2024年03月28日( 木 )

大腸がんのAI内視鏡検査、病変を98.3%検出~将来は内視鏡にAIが標準搭載に?(前)

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大腸がんの疑いをAIで検出

AI内視鏡画像診断支援ソフト「EndoBRAIN-EYE」(搭載イメージ)
AI内視鏡画像診断支援ソフト「EndoBRAIN-EYE」
(搭載イメージ)

 大腸がんは日本人のがんで亡くなる人数の第2位、女性では第1位だ。早期発見により、身体に負担の少ない低侵襲治療ができることから、大腸の病変(病気による体の変化、異常な症状)候補などをAIで検出する内視鏡ソフトウェア「EndoBRAIN-EYE(エンドブレイン・アイ)」が8月に発売された。

 オリンパス(株)が販売する「エンドブレイン・アイ」は、内視鏡で大腸を検査しているときに、ポリープなどの病変候補を見つけるとアラートが鳴り、画面の色が変わって知らせてくれる。

 AIが病変候補を見つける「感度」は98.3%、病変ではないものを「病変でない」と認識する「特異度」は93.0%。内視鏡検査で用いることで、内視鏡のリアルタイム動画から病変候補の有無を調べられる国内初のAI内視鏡診断支援ソフトウェアだ。昭和大学横浜市北部病院、名古屋大学大学院、サイバネットシステム(株)により、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて2014年頃から研究開発され、オリンパスが独占販売権を取得している。

病変候補を見つけると画面の色が変化
病変候補を見つけると画面の色が変化

 大腸がんの検査で用いられる大腸内視鏡は、太さ12mm、長さ1.3mほどの柔らかい管の先端に画像を撮影できるカメラのレンズやライトなどが付いている。検査では、画像を撮影するスイッチや内視鏡の先端を動かすハンドルを手元で操作して、内視鏡システム上のモニタ(画面)で撮影した画像を見ることができる。内視鏡は、1950年に製作された「胃カメラ」が進化したもので、内臓を間近で眺めるかのごとくきれいで精細な画像で見ることができる。

AIは診断を支援する位置づけ

オリンパス(株)内視鏡事業国内マーケティング内視鏡営業企画部長の繁森孝夫氏
オリンパス(株) 
内視鏡事業国内マーケティング
内視鏡営業企画部長の繁森孝夫氏

 オリンパス内視鏡事業国内マーケティング内視鏡営業企画部長の繁森孝夫氏は、「大腸は長く、ひだが多いため、これまでの内視鏡検査では、一定の割合で病変の見落しがあることが課題と言われてきた。また、午後は午前中に比べて医師の疲労感が増すなどといった報告もあり、検査する者の状態にも左右されるため、内視鏡検査でAIを用いることで見落としが減ることが期待されている」と話す。

 内視鏡検査は、基本的には医師が1人で行っているため、AIを「セカンドオピニオン」として用いる。AIが出した判定について、病気かどうかを最終的に判断するのは医師であり、AIは診断を「支援」するという位置づけだ。

 繁森氏は「大腸内視鏡検査は、体の不調など自覚症状がある場合や、便潜血検査で陽性になる場合などに行われるため、大腸がんの疑いがある病変を見きわめる内視鏡検査の需要は高い。そのため、この分野のAI診断支援システムは今後、市場が大きく拡大すると見込まれる」と予測している。

(つづく)

【石井 ゆかり】

(後)

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