄住宅および設計事務所は、マンションの法適合性と安全性を客観的に証明し、区分所有者を安心させるべきである。

【桑野 健介】

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