2024年04月20日( 土 )

【長期連載】ベスト電器消滅への道(7)

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 かつて家電業界で日本一の売上高を誇ったベスト電器がヤマダ電機に完全に吸収された。なぜ、このように消滅するという事態になったのか!当社は長期にわたってベスト電器に関する記事を連載してきた。まず、ベスト電器がかつてビックカメラと合併しようと画策を講じたが、破談となった当時のことを報告する。

ベスト電器の再生を阻む過去のくびき(7)

(2012年3月15日掲載)

 ベストはなぜ負けたか。ヤマダ電機、ビックカメラ、ヨドバシカメラ、コジマ、エディオンなどの競合量販店が九州に食指を伸ばした、デフレと不況で消費者の購買意欲が薄れた、そうした外部環境の変化は表面的な要因でしかない。

 もっと価格にも変化を持たせられたはずだが、なぜ価格を下げられなかったのか。それはリベートを商品価格に織り込めなかったからだというのが真相のようだ。家電量販店におけるメーカーからのリベートは、決算書上では"販促協力金""仕入割引"などの科目名で営業外収益として計上されるため、営業損益で業績が振るわなくても経常損益を健全な数字にすることが可能である。

 今のようなPOSシステムではなく、現場担当者が商品管理をするような状況であれば、リベートで不正が起こりやすくなる。こうしたリベートは仕入先と担当者の間で話が決まるケースが多く、また現金でなく金券などの場合もあり、会社としては把握しにくい。 

ベスト電器 ここで大事なのが、マーチャンダイザー(MD)との付き合いである。他社メーカーより多く商品を仕入れてもらいたい、良い場所に商品を陳列してほしい。結果、リベートが発生し、さらには飲食・ゴルフなどの饗応・接待に予算を投じる。ここで得られたリベートは当然、個人の懐に入れてしまえば着服になるため、通常は営業外収益として計上しなければならない。

 ベストの場合、リベートのうち95%は商品コストに算入され、5%はMDリベートといわれ、競合店対策、営業支援、関連会社の損失補てんなどに使われるが、一部が間接的にベスト経営幹部の懐に入っているようだった。「特定の関連会社やフランチャイズにリベートが流れている」といううわさも、社員間では話題になっていたようだ。また「ベストのリベートは商品以外のどこかに流れているから価格競争力がない」とうわさするメーカーもいる。

 ところで投書によれば、濱田元社長は現在、福岡市南区のソンズ(株)という、店舗内外装工事や太陽光発電システム、オール電化リフォームを手がける会社の顧問をしているという。「同社会長の太田潤氏は以前、2007年清算した沖縄ベスト電器の社長を務めており、約2億円の負債を抱えて破産寸前だった。有薗氏が専務時代に泰陽商事の資金で救済し、清算に至った」(投書)とされている。その後、太田氏はソンズを設立し、ベストボーイなどベストのキャラクター制作をメインとして、ベストの太陽光発電のFCとなった。そして現在、同社にリベートを分配する仕組みがつくられているという。

 有薗氏がリベートに関する主導的な指示をし、経理に明るい深澤氏が事務的な部分を担っていた。それは深澤氏が営業本部長になってから顕著になったという。「有薗さんはベスト会長退任後、不正追及の手が自分にまでおよんだと思ったのかもしれない」(ベスト関係者)。しかし、その恐れもなくなった現在、ベストへの希望納入業者(大手メーカー除く)から仲介手数料やリベートの要求など、濱田氏を窓口として頻繁に介入していると聞く。

(つづく)

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