2024年04月29日( 月 )

次期衆院選で大波乱が生じる予兆

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 NetIB-Newsでは、「安倍首相が菅氏に禅譲した最大の理由は、安倍不祥事の隠ぺいにある。菅氏は日本学術会議会員の任命拒否で違法な人事権濫用によって窮地に追い込まれており、次の衆院総選挙で巨大なドラマが展開される舞台回しが急速に進行している」と訴えた11月7日付の記事を紹介する。


内外政治状況に大きな変革の波が襲い始めている。
米国大統領選では民主党バイデン候補の当選が確実な情勢である。

郵便投票の開票には時間がかかる。
そのため、開票結果の確定に時間がかかっているが、投票所での投票が開票された時点でトランプ氏が優勢だった諸州で、郵便投票の開票が進むに連れて結果が逆転している。

アリゾナ、ネバダ、ジョージア、ペンシルベニアでバイデン候補が勝利を収める可能性が高まりつつある。
これら4州でバイデン候補が勝利するとバイデン候補の獲得選挙人数は306人になり、過半数の270を大幅に超える。
選挙人獲得数でバイデン候補の大勝ということになる。

上院選でも民主党は善戦しており、上院は民主党と共和党が勢力拮抗の状況になる可能性がある。
上院、下院、大統領の3つで民主党が主導権を握るトリプルブルーに情勢が近づく可能性がある。

トランプ大統領は不正選挙を主張しているが最高裁がこれを認めて選挙結果を覆す可能性は低い。
トランプ大統領は敗北を宣言しない可能性が高いが、客観情勢がトランプ敗北を認定する状況が強まるだろう。

トランプ氏は2016年の選挙で勝利を得た。
ワシントンのエスタブリッシュメントが政治を支配することに対する米国民の批判を背に受けての勝利だった。

しかし、トランプ大統領は4年間の実績で米国政治に不満を持つ米国民の意向を十分に反映する政治を展開できなかった。
これがトランプ大統領の敗因である。

日本では7年8カ月続いた安倍内閣が終焉した。

安倍内閣の最大特徴は政治私物化である。
森友、加計、桜を見る会と不祥事が続いた。
森友事件では自死に追い込まれた赤木俊夫さんの妻が訴訟を提起し、新たな事実も発覚し始めている。
この裁判が本格化するタイミングを迎えている。

さらに、決定的な要因になったのが河井克行・案里夫妻の公選法違反事件の捜査が本格化したこと。
この事件捜査が本格化すれば、自民党本部の家宅捜索が実施されることになる。

河井氏夫妻公選法違反事件には安倍首相事務所が深く関与していると見られ、資金の出所についても捜査が行われる可能性が高かった。
安倍内閣は黒川弘務氏を検事総長に引き上げて事件捜査に蓋をする考えを有していたと見られるが、これが失敗した。

このなかで安倍氏が首相を辞任して菅義偉氏に政権を譲り渡し、河井夫妻事件に蓋をする。
検察は検事総長人事で実を取ることで了承する。
このような取引が行われたと見られている。

菅内閣誕生劇は用意周到に練られた三文芝居だった疑いが強い。
三文芝居の上演によって内閣支持率を回復させることに成功したように見えるが、数値はメディアによってかさ上げされたもの。
あっという間にメッキがはがれる構造だろう。

菅内閣が発足して初めての国会論戦が始まったが、菅首相の国会答弁能力に赤信号が点滅している。
日本学術会議会員任命拒否は菅首相が人事権によって日本を支配することを誇示するために強行された事案であると考えられる。

法の規定を超えて独裁権限を振るう行動を誇示する策略であったと見られる。
しかし、この違法行為に対する批判が沸騰し、菅首相はたちまち立ち往生している。

不法行為を正当化するための詭弁は通用せず、菅首相の国会対応能力の欠落が鮮明になっている。
会員任命拒否が撤回され、6名の会員候補が正式に任命されることになる可能性が高い。
内閣支持率も急落することになると見られる。

10月25日に実施された富山県知事選では自民党が推薦する現職知事が落選した。
昨年4月に実施された福井県知事選でも現職知事が落選した。
いずれも知事を4期務め、5期目の続投を狙った選挙だった。
政治に大きな変革の波が生まれ始めている。

次期衆院総選挙で政権交代が実現する環境が整い始めている。
自公政権を打破する勢力が政権交代に向けての政策公約と首相候補を明示し、すべての選挙区での候補者一本化を実現する検討を直ちに始動させるべきだ。

米国ではトランプ大統領が選挙結果を承認せず、訴訟に持ち込む方針を示しているが、この行動に対する支持は広がらない可能性が高い。
獲得選挙人数が僅差になる場合、接戦州の開票再集計などの措置が妥当性を有することになるだろう。

しかし、獲得選挙人数に大差が生じる場合には、不正選挙の訴えも広範な支持を得るとは考えられない。
得票数が僅差の場合には、開票結果の精査を行うことが正当化されるから、実施される州が浮上するだろう。

しかし、トランプ敗戦州が多数にわたる場合には、票の再集計で結果が覆る可能性は高いと考えられない。
最高裁の陣容は保守系6、リベラル系3に変化したが、保守系の6名の判事がすべての事案についてトランプ大統領に肩入れするわけではない。

すでに提起されたノースカロライナ州やペンシルベニア州の郵便投票に関する訴訟案件でも、最高裁がトランプ大統領側の主張を退けている事例が観察されている。

郵便投票においてはバイデン票が優勢であることは当初から想定されていた。
郵便投票の開票が進むにつれて、バイデン得票が増えるのは当然のことで、これを「不正」と主張しても国民全体の賛同は得られない。
「すべての投票を数えろ」の主張が妥当性を有している。

もちろん、不正投票は存在する可能性が高い。
不正投票を排除すべきことも当然だ。
しかし、不正投票が存在するから、不正でない投票の集計も行うべきでないとの主張は説得力をもたない。

今回の大統領選では投票率が大幅に上昇している。
米国民の関心が高まった結果である。
その高い投票率の選挙での投票を集計した結果に対しては、両候補とも敬意を表する必要がある。

トランプ大統領は米国の分断を加速させた。
この実績に対する評価が今回の大統領選の結果である。

バイデン候補はバイデン候補であることによって支持を得たのではなく、トランプ候補でないということによって支持を集めたといえる。
バイデン支持の側面よりもトランプ不支持の側面が強い。

日本では安倍内閣から菅内閣への禅譲が行われた。
安倍首相が菅氏に禅譲した最大の理由は、安倍不祥事の隠ぺいにあると考えられる。

菅首相がその気になれば、安倍不祥事の精査を実行できる。
石破内閣が誕生すれば安倍不祥事にメスが入れられることになっただろう。
これが、何としても石破内閣を阻止しなければならない最大の事情だった。

岸田内閣が誕生した場合も、安倍不祥事にメスが入れられることを防げるかどうか不明だ。
安倍氏と共犯関係にある菅内閣誕生でなければ安倍不祥事の隠ぺいを確保できない。
これが菅氏への禅譲の最大の背景であったと推察される。

検察は検事総長人事で安倍内閣と対峙した。
しかし、結局は検察サイドが望んだ林真琴検事総長が実現する運びになった。
このことにより、河井克行・案里夫妻の公選法違反事件の捜査を自民党本部にまで拡張することが中断されたのだと考えられる。

菅氏は安倍首相から禅譲された身ではあるが、安倍前首相の生殺与奪の権を握っているともいえる。

「石破がつき 岸田がこねし天下餅 座して食らうは菅義偉」といわれるが、権力を握った菅氏が安倍氏の実権を奪いに行く、「大坂冬の陣、夏の陣」が展開されるとの見立てもある。

全権を掌握した菅氏が、その全権を内外に知らしめようとしたのが「日本学術会議会員任命拒否事件」であると考えられる。

しかし、「好事魔多し」だ。
菅氏は「法の支配」に対する知識が不足していた。
違法な人事権濫用に踏み込んで、いきなり窮地に追い込まれている。

次の衆院総選挙において巨大なドラマが展開される舞台回しが急速に進行し始めている。


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