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2020年10月22日 15:40

ヤクルト本社、仏ダノンとの資本関係解消 背景にはダノンを利用した経営陣と販社の対立(後)

 仏食品大手ダノンは10月6日、保有するヤクルト本社の全株式6.61%を売却すると発表した。売却額は600億円規模。両者は約20年にわたる資本関係を解消したことになるが、ヤクルトにとって中身をともなわない提携関係で時間を空費した20年だった。ヤクルトとダノンの提携を、社内抗争の歴史から見てみる。

松園家の持ち株比率を落とすためにダノンに株を所有してもらう

 社長の堀が怯えたのはオーナー的存在の松園家の影響力である。当時、ヤクルトの「天皇」と呼ばれた元会長松園(故人)の資産管理会社、松尚(株)(神奈川県藤沢市)が、ヤクルト株の6.5%を保有する筆頭株主だった。彼が亡くなった後は双子の兄、松園直巳が松尚を引き継いだ。社長の堀にとって、松園家は目の上のたんこぶだった。

 松園家の影響力を封じ込めるためには、松尚の持ち株比率を落とすしかない。そこで、堀はダノンに出資を頼んだ。ダノンは2000年4月、ヤクルト株を5%取得した。その程度の出資比率では安心できない堀はさらなる買い増しを求め、ダノンは03年4月に株式を20%まで買い増した。

 これで松尚は持ち株比率を落とし、堀は松園家の圧力から解放された。そして2004年3月、ダノンは今後5年間、現状保有している20%以上の株式を買い増さないなどとする契約(スタンドスティル〈現状維持〉条項)を結んだ。

販社が暴いた「サンヨーフーズ」の暗部

 松園家の影響力を封じ込めたことにより、堀は社長の地位を守った。
 堀体制で、本社の発言力は強まった。松園時代には販売会社のオーナーたちが取締役を占めていたが、堀時代になると販社出身の取締役はいなくなった。

 堀は追い落としの口実を与えないために好調な業績を持続する必要があった。商品の販社への卸値を上げて、利益を本社に吸い上げていった。しかし、ヤクルトレディを擁する販社は利幅が薄くなったため、経営が苦しくなり、不満が高まっていった。

 販社が反撃の材料にしたのが、果実加工品卸会社「(株)サンヨーフーズ」と堀の癒着である。松園時代には、暴力団・右翼・総会屋に資金を流すウラ金づくりのため、ヤクルト製品の原料に使う果実の卸会社「太陽ファーマーズ」(04年廃業)が存在した。堀時代にサンヨーフーズとの取引が拡大した。年商が100億円を超えるサンヨーフーズは、「堀が大きくしたようなもの」と販社から批判の声が挙がる。

 販社の窮状を理解した松園家の資産管理会社、松尚の松園直巳は05年秋以降、ダノンに接近、堀体制の変革を働きかけ、その一方で、販社にはヤクルト株を持ち続けるよう説得した。松尚と販社がダノン側についたことは、「敵の敵は味方」という構図になる。

堀政権打倒のため、販社がダノンと組む

 松尚の訴えを受け、ダノンは販社の窮状を理解し、堀体制の変革が必要と判断した。06年後半から、複数のファンドを利用して秘密裡にヤクルト本社株を買い進め、ダノン側の保有比率は40%を超えた。圧倒的な株式を握ったことから、ダノンは07年に入ると事態の改善を堀に迫った。

 味方だと思っていたダノンの突然の要求にうろたえた堀は、ある条件を提示する。「向こう5年でサンヨーフーズとの関係を絶ち切り、自分も5年後には経営から退く」と提案し、これ以上株を買い増さないよう求めた。これを受け入れ、ダノンは出資比率を引き上げない期間を2012年までに変更することで合意した。

 しかし、堀は何のアクションも起こさなかった。12年5月、出資比率を引き上げない期間が切れ、ダノンがヤクルト株を36%まで買い増す権利が発生した。
 堀長期政権を打倒するため、販社がダノンと組む、という前代未聞のTOBが想定されていたのである。だが11年12月、販社を束ねていた松尚の松園直巳が他界したことが、堀には幸いした。

 ダノンは、敵対的TOBは日本にはなじまないとして、13年1月、敵対的TOBを実施しないと発表。同年4月、04年に結んだ業務提携契約を解消した。堀はダノンから逃げ切ったものの、契約を守らない信用が置けない男の烙印がついた。堀澄也は17年6月、会長兼最高経営責任者(CEO)を退任した。1996年に社長となり、20年以上続いたトップの座から降りた。

 堀の退任を見届けたダノンは18年2月、ヤクルト株を最大15%売却すると公表。そして20年10月、ダノンは残るヤクルトの全株式6.61%を売却すると発表。これでヤクルトとダノンの資本提携は終わった。
 ダノンとの資本提携は、堀澄也が松園家の影響力を減殺するための自己保身によるものであった。ヤクルト本社は20年もの時間を空費した。

(了)

【森村 和男】

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