2024年04月26日( 金 )

朴ソウル市長の死去で大きく揺れる韓国社会(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

儒教の影響が強かった、かつての韓国社会

 現在はそうでもないが、数十年前までの韓国は、儒教の影響が強い国であった。今の若者には儒教の影響はあまりないが、筆者の年齢となると、その影響が大きいことを否定できない。

 筆者はクリスチャンで教会に通っていたが、教会でも男性と女性の席は別々に分かれていた。韓国では男女共学制度を採用している学校は少なく、学生時代に女性に接する機会はほとんどなかった。筆者の記憶では、ベーカリーで女子学生に会っていることが先生に見つかったら、停学処分を受けたりするほどに、男子生徒と女子生徒が別々に過ごすことは鉄則だと考えられていた。

 なぜそのような規則が必要だったのか、今でも私は理解に苦しんでいるが、当時は当たり前だった。それに、その当時は、まともな性教育を受けた覚えもない。無知はあこがれを呼ぶだけだが、貧しい時代だったため、性の欲求があっても解決する方法がほとんどなかったような気がする。筆者の大学生時代は学生運動が盛んで、多感な人は民主化運動に明け暮れていた。趣味として本を読み、政治的な話をすることで欲求を発散していたのかもしれない。

経済が成長し、昔とは違って「夜の文化」が発達

 しかしその後、韓国は、経済的に大きく発展した。1965年の時点では、韓国の国民1人あたりのGDPは約65ドルで、北朝鮮やフィリピンよりも貧しかった。ところが、朴正照大統領就任(63年)後、韓国は経済を立て直すことに注力し、「漢江の奇跡」と呼ばれる経済発展を遂げることになる。

 世界から援助を受けていた国が、援助する側になった事例は、世界の歴史を見渡しても韓国しかないという。現在の韓国の国民1人あたりGDPは、3万ドルを上回っており、世界でも類を見ないほど、韓国は短期間で圧倒的な成長を成し遂げている。

 経済が発展して豊かになったのは良いものの、その裏でいろいろな副作用も発生している。昔と違って、今はありとあらゆる種類の「夜の文化」が発達している。今ではカラオケに行くと、一緒に歌を歌ったり、踊ったりしてくれる女性(ドウミ、助っ人という意味)も呼ぶことができる。高価な個室クラブをはじめ、性的な接待を受けられる施設も増えている。以前とは違って、性に対する意識も変わった。むしろ女性が性に積極的になっているなど、社会の様子は激変している。学生時代に性教育を受けたことがなく、貧しくてそのような欲求を発散する方法も知らずに過ごしてきた世代が権力を握るようになると、長く抑制していた欲求が噴出したのかもしれない。

(つづく)

(後)

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