2024年04月20日( 土 )

九州南部豪雨 今後も警戒を!

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 7月4日4時50分に気象庁から大雨特別警報が発令された、熊本・鹿児島両県。発令後わずか約1時間後に、熊本県球磨村で球磨川が氾濫したと発表した。同村などで民家が浸水し、熊本県は自衛隊の災害派遣を要請。球磨川氾濫により、警戒レベル5の最大級の警戒が呼び掛けられた。

※警戒レベル5
「何らかの災害がすでに発生している可能性が極めて高い状況となっています。命を守るための最善の行動をとってください」

降雨状況の推移(mmはすべて1時間あたり)

4日午前3時20分に、熊本県芦北町で降雨量約110mmを観測された後
同日午前3時30分
 熊本県八代市  約120mm
 熊本県球磨村  約110mm
 熊本県芦北町  約120mm
 熊本県天草市  約110mm
 熊本県津奈木町 約110mm

同日午前6時00分
 芦北町 約110mm

同日午前6時30分
 芦北町 約120mm
 球磨村 約110mm

同日午前8時30分
 熊本県人吉市   約110mm
 熊本県あさぎり町 約110mm
 球磨村      約110mm

 ほか、宮崎県えびの市・小林市・都城市・宮崎市・日南市・児湯郡都農町・高鍋町、鹿児島県阿久根市・出水市・伊佐市でも記録的大雨に襲われた。

 6日の、芦北町・人吉市など4市町で計24人の死亡、3市町村で16人の心肺停止、4市町村で11人の行方不明者が出ている。今後さらに犠牲者が拡大されることが予想される。
 また家屋および商店などの建物への床上浸水、国道3号、219号をはじめ、幹線および県道・市道が寸断されている。球磨川に架かる八代市坂本町の深水橋、人吉市の西瀬橋も流された。本日も雨も断続的に降り続いており、被害の全容は不透明だ。

 犠牲となった方々へ哀悼の意を表し、ご遺族の方々にお悔やみを申し上げる。また被害に遭われた方々へお見舞いを申し上げたい。

街が瓦解し途方に暮れる

 球磨村では、球磨川の支流に近い(特養)『千寿園』や住宅が浸水した。
 千寿園では入所者ら14人が心肺停止となった。周辺の道路も冠水したため、自衛隊などがヘリコプターやボートで救助に当たった。自衛隊は同園の入居する約50名を救助した。救助に駆けつけたときは、同園1階は浸水し手がつけられない状態で、ほか施設内も崩壊したいたという。

 温泉街である人吉市の旅館や商店も、甚大な被害を受けた。建物の2階まで浸水する状況で、宿泊客らは3階や屋上へ避難した。新型コロナウイルス感染拡大による自粛を経て営業再開できた矢先の大雨による河川氾濫で、再び苦しい状況に陥った。また医療機関においても、新型コロナウイルス対策用のマスクと防護服が流され、途方に暮れている。住民は「6日以降も大雨に見舞われるとの予報。また球磨川が氾濫するのではないか」との不安を抱えている。
 以上と同様の街内被害は、熊本県南部全域で発生している。詳細な被害全容は、まだ調査中の段階だ。

線状降雨帯の豪雨が相次ぐ

 福岡管区気象台によると、九州南部豪雨の原因について、「7月3日に東シナ海の梅雨前線上に低気圧が発生し4日未明には九州北部地方に進んだ。低気圧の東進にともなって3日夜には梅雨前線が九州北部地方まで北上、低気圧や前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、九州では大気の状態が非常に不安定となった。4日未明から朝にかけ、熊本県と鹿児島県では記録的な大雨となった」と分析している。端的に、「雨雲が次々と発生し、風の流れで帯状に連なる線状降水帯が要因となった。近年線状降水帯による豪雨は、相次いでおり、全国各地警戒が必要である」と分析する気象専門家もいる。

治水対策が急務

 今後は、警察・消防・海上保安庁・自衛隊そして自治体の官庁と企業・団体など民間が一体となった人命救助と被災地復興への対策が講じられる。

 安倍晋三首相は、4日に第1回関係閣僚会議を開催した。5日に豪雨非常災害対策本部会議を招集し、
「九州地方の記録的な大雨による球磨川の氾濫や土砂災害により、大きな被害が生じています。お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りし、ご遺族の皆さまにお悔やみを申し上げたい。そしてすべての被災者の皆さまにお見舞いを申し上げます。本日、非常災害対策本部を設置しました。各位にあっては、決定した方針に基づき、被災者の救出救助に、全力を挙げるとともに、電気や水道などのライフラインの早期回復、被災者の支援などに、全力で当たってください。何よりも人命が第です。孤立した住宅などからの救助、安否不明者の捜索に全力で当たってください」
 と表明し、武田良太防災担当大臣を現地に派遣した。4万人超の動員による、被災地救助・支援活動を実施する。

 今回の九州南部豪雨は天災と同時に、人災であるとの指摘がある。九州地方整備局八代河川国道事務所によると、過去1965年7月から10回の河川氾濫による洪水に見舞われおり、甚大な被害をもたらしてきた。1966年に球磨川水系の川辺川ダム計画が発表されたものの、地域住民が反対。直近では2019年に、現実的治水対策を国と自治体で協議しているなか、協議は平行線状態だ。

 福岡管区気象台は「今後は福岡県ふくめ九州北部が大雨となります。十分な警戒が必要です」と述べる。

【河原 清明】

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