2024年04月20日( 土 )

福岡アジアビジネスセンターの海外ビジネスセミナー~コロナ対策に成功しているベトナムは経済成長を維持

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 新型コロナウイルス感染拡大により国境を越えた経済活動が制限されるなか、福岡アジアビジネスセンターは、ウェブにてセミナーや商談会を継続している。

 先日、ベトナムに関するセミナーを聴講した。セミナーはコンサルティング会社・アジアゲート・ベトナム代表の豊田英司氏を講師に迎え、「コロナウイルス前後のベトナムの状況変化と今後のビジネス展望について」というタイトルで、ベトナム国内のコロナ感染と対策、マクロ経済、外国企業の進出、労働市場の現況についての紹介が行われた。以下、その内容について紹介する。

新型コロナ対策の成功と往来の制限

 (セミナー後にあいにく初の死者が発生したとはいえ、)7月半ば時点での死者は0人、感染者は373人、うち多くは海外からの帰国・入国者であり、コロナ対策がうまくいっていると世界的に評価されている。そのためか、ベトナムは海外から人を入れることに対して消極的。マスクをしている人は少ないという(7月下旬時点)。

 両国間の往来について、5月、6月に運航したチャーター便の乗客に対してはベトナム到着後に2週間の隔離が求められた。現状では、日本でPCR検査を受けて陰性  反応が得られている場合でも隔離が求められる。ベトナム国内において日本でのコロナ感染拡大の状況が伝えられているため、日本人出張者は警戒される雰囲気があるという。

 今後のフライトの再開について、まず成田、関空路線が再開し、その後に福岡線の再開という運びとなるため、順調にいって、福岡線の再開は9月中旬以降になるのではないかとの見立てだ。

相対的に好調な経済

 新型コロナに苦しむなかでも、1-6月のGDPは前年同期比1.81%増(19年は通年で前年比6.77%増)であり、うち4-6月のGDPは前年同期比0.36%増であった。周囲の東南アジア諸国と比べてよい数値とのことだ。

 内需は回復基調にある。1人あたりGDPは約27~28万円とされるが、統計に含まれない現金取引が多く、実際の収入はもっと多いと理解してよいようだ。

貿易、投資ともに存在感増す中国

 貿易面では、輸出入とも中国の増加が目立つ。中国国内におけるAPPLE製品のOEM工場が移転してきている。また、現地での部品などの調達においても中国サプライヤーへの依存度合いが高まっている。

 直接投資をみても、中国からの投資の伸び幅が大きく、とくに企業団地への視察ツアーでは、7割は中国企業という印象を受ける。その背景には米中貿易摩擦があり、また中国国内の人件費の高まりを受けて海外に生産拠点を移転していることがあげられる。現在の状況は中国企業が日系企業のライバルになってきているということだ。
 ベトナムへはタイからの投資も伸び幅が大きい。主な投資先は、経済規模が大きい南部が中心となっている。

ベトナムの貿易状況

日本企業にとっての事業環境

 豊田氏が有望として推薦するのは介護事業だ。
 日本の介護事業の強みとして用具が豊富なことがあげられる。日本国内の介護人材不足問題の解消のため、海外から人材を引っ張ってこざるをえず、現地での施設運営と現地からの日本向け人材確保をセットで事業を考えるべきだという。よい仕組みを構築できれば長期的かつ安定した事業経営が見込めそうだ。

 日本製品への信頼度が高い分野の1つが健康・医療品分野であるが、参入障壁、個人輸入などが問題となってくる。
 サプリ・健康食品に関しては、ベトナムで輸入する会社がライセンスを取得する必要があり、同国の審査関連の人材不足という理由により半年~1年待たされることもあると いう。自社で現地企業を設立してライセンスを取得することも検討すべきとのことだ 。上記の理由から、代理店と関係が悪化したときには、新たに代理店を探しライセンスを取得してもらう必要が生じるためだ。

 製造業・加工業に関しては、ほとんどの業界で日本の企業が進出済みであり、日系企業も競争相手になる。これに中国企業などベトナム以外の国の企業も加わると理解すべきという。

給与は毎年7%昇給

 人件費は毎年約7%の比率で増加している。
 給与水準が高いのは非製造業のIT系・金融業で、マネージャーレベルになると、年間2万ドルであり、日本人の給与レベルに近づいているといえる。ベトナムの人件費は安いといイメージをもつのは控えるべき。低い給与を提示しても、バックマージンなどで稼ごうとするか、同社内にマネージャーポストの空きがなければ転職されると思ってよい。
 製造業のワーカーに関しては、縫製業などでの人員整理で労働市場に人が流出しているため、採用自体は難しくないという。

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