2024年03月29日( 金 )

安倍首相辞任を中国はどう報じたか アベノミクスに一定の評価

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 28日午後2時過ぎからNHKなどが安倍首相辞任の速報を流すと、海外メディアも日本メディアを転載する形で速報を流した。中国でも同様であり、関心の高さがうかがわれた。

 中国の公式な評価を知るため、「人民日報」、「CCTV」(中国中央テレビ)などの官製メディア、また報道機関ではないが外交部記者会見の報道官コメントを取り上げる。

 安倍首相の辞任の理由が体調悪化によるものということもあって、批判的な論調はあまり見当たらない。人民日報もCCTVも、安倍首相の経歴や辞任に至った経緯などを詳細に、しかし淡々と説明している。今後について、次期首相有力候補者の名前と選出方法について紹介しているが、とくにどの人物が中国に対して好意的であるかなどについては触れていない。慎重に情勢を見守ろうということであろう。

 安倍政権の政策・実績については、29日の外交部記者会見において、報道官が「近年、中日関係は正常な軌道に戻るとともに新たに発展しており、両国の指導者は、新しい時代の要求に合った中日関係の構築を推し進めるという共通認識に達した。私たちは安倍首相がこのために行った重要な努力を高く評価しており、一日も早い快復を祈る」と述べ、無難な言葉遣いながらも肯定的に述べている。

 辞任の理由について、新型コロナウイルスの感染拡大の下、経済成長が落ち込んでいることおよび安倍内閣への支持率が30%代と低迷していることについて触れ、体調悪化が本当の理由なのかという疑問も呈している。

 経済面に関しては、ネットメディアの「時代財経」が政府系シンクタンク中国社会科学院日本研究所の識者のコメントを紹介しており、参考になる。

 同研究所副所長の張季風は「総合的にみて、業績を上げたのは明らかだが、代償も小さくない」と総括する。

 安倍政権の達成事項として2012年12月から18年(10月)までの景気拡大、株価上昇、円安、失業率の低下、税収増加などを挙げ評価している。また、経済外交では、FTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)の締結を増やしたこと、いまなお成立していないが、TPP、RCEPへの取組などを評価している。

 しかし、安倍政権の下、国の借金が膨らんだこと、量的緩和政策への依存の高さ、インフレ目標の未達などを問題として挙げている。

 同研究所の田正・研究員は「アベノミクスの政策の全体的なフレームは、日本のバブル崩壊以降の耐えざる実践とその経験・教訓の総括を基礎として形作られたもの」であり、この政策セットは比較的整ったものであると評価する。それゆえ、「外部で言われるように”アベノミクス”は新型コロナによって台無しになるというものではなく、引き続き観察が必要である」としている。

【茅野 雅弘】

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