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2021年05月30日 06:00

飲食店の生ごみからバイオガス発電~バイオガスの都市ガス供給も(後)

 生ごみの年間排出量は1人あたり73kg。その一部は堆肥や家畜のエサとしてリサイクルされるが、大部分は焼却されている。なかでも飲食店やコンビニ店舗で出る生ごみは、プラスチックの袋、割りばし、紙ナプキンなどの異物を含み、機械で選別しても家畜のエサなどに使いにくいことが課題となってきた。これらの事業系生ごみをエネルギーとして有効利用できるのが、バイオガス発電だ。

トラック60台分の生ごみを搬入

 ここからは、バイオエナジーのバイオガス発電所の仕組みを見てみよう。

 バイオエナジー(株)には、飲食店などからトラック60台分(130t)の事業系生ごみが毎日運び込まれる。生ごみはトラックに積んだまま、入り口にある計測器で重さを測定する。

道路左の計測器(トラックスケール)でトラックに積んだ生ごみの重量を測定
道路左の計測器(トラックスケール)でトラックに積んだ生ごみの重量を測定

 次に、トラックの荷台から生ごみをホッパに入れると、そのまま下に落ちて破砕機までコンベアで運ばれる。

生ごみを入れると破砕機へと運ばれる
生ごみを入れると破砕機へと運ばれる
臭い対策のため、10分おきに消臭剤を散布
臭い対策のため、10分おきに消臭剤を散布

 生ごみは2段階に分けて破砕機で細かく砕かれ、選別機によって、バイオガスをつくるメタン発酵の原料(食品有機物)になるものと、割りばしやプラスチック包装、トレー、ビニールなどの異物とに分けられる。生ごみの再利用や発電利用がなかなか進まないのは、異物が多く分別が難しいためだ。この選別機を用いると、パック入りの食品からもバイオガス原料となる食品のみを回収できるという。

生ごみ選別機
生ごみ選別機
発電所内の設備30カ所以上をモニタリング
発電所内の設備30カ所以上をモニタリング

 選別された異物のうち、食品の袋やトレーなどの廃プラスチックは回収されて、燃料として熱を回収する「サーマルリサイクル」工場に運ばれる。割りばしや紙などは、メタン発酵の汚泥とともに焼却処分される。

メタン発酵によるバイオガスから約4,000世帯分を発電

 生ごみから分別され、原料となる食品有機物は、調整槽で酸発酵させてスープ状にした後、中温発酵(35~37℃)の2つのメタン発酵槽(各容量2,000m3)に入れて30日間発酵させて、バイオガスをつくる。

 同社の取締役工場長・盛下学氏は「コーヒー粕や下水処理場の汚泥を利用するバイオガス発電所では、中温発酵より効率の良い高温発酵(55℃)が用いられますが、さまざまな食品廃棄物が入っている生ごみでは、原料が変わっても安定して発酵が進む中温発酵が向いています」と話す。

メタン発酵槽、手前が脱硫塔
メタン発酵槽、手前が脱硫塔

 発酵でつくられたバイオガスはガスタンクに溜めて、エンジンが錆びる原因になる硫化水素を脱硫塔で取り除いた後にガスエンジン(発電機)へ送られる。バイオガス発電機1号機(No.1)、2号機(No.2)の発電容量はそれぞれ560kW(発電効率35%)、3号機(No.3)は579kW(同38.5%)で、1日あたり合計4万569kWh、約4,000世帯の電力を発電できる。「外食産業がコロナ禍で影響を受けて生ごみの量が減っているため、現在稼働しているのは7割ほどです」(盛下氏)。

No.3ガスエンジン(バイオガス発電機)
No.3ガスエンジン(バイオガス発電機)

 生ごみはほとんどが水分で、固形分である15%のうち約8割がエネルギー利用できるバイオガスに変わる。そのため、生ごみ100tから発生する汚泥は4tとなり、最終処分場に行くごみの量は大幅に減る。また、発電の際に発生する熱を利用する「コージェネレーションシステム」により、これらの排熱を発酵槽や乾燥機の加温に利用しているため、同発電所のエネルギー利用効率は63%と、太陽光発電(約20%)、風力発電(約30~40%)よりも高い。

 また同社には、バイオガスを都市ガスとして供給できるガス管導入設備があり、1日あたり2,400m3の都市ガスを地域に送ることができる。しかし、都市ガスは整備コストが高く、販売価格が低いことから、電気として販売した方が収益性は高いため、20年9月から都市ガスの供給を休止し、全量を固定価格買取制度(FIT)で売電している。

 また、都市ガス供給ではガスに臭いを付けたり、組成をチェックしたりすることが必要となる。盛下氏は「欧州のようにバイオガスからつくられた都市ガスが日本で普及しないのは、欧州などに比べて都市ガスの基準が厳しいことも原因ではないでしょうか」と指摘する。

ガス管導入設備(都市ガス化設備)
ガス管導入設備(都市ガス化設備)

「アフターFIT」のバイオガス発電

 バイオエナジーのFIT売電期間は、一足早い27年に終わる予定という。12年のFIT開始以前から売電を行っており、FIT事業期間が15年間となるためだ。

 同社ではFIT売電費用が売上の3割を占め、FIT終了後は発電収益が大きく減少する可能性がある。盛下氏は「都市ガス供給設備は運転・整備コストがかかるため、今は休止していますが、27年ごろに効率の良い新しい設備ができている可能性を踏まえて、都市ガス供給を復活させることも視野に入れています。欧州では再エネ普及で電気が余り、都市ガス供給設備の低コスト化が進んでいるため、バイオガスの都市ガス利用事例が増えていると聞いています」と語る。

 木質バイオマスなどを利用する事例も含めて、バイオマス・バイオガス発電は運転コストがかかるため、FIT期間が終了すると収益が確保できなくなり、運転停止を予定する発電所も多いといわれている。バイオガス発電の普及のためには、FIT終了後に発電所を維持できることが課題となる。FIT終了後の再エネをめぐる動向が注目されそうだ。

(了)

【石井 ゆかり】

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