2024年03月29日( 金 )

【縄文道通信第55号】縄文道と現代アニメーション文化―世界はなぜ日本のアニメ文化に注目するのか――縄文道の視点からの考察(前)

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(一社)縄文道研究所

 NetIBNewsでは、(一社)縄文道研究所の「縄文道通信」を掲載していく。
 今回は第55号の記事を紹介。

 昨年7月18日に、世界的に有名な京都のアニメ会社である(株)京都アニメーションが人災による火事で主な建物が全焼する事件が発生し、日本のみならず世界中で大きな話題として取り上げられた。

 多くの著名な漫画作家も犠牲になり、36人の関係者が亡くなった悲劇であった。漫画作品やさまざまな資料も喪失し、世界の漫画文化の一大損失と大きな騒ぎになり、日本の総理大臣、国連事務総長、世界各国から哀悼の意が評され、約30億円の義援金や寄付金が集まったと報じられた。

 この事件を通じて、日本のアニメ文化の実力が世界の多くの人々に知られることになった。

 世界中のさまざまな国の多くの若者が日本の漫画文化に注目し、アニメーション文化を日本で本格的に学びたいという留学生も多い。日本中の本屋では、漫画のコーナーがその3分の1近くを占める店もあり、日本の総理大臣の経験者のなかにも漫画を愛読していることを堂々と公言する方もいる。

 まず、日本にはなぜ漫画文化が深く根づいているのか、縄文道の視点から歴史的に俯瞰したい。漫画の歴史を紐解くと、漫画文化の始まりは平安時代の絵巻物や鳥獣戯画と言われている。しかし、はたしてそうだろうか。筆者は、この見方は文字文化が発達した平安時代以降から漫画が始まったとの前提に立ったものだと考える。

 日本には、古くは文字文化がなかったといわれるが、多くの岩刻文字(ペトログラフ)が発見されている。日本ペトログラフ研究会も存在し、日本中のペトログラフの発掘に努力をしている。

 多くの縄文土器を詳細に眺めると、実に多くの記号が象徴的に使用されていることがわかる。男性や女性の象徴、フクロウ、蛇、渦巻き紋、直線紋と多岐にわたる象徴的記号が刻印されている。これらの刻印は人間の動き、動物の形、とくに眼、さらに渦巻き、直線、円形といった象徴を実に見事に、迫力をもって表現している。加えて、さまざまな線を使って絵が描いてあると見られる土器も存在する。

 筆者は、三内丸山遺跡から長岡の縄文火炎土器、岩手、宮城、長野、群馬など関東一円、中国、四国の遺跡や埋蔵博物館を訪れ、縄文土器を観察してきた。この観察経験を通じて、縄文人は記号文化をもち、オノマトペを駆使し、音声言語で対象物を特定して大和言葉を使用していたと考えるようになった。

 東京の丸ビルと同じ高さの三内丸山遺跡の巨大構築物について、建築の技術のみならず資材の収集、土台づくり、組み立てを含め技術用語がなければ建てられないものだと現代の一流の建築家が分析している。

 たとえば、縄文土器の製造工程でも、言葉の介在が必要であることは明白だ。

(1)土器作成に相応しい土の発掘、採取技術
(2)強度を維持できる粘土の作成
(3)土器の作成の道具の作成と準備
(4)輪積みでの積み上げと乾燥工程
(5)作品を野焼きにするための森林伐採と木材収集
(6)野焼きの温度調節と焼成時間を調整して完成に至る

 筆者もこの全工程を実地で作成した経験があるが、作成器具、木材、野焼きの温度などとすべて対象物に特定の名前が付いており、言語を介在させ、音声表現でコミュニケーションが取れない限り、立派な迫力ある土器は作成できない。

 以上の仮設から、縄文人は漫画の源流といわれる平安時代の鳥獣戯画以前に、土器の作成過程において表面で表現活動を行っていたといえるのではないかだ。

(つづく)


 Copyright by Jomondo Kenkyuujo

(後)

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