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2021年01月15日 16:29

「ほどよい距離」と「1人」、そして「あっち側とこっち側」(前)

大さんのシニアリポート第96回

 「ソロキャンプ」というのが流行っている。昨年の「ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10に入った。ユーチューバーで、ソロキャンパー芸人ヒロシが火付け役だ。チャンネル登録数は80万件を超し、『ヒロシのソロキャンプ』(発行元:学研プラス)の売れ行きも好調である。コロナ禍で、「巣ごもり」「ソーシャルディスタンス」という人との距離を強いられる生活が続き、人と話したい欲求が強いのではと思われるのであるが、意外にもその逆の本音も見え隠れしている。

高齢になるほど「ソロ嫌い」

 朝日新聞(2021年1月9日付)の「be between 読者とつくる」欄に、「ソロ活動は好きですか?」という見出しで「ソロブーム」についての分析があった。「ソロの活動が好きですか?」という問いに、9割近くが「はい」と解答した。その理由が、「いつでも気が向いたときにできる」「周りを気にせず没頭できる」「すべてを自分で決められる」という解答が8割を超したという。「すべてが自分の責任なので、過度な緊張感がたまらない」(大阪・66歳男性)、「映画など無理に感想を語らい合わずとも、自分のなかで感動を深めたい」(東京・教職員48歳女性)などソロならではの積極的な楽しみを味わっている人も多い。

 一方、「いいえ」と答えた人は、「楽しさを仲間と分かち合いたい」「1人で楽しめる自信がない」「人と接することが楽しい」「1人が好きではない」「仲間がいないとできない趣味」というのが、理由のベスト5。年齢別の表記がなかったのであるが、高齢になるほど「ソロを嫌う」傾向にあると感じる。

 筆者が運営する高齢者の居場所「サロン幸福亭ぐるり」(以下、「ぐるり」)では、圧倒的に、「1人は嫌」「1人は寂しい」「1人でやる趣味がない」「1人だと何が起こるか不安」という答えが即座に返ってくる。では、「みんなで上野動物園に行こうよ」と誘っても、「面倒だ」「歩くのが億劫」と聞く耳をもたない。「ぐるり」が地域のシンボル的な居場所になっている証は、この「ソロ嫌い」があるためだろう。

ほどよい距離感

 余談であるが、5月で喜寿を迎える筆者の趣味の1つが「一駅散歩」である。とある駅の周辺を徹底的に散策すると、電車の車窓から見ていた風景とはまったく違う発見がある。日課としているウォーキングの歩数(8,000歩)も軽く越える。何より日常生活を一変させてくれることがうれしい。家を一歩でも出れば、すべてが自分の時間なのである。

 筆者は携帯電話を所有しない。筆者のような職業は携帯電話なしでは成り立たないだろうと考えられているが、時間に追われる仕事ではないため、問題ない。そのことより、自由な自分の時間が、携帯電話をもつことによって一方的に切り取られることが許せないのだ。

 散策や逍遙(しょうよう)は、「目的もなく歩くこと」(スーパー大辞典)とされている。ちなみに、認知症者の「徘徊」は、一見すると目的がなく歩いているようであるが、実は「家に帰りたい」「ふるさとに行きたい」「懐かしい家族や友人に会いたい」という明確な目的をもっている。そのため、医学界や介護業界などでは、「徘徊という言葉は不適切」として名称変更を検討している。

 一方で、他人との「ほどよい距離感」も考えるべきだろう。「ぐるり」の常連の多くは、「ソロ嫌い」ゆえに誘われれば他人の家のなかに安易に入り込む。自分の家にも他人を招き入れる。そこに潜む「安易さ」が、実は大きな悲劇をもたらすことが少なくない。必要以上の「接近」は、いったんそこに瑕疵や齟齬が生じると、たちまち仲違いを生む。

 当人同士が罵り合う分には問題ないのであるが、「ソロ嫌い」ゆえに、そのことを別の人に話す。話すことで自分の正当性を認知してほしいという「承認欲求」が顔を見せる。そのため、「大山さんだから話すんだけど…」といわれたときには、「その話、責任を持てないから聞きたくない」と必ず一蹴する。(自分だけが知る秘密を)相手に話すことで共有し、「こっち(秘密を話す本人)側」に取り込みたいのだろう。しかし、狭い地域ゆえ、命取りになることが多い。もっとも仲違いした両人が、数日後にはよりを戻すことは日常茶飯事。高齢者の「ほどよい距離感」は意味不明なことが多々ある。

(つづく)

<プロフィール>
大山眞人(おおやま まひと)

 1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務の後、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ2人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(講談社)『親を棄てる子どもたち 新しい「姥捨山」のかたちを求めて』(平凡社新書)『「陸軍分列行進曲」とふたつの「君が代」』(同)など。

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