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2021年04月21日 07:00

成功するための身だしなみ「Dress for Success」とは(6)

Princess Hiromi ファウンダー&デザイナー
島津 洋美 氏

 服の歴史とは、西洋(ヨーロッパとアメリカ)の衣服および服飾の歴史を指し、そのルーツははるかギリシャ・ローマ時代にまでさかのぼる。そして、日本における本格的な服の歴史はわずか100年に過ぎない。欧米世界では「Dress for Success」という言葉がよく知られており、「成功するための身だしなみ」という意味だ。私たちにどのような知恵を授けてくれるのだろうか。

 この言葉が現代にもつ意義について、Princess Hiromiファウンダー&デザイナーの島津洋美氏(ニューヨーク州弁護士)に話を聞いた。陪席は中川十郎・日本ビジネスインテリジェンス協会理事長。中川氏は商社時代(ニチメン・ニューヨーク本社開発担当副社長)にイタリア、フランス、ニューヨークファッションを手がけた。

明るい希望のあるフォルムと色を使ったドレスの多いコレクション

 ――最後に、コロナ後の服飾業界とPrincess Hiromiの今後についてお聞かせください。

 島津洋美氏(以下、島津) 直近の春・夏コレクションはルイ・ヴィトン、グッチ、シャネルなど、どのメジャーなブランドも明るく希望があり、楽しくなるような色使いになっています。それはコロナ禍でも暗くなることなく、ファッションで元気を与えたいと考えているからです。

 Princess Hiromiも同じです。明るい希望のあるフォルムと色を使ったドレスの多いコレクションにしました。ジャケットを着れば仕事に、ワンピースだけを着ればソーシャルやリゾートにも行けます。

 加えて、大きな流れとしては、従来のような「大量生産、大量消費」、すなわち同じものがあふれかえる時代ではなくなってくると思います。今後はストーリー性のあるものが重要になるでしょう。

 ファッションについては今、大きく2つの方向性が出ています。1つは、多くの方がステイ・ホームなどで、ゆったりとした服装になれてしまったので、ここしばらくはファッションセンスを気にしなくなるのではないかという意見です。コロナ禍で売れ残った春夏ものを次のシーズンにも使うというブランドや小売店もあり、「だんだんとトレンドはなくなるのではないか」という人もいます。

 もう1つは、コロナ禍で長く続いたステイ・ホームの反動で、すごくドレスアップしていい服を着て、自分の好きな格好をして人と会い、自分を高めたくなるという意見です。その人の置かれる環境によって違うと思いますが、私は後者の自己実現的な立場をとっています。

 中川十郎氏(以下、中川) 私も後者の立場に立ちます。服飾の色彩、カラーの力を痛烈に認識した瞬間が今年の初めにありました。1月20日に米国のバイデン新大統領の就任式があり、黒人で22歳のアマンダ・ゴーマン嬢(※1)が「我らが登る丘(The Hill We Climb)」という素晴らしい詩を朗読しました。そのときに着ていたのが、ミウッチャ・プラダがデザインした目の覚めるような鮮やかな黄色のコートでした。彼女の詩は米国の人々に希望と団結を訴えました。そして、彼女の5分間の朗読の後、10分間で10万件の問い合わせがプラダ社に殺到したといわれています。

 島津 仕事服でも品格のあるクラシックな路線はこれからも続くと思いますが、今は風の時代といわれていますので、同じものを着続けることはないのではないかと考えています。また、それでは進歩、向上というエネルギーは生まれてこないでしょう。私は昨年3月と4月にデパートでコレクションを出しましたが、コロナ騒動があったにもかかわらず、多くの人に来ていただきました。皆さん、軽やかで新しい感覚のものを求めていました。引き続き、「安心して誇りをもって仕事ができる」服をサイズの種類なども増やして、デザインしていきたいと思っています。

 中川 鹿児島の有名な大島紬(※2)は絹を田んぼに埋めて土で染色し、化学染料を使わない環境や健康にやさしい繊維です。このユニークな大島紬などを使ったファッションもぜひ、Princess Hiromiで手がけていただけたらと思います。国連のSDGsと並んで、世界的に関心をもたれているESG(環境・社会・統治)(※3)にぴったりの商品だと思います。

 21世紀はアジアの時代です。島津さんにはニューヨークや日本はもちろん、中国・インドネシア・タイ・インドなどとも協力し、アジアの新たなファッションの創作にも注力していただけると期待しています。

※1:米国の詩人・活動家。ハーバード大学で社会学を専攻。マイノリティーがアメリカ社会で感じる疎外感や社会的な抑圧を黒人女性の立場から見つめる詩作で知られる。2017年に米議会図書館によって創設された全米青年桂冠詩人プログラムの第1回受賞者。 ^

※2:鹿児島県・奄美群島の伝統工芸品としてつくられる織物。手で紡いだ絹糸を泥染めしたものを手織りした平織の絹布。染色の工程で糸に鉄分が染み込むため、着崩れや虫食いが起きにくく長く使える。独特の黒褐色を基調とした繊細な折柄の美しさも特長。 ^

※3:投資家が環境(Environment)、社会(Social)、統治(Governance)に対する企業の対応を考慮して行う投資。財務諸表ではわからない二酸化炭素排出量削減や従業員の適切な労務管理、社外取締役の独立性といった「環境・社会・企業統治」への取り組み姿勢も投資の判断材料とする。 ^

(了)

【聞き手・文:金木 亮憲】


<プロフィール>
島津 洋美
(しまづ・ひろみ)
Princess Hiromi ファウンダー デザイナー 島津洋美 東京都出身。ジョージタウン大学卒、ボストンカレッジ法科大学院で法学博士(J.D.)、ニューヨーク州弁護士資格を取得。ウォール街の法律事務所で働く。その後、コロンビア大学経営大学院で経営修士号(MBA)取得。ニューヨークの大手アパレルメーカー・リズクレボーン社で日本担当統括マネジャーとして日本・アジア地域のブランド戦略を担当。経営コンサルタントの傍ら、ニューヨークと東京でテキスタイル、立体裁断、デザインについて各分野の第一人者に師事。2011年Princess Hiromi創業。デザイナーとして、国際感覚をもつ知的で女性的な「個性を魅せる服」を創り出している。駐日スウェーデン大使館からの日本起業家賞、DELLグランドブレイカー賞など多数。著書に共著 「カラーセオリー イン ショップ」(日本実業出版社)がある。


中川 十郎(なかがわ・じゅうろう)
 東京外国語大学イタリア学科国際関係専修課程卒後、ニチメン(現・双日)入社。米国ニチメン・ニューヨーク本社開発担当副社長を経て、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授など歴任。日本ビジネスインテリジェンス協会理事長、米国競争情報専門家協会(SCIP)会員、中国競争情報協会国際顧問。2014年東久邇宮国際文化褒賞を授章。

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