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2021年02月01日 11:31

【長期連載】ベスト電器 消滅への道(15)戦略なき拡大と挫折と新世界、M&Aの波間に消えた九州小売業の雄たち(中)

 ユニード、寿屋、そしてベスト電器。「九州の覇者から全国へ」という野望を抱き、事業拡大に走ったが、いずれも惨憺たる結果に。没落していく企業にはそれなりの理由がある。ベスト電器が繰り広げた“ドラマ”を振り返る。

強者優先の論理による合併の弊害

 合併、連携しながら組織の強化を図るには戦略が不可欠である。単なる規模拡大や金融機関などから持ち込まれた半ば救済型の目先の利害戦術で提携を進めれば、そこに提携のメリットは生まれない。かつて、とくに新興小売企業においては、強者優先の論理による合併や提携で提携協業先の人材を活用する事例は極めて稀だった。

 寿屋もダイエーも盛時の基本的な考え方は、合併先の社員は自社の軍門に下った弱者というもので、その人材力を有効に活用できないのが常だった。「平家にあらずんば人にあらず」の考え方である。

 九州の小売業といえば一時、九州ナンバーワンの寿屋と競合した同じ熊本を本拠とする有力地場スーパーのニコニコドーがある。1960年創業の比較的歴史の浅い小売企業だったが、福岡を含む九州4県に出店し、上場もはたした。その後、経営不振に陥り、2000年にダイエーと提携したものの、02年に提携を解消して破綻した。その後、広島のイズミに複数の店舗を譲渡して不動産会社として存続したが、07年、債務弁済の終了を機に解散している。

生き残る地方小売の共通点とは?

 かつての九州地場大手小売業を見ると、急速な店舗拡大でそのエリアを拡大したものの、商品や立地に十分な戦略がなく、その経営は短期、弥縫(びほう)的な戦術で問題解決に臨むという極めて短絡的、場あたり的な手法だった。それでも当初は、何とか急場をしのげていた。戦略の欠如が大きな問題として浮上したのは、昭和50(1975)年代になって間もなくだった。消費が旺盛で、徒歩や自転車といった近隣からの集客によって成立していたため、店をつくればたいていはうまくいっていた時代が終わったのだった。

 本格的な車時代が始まり、消費者の嗜好範囲や要求する品質レベルの変化にともなって、旧型の小型店が一挙に不振に陥った。大型店を規制する大店法による店舗面積の制限も、彼らにとって頸木(くびき)になった。もう1つは食品を軽視したことである。衣料品よりはるかに消費頻度が高い食品を、どの企業も集客手段として安売り優先で運営し、利益部門として育成できなかったのだ。当初、衣料品の利益で食品部門の赤字をカバーしていたものの、肝心の衣料品が販売不振になると状況を戦術でカバーすることは不可能となった。赤字の構造が行き着く先は破綻に決まっている。もちろん、同じような事例はとくに九州に限ったことではない。同様の事例は全国各地に共通した現象でもある。

 これらの企業と手法を変えて今も生き残る地方企業には、2つの共通点がある。1つは食品に強いことであり、もう1つは限られたエリアで半ばドミナントを形成している点である。

 たとえば、コンビニはその出店に際し、2ケタの集中出店が普通である。アイキャッチといわれる視認性による印象と、効果的な物流が店舗運営に必須だからである。知名度もなく、消費文化も違う地域へ出店する場合、その運営は容易ではない。九州大手小売の3社も同じ困難を味わった。

 取引先も、自社の販売エリアで高いシェアをもつ小売業に価値を見出す。その点でも島嶼(とうしょ)型の「点」の出店戦略はうまくいかない。フランチャイズのコンビニと違って、大型小売業の場合、よほど人材と資金に余裕がない限り、エリア制圧型の出店は不可能である。九州だけでなく、地方の流通業が容易に全国チェーン化できないのにはそんな理由がある。

 一方、九州に新たに進出したイズミや福岡、大分中心に店舗を展開するマルショク・サンリブは大型ショッピングセンターと地場スーパーの居抜きなどで効率的な店舗づくりをしたことと、食品がそこそこの評価を得て消費者の支持を得てきた。そのほかにも寿屋やユニード、ニコニコドーといった競合が今や存在しないという環境も、ある程度味方しているといってもよい。

(つづく)

【神戸 彲】


<プロフィール>
神戸 彲
(かんべ・みずち)
 1947年、宮崎県生まれ。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。

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