2024年03月29日( 金 )

支離滅裂・悪行三昧菅義偉内閣

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を紹介する。今回は、「菅内閣は新型コロナを第2類相当指定感染症に区分したまま、Go Toトラブルキャンペーンを全面推進。学術会議会員任命拒否、ハゲタカ資本への巨大な利益供与となる種苗法改定、利権によるワクチンの政府買い上げ、とすべてにおいて支離滅裂である」と訴えた11月21日付の記事を紹介する。


菅内閣は新型コロナ感染症の感染拡大を推進している。

最大の要因はGoToトラブルキャンペーン。
人の移動と感染拡大は明瞭にリンクする。
人の移動指数推移と新規陽性者数推移は約3週間のタイムラグをともなって連動する。

また、季節性も影響する。
冬期は気温と湿度が低下する。
室内換気も悪化する。
このために、冬期に感染が拡大する傾向がある。

日本における陽性者数拡大は必然の結果だ。
菅義偉首相が「感染拡大防止に全力をあげる」と発言する意味が不明。
「感染拡大推進に全力をあげている」と発言すべきだ。

他方で、菅内閣は新型コロナ感染症を第2類相当指定感染症に区分している。
極めて危険の大きい感染症として新型コロナ感染症を位置付けている。
この区分に位置付けながら感染拡大を推進するのは「殺人行為」だ。

現状の運用は陽性者の隔離、全数調査、濃厚接触者追跡などを義務付けている。
このまま進めば医療崩壊は確実だ。

菅内閣は感染拡大防止と経済活動維持の両立が必要だと唱える。
その理由から、Go Toトラブルキャンペーンを中止できないという。
しかし、そもそも、経済活動維持のためにGo Toトラブルキャンペーンを推進することが間違っている。
最大の理由は、巨大な国家予算の配分が公正でないこと。

新型コロナ感染拡大で経済には重大なダメージが生じている。
そのダメージは旅行と飲食に限られていない。

また、Go Toトラブルキャンペーンは主に旅行と飲食をターゲットとするものだが、旅行と飲食でダメージを受けている事業者に対して、均等に恩恵を施すものになっていない。
Go Toトラブルキャンペーンの利用者も利益を享受するが、利益をまったく享受できない者が多数存在する。

巨大な国費を投じる事業の公平性が保たれていない。
旅行関係の事業者がコロナの影響で苦境に直面したが、Go Toトラブルキャンペーンによる利益供与には著しい偏りがある。
1泊4万円の宿泊に対する利益供与が最大になるため、この価格帯での宿泊サービスを提供する事業者に利益供与が集中している。

これらの事業者は、これまで値引き販売していた価格を定価に引き戻し、さらにサービス内容を微修正して、実質値上げを行って、Go Toトラブルキャンペーンに合う商品を提供している。
この結果、コロナ以前の収益を大幅に上回る濡れ手に粟の利益を享受する事業者が続出している。

その一方で、コロナ不況にあえぐ一般市民はGo Toトラブルキャンペーンの利益供与から完全に取り残されている。
自殺者も急増している。
政府が真っ先に手を差し伸べなければならない人には完全な無策で、政府と癒着する事業者、富裕層にだけ巨大な利益を供与する施策は健全な施策といえない。

安倍内閣の下で特定事業者に利益を供与することによって見返りを求める利権官庁と利権政治屋が主導して、このような筋の悪い施策が策定された。
経済産業省、国土交通省の利権体質が生んだ産物だ。

他方、新型コロナ感染症を第2類相当指定感染症に区分していることがコロナ騒動拡大の主因になっている。
日本では当初から新型コロナの検査が十分に行われてこなかった。
日本のコロナ対応は大失策だった。

東アジアにおけるコロナ被害が軽微に収まったことで九死に一生を得たが、東アジアの被害が深刻であれば日本の被害は突出して甚大なものになったと考えられる。

安倍内閣は感染抑止よりも五輪開催優先のスタンスを示した。
そのために、1月28日に第2類相当指定感染症に区分しておきながら、感染抑止の強い措置を取らなかった。
いま、菅内閣は新型コロナを第2類相当指定感染症に区分したまま、Go Toトラブルキャンペーンを全面推進している。

「感染拡大防止に全力をあげる」と言いながら、外国人の入国制限緩和、訪日外国人の公共交通機関利用制限緩和などの措置を検討し始めている。
すべてにおいて支離滅裂。
この支離滅裂が菅内閣を早期に退場に追い込む主因になるだろう。

臨時国会が開会されているのに、実質審議が行われない。
野党は学術会議問題を厳しく追及する方針を示していたはずだ。
ところが、予算委員会で一通りの追及をしただけで、その後は集中審議も開かれない。

野党は予算委員会での、杉田官房副長官を参考人招致しての集中審議を求めたはずだ。
ところが、与党がこれに応じない。
野党は立憲民主党の安住淳国対委員長が折衝役になっているが、その役割をまったくはたしていない。

臨時国会には
政府によるワクチン巨額買い付けにかかる予防接種法改定、
農家のタネの自家採種を原則禁止する種苗法改定
などの極めて重大な法改定案が提出されている。

ワクチン事業者に巨大な利益を供与するもの、日本農業を破壊し、ハゲタカ資本に日本農業を売り渡すものである。

学術会議問題での杉田官房副長官招致、予算委での集中審議を強く求め、与党がこれに応じない限り、予防接種法や種苗法の審議には応じないという強い姿勢を示すのは当然のことだ。
コロナ感染症の感染も拡大しており、コロナ問題での集中審議を求めるべきだ。

ところが、立憲民主党の安住淳国対委員長が与党に完全服従の状態。
国会は開店休業の様相を呈している。

その一方で、国民に重大な不利益を与える悪質な法改定案の審議が行われ、十分な審議もしないまま、採決が強行される事態が発生している。
野党の責任も重大なのだ。

立憲民主党の政策調査会では種苗法に賛成する提案まで示されたという。
森ゆう子副代表が一喝したと伝えられている。

タネの自家採種は農業生産者固有の権利である。
タネは元来、人為的な創作物でない。
天が賦与した自然資源である。

「食料・農業植物遺伝資源条約」は農業生産者の自家採種の権利を明確に定めている。
人為的な改良によって創作された新品種の育種権を保護することは必要だが、農業生産者による自家採種を原則として禁止するのは完全な間違いだ。

在来種、固定種についても、ハゲタカ資本が急激な勢いで品種登録を進めている。
天が賦与した自然資源を私物化する動きだ。
種苗法改定はハゲタカ資本による、このような自然資源私物化を全面的に後押しするものになる。

日本国内の育種権者の育種権を保護することを目的とするなら、現行法体制の下で十分に対処できる。
種苗法を改定して、原則として農家の自家採種を禁止するのは、ハゲタカ資本への巨大な利益供与に他ならない。
このような悪質な法改定が強行されようとしている。

新型コロナの被害状況は第2類相当指定が合理的なものでないことを示している。
ところが、菅内閣は第2類相当指定を変えようとしない。
最大の理由は巨大なワクチン予算を計上することにある。

コロナ感染症を第5類感染症に区分変更するなら、政府によるワクチン買い上げは正当化されなくなる。
この巨大予算に利権がすし詰め状態になっている。

コロナの第2類相当指定感染症区分
Go Toトラブルキャンペーン
種苗法改定
ワクチン政府買い上げ
学術会議会員任命拒否
のすべてが間違っている。

この支離滅裂内閣、悪行三昧内閣を放置している野党の責任もまた重大である。


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