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2020年11月25日 15:06

ポスト・コロナの世界情勢 未来を見据えた「中堅」国家としての日本 九州・福岡の壮健企業100社 

リベラルアーツ21/DEVNET INTERNATIONAL
代表理事/理事 高橋 一生 氏

新しい時代の到来

 現在進行形で世界を覆うコロナ禍は今後、「Withコロナ」の時期を経て、「Afterコロナ」「Post(ポスト)コロナ」の時代へと変化していきます。ポスト・コロナの時代になれば、おそらく新しい文明を形成することになるでしょう。

 人類の歴史は疫病との戦いの歴史でもありました。ペストやスペイン風邪が流行した際も、疫病の後には新たな文明・国家が形成されてきました。歴史を振り返ると、新たな文明の勃興には1世紀ほどの時間がかかっていますが、昨今の時代の移り変わりの早さを考えると今回はもっと早く、数十年後には新しい文明が到来することが予期されます。その新しい文明とはこれまでの欧米中心の文明ではなく、世界全体のさまざまな価値、システム、国家間における力関係によって築かれていくものです。

 コロナ・パンデミック(世界的流行)は経済・社会的大惨事になっているだけでなく、米中覇権闘争と絡み合い、新冷戦構造を形成させつつあることによって、これまでの西欧文明中心世界から新たなグローバル文明に転換する契機にもなっていきます。

 こうした視点からポスト・コロナの世界に関して考察を加えることが重要な課題といえるでしょう。そうした世界で日本のはたすべき役割とは何か。日本の歴史上初めて、世界的に大きな意義をもつものになりそうな気配が濃厚だと私は考えています。

 この20年近く進められてきた経済・社会のデジタル化が、コロナ・パンデミックによって急速に進展します。職住接近が1つの流れだったものが、今まで職住「融合」が多くの国で新たな社会のかたちになっていきます。また、これまでの大都市集中社会が地方分散型に移行し始めるであろうし、それは航空システムを変革することにもつながるでしょう。国際的連携は地方同士の比重が格段に増え、それは「国家」資本主義とは逆の方向に社会を向かわせて、国際社会に新たな市民社会をもたらすに違いありません。

 また、感染予防の一環として個々人の行動をチェックする体制が強化されつつありますが、その延長線上には徹底した監視社会化も予想され、多くの人たちが指摘するように、今後重要な問題になる可能性は否定できません。

 緊急時と平時を明確に峻別することは現実的になかなか困難です。監視社会化が進むとすれば、感染の懸念が弱まった段階で、それをどのように解除するかが政治の質を問うことになります。それはとりも直さず我々国民1人ひとりの判断が問われるということでもあります。

(一社)DEVNET INTERNATIONAL の世界総裁・明川文保氏(左)と同社団・理事の高橋一生氏

「世話焼き」国家としての日本

 Withコロナの時代からポスト・コロナの時代にかけて、国際社会は極めて危険な道のりを進むことになり、同時にそれは新たなグローバル文明の黎明につながるはずです。米国と中国は消耗戦を繰り広げることによって、ともに世界の大国ではあっても、かなり身動きの取れない国になっている可能性があります。

 そうした枠組みのなかでは国際社会における多様な課題が表面化するとともに、早急な問題解決が求められるようになるでしょう。このような時代には、国内基盤が堅固かつダイナミックな社会で、メッセージの発信力が豊かなリーダーに恵まれた主要中堅国家の役割が大きくならざるを得ません。こうした役割をはたすべき国家の1つが、日本なのです。

 近代の日本は、明治維新と第二次世界大戦における敗戦の二度にわたって、自前の国家構想を実現する機会を逸しました。明治維新の際には優れた国家構想力をもった何人かの逸材が出ましたが、彼らはすべて明治への移行期もしくは移行直後に暗殺されています。第二次大戦後は幣原喜重郎、吉田茂、芦田均らが占領軍と渡り合いながらも、極めて不十分な国家構想しか描くことができなかった。今は1世紀半前に遡り、日本の世界的知性を再発見しつつ、令和日本の国家構想を構築することが1つの出発点になるでしょう。これから始まる政府の拡大未来投資会議での作業が文明史的視点をもちつつも現実的な課題の深彫りができるように、我々自身も広く長期的視点を重視した国家構想論を展開しなくてはなりません。

 19世紀前半の日本の識字率は世界一であり、多くの藩校や寺子屋を通して知性・感性が伝えられた国民一般に対する信頼が厚かった。政府は民の力を引き出すことを主要任務と位置付けており、まさに「民力中心国家」日本といえました。またこの知性・感性は世界に向けて広げられ、世界を導きうる資質をもつことを確信してもいた。世界にある多様な価値、たとえば西洋の科学技術などもその可能性と限界、さらにその方向性を指し示すことが日本の役割であることを認識していたのです。特筆すべきは、あまた存在するもめごとについて、それらの問題を解決する手助けをすることも日本がなすべきこと、と考えていたことです。

 世界の世話を焼く中堅国家としての日本は、防衛戦略としても重要になります。世界に冠たる「世話焼き国家」日本であるべきなのです。ポスト・コロナに勃興するであろう新しい文明の構築において、国際的には多様な緊張・紛争が表面化するでしょうが、それらの諸問題の調整役が強く求められています。日本は、政府だけでなく民間セクターを含め、国家として先見性をもった取り組みを進める必要があります。


<プロフィール>
高橋 一生
(たかはし・かずお)
 1965年国際基督教大学(ICU)卒業。日本を代表する社会学・政治学者の1人として、コロンビア大学東アジア研究員、OECD(経済開発協力機構)パリ本部エコノミスト、東京大学客員教授、国連大学客員教授など数々の教育・研究機関で歴任。現在、リベラルアーツ2一代表理事、DEVNET INTERNATIONAL理事、アレキサンドリア図書館顧問などを兼任している。 

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