2024年03月29日( 金 )

中国経済新聞に学ぶ~女性が「独身貴族」になるのは幻想?(後)

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 現在、おひとり様が世界的なトレンドになっている。社会の高齢化より生まれた高齢者の単身世帯を除くと、単身世帯の多くの部分を若い人が占める。ここ数年、この単身者層にターゲットを合わせる企業が現れて、「おひとり様経済」は今や企業が利益を求めて競い合うブルーオーシャンになった。

 「おひとり様経済」ブームは、おひとり様向け商品、おひとり様の社会や文化の育成を通じて、自主独立の生き方を求める女性を応援する。しかしおひとり様がビジネスになるときには、女性の独立の主張が消費主義に包まれて、従来の紋切り型の性規範の旧套に戻らないよう、十分に警戒しなければならない。

「消費主義」の落とし穴と「独身貴族」の幻想

 おひとり様ブームの出現にともない、おひとり様市場に照準を合わせる企業がますます増えている。「おひとり様経済」や「孤独経済」といった概念が短期間のうちに次々と登場し、おひとり様は今すぐに開発したいビジネスの宝庫に変わった。このことにより、おひとり様は企業が力を入れるセールスポイントの1つに成り下がってしまうことや、おひとり様が提唱する独立した開放的な新しい生活スタイルという本来の意味が失われてしまうことを人々は懸念せざるを得なくなった。

 おひとり様が1つのビジネスに変化するとき、女性の独立の主張が消費主義に包まれて、従来の紋切り型の性規範の旧套に戻らないよう十分に警戒しなければならない。誰の目にも明らかであるのは、現在の「おひとり様経済」の消費をめぐる主張のなかには、女性の「美しさ」に対する要求が相も変わらず混在していることだ。「おひとり様経済」のもと、女性はこれまで以上に「自分を愛さなければならない」と教えられ、「自分を愛する」ことの重要な指標は「自分のためにはお金を惜しまない、自分に投資する」ことといわれている。

 このロジックを踏まえて、女性の「美しさ」の追求は進むことはあっても、追及されなくなることはない。流れに乗って次々と登場するさまざまな売り文句の「女王」向け製品、「女神」向け製品を見ていると、目がくらくらしてくる。国金証券が発表した「おひとり様経済専門テーマ報告」でも、「自分を喜ばせるための消費」が「おひとり様経済」の4大消費分野の1つとなっており、調査データから、シングル若年層の平均可処分所得のうち化粧品が5~10%を占め、女性がコア消費層であることがわかる。

 「おひとり様経済」の提唱のなかでは、経済力と消費力があることと、女性の自主的な地位とが単純に、いささか乱暴にイコールで結ばれている。「おひとり様経済」ブームのもと、女性の独立とは、女性のすべてのニーズが大量消費によって満たされることになっている。

 経済力はその強大な力によって、おひとり様と暮らしの美学、風格、趣を結びつけ、おひとり様を「独身貴族」に仕立て上げて美化すると同時に、果てしのない消費の幻想を次から次へとつくり出し、自己意識から生まれたおひとり様への願望を、資本力という「巨大なビル」に到達するための渡り石に変えようとしている。

 資本がつくり出した「独身貴族」の桃源郷のなか、シングル若年層が理想的な「洗練された」暮らしをするために必要な支出が収入に追いつかなくなり、「隠れた貧困」に陥るというケースが多くみられる。

 「おひとり様消費のカーニバル」のなかで、私たちはこのことを冷静に見据え警戒する必要がある。

(了)


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