2022年01月25日( 火 )
by データ・マックス

五輪終が東京五輪の最大成果

 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「東京五輪に大きな意義があるとすれば、すべての人々が五輪の薄汚い正体を知ることができたこと」と訴えた6月28日付の記事を紹介する。

菅義偉氏はいつも強気のごり押し。議会制民主主義を採用しているのだから、国会での丁寧な説明が必要だが、菅氏は責務を果たさない。質問に答えないのだ。何を聞かれても同じ言い回しを繰り返すだけ。関係のないことを持ち出して「…というのも事実ではないでしょうか」「いずれにせよ…」と繰り返して質問に答えようとしない。

国民の関心事はコロナと五輪。主権者である国民はコロナ収束が最優先課題だと位置付けている。もともと五輪に反対の人でなくても、現状を踏まえれば五輪開催強行は妥当でないと判断する人が多い。何よりも大切なのは国民の命と健康、そして暮らしだ。国民は五輪開催強行が国民の命と健康と暮らしを破壊する恐れが強いから五輪開催を断念するべきだと考えている。

憲法前文に明記されているように、為政者は国民の厳粛な信託により、国民の代表者として権力を行使しているに過ぎない。主権者である国民の意思を尊重しなければならない立場にある。しかし、菅義偉氏はこの基本をわきまえていない。

菅義偉氏は「国民の命と健康が最優先」としたうえで、「安全・安心な五輪開催を目指す」と繰り返す。しかし、五輪開催強行によって国民の命と健康が害されることが見込まれている。

どのような条件が整えば、国民の命と健康を害することなく、安全・安心な五輪を開催できるのかを明らかにしなければ、「安心・安全な五輪開催」は実現しない。菅氏は国会でこの点を繰り返し問われた。しかし、何も答えない。壊れたテープレコーダーのように、「…というのも事実ではないでしょうか」「いずれにせよ…」と繰り返す。国会は主権者に対する説明責任を果たす場でもある。その責任をまったく果たさない。首相として失格だ。

菅内閣は6月21日をもって沖縄県以外の緊急事態宣言を解除した。人流は再拡大に転じている。新規陽性者数も増加に転じている。感染の中心はN501Y変異株からL452R変異株、E484Q変異株に移行しつつあると見られる。感染力が強く、重症化しやすく、ワクチン有効性が低いと見られている。

人流が拡大すれば感染が拡大する。五輪の有観客開催は感染拡大策以外の何者でもない。菅義偉氏は五輪開催を強行してしまえば、これまで反対と言っていた人も五輪の歓喜の渦に引き込まれると高を括っているのだろう。早速、御用芸人、御用コメンテーターがまったく同じフレーズを流布し始めた。

しかし、主権者である国民を見くびるべきでない。主権者は五輪有観客開催を強行しようとする菅義偉氏を選挙で断罪するだろう。

7月4日に投開票を迎える都議選で、東京都の主権者は五輪の有観客開催を強行しようとする自公勢力に絶対に投票するべきでない。五輪中止、無観客開催を公約に明記する政治勢力に投票を集中させるべきだ。都議選で自公が惨敗すれば次の衆院選でも自公は惨敗する。議会制民主主義の根幹を破壊する菅義偉氏に民主主義の意味をしっかりと教示する必要がある。

一部メディアが、都議選で都民ファースト議席が激減し、自民が圧勝するとの予測を公開して流布している。しかし、現実はまったく違う。人々に先入観を与えるための卑劣な情報操作である。

コロナ感染再拡大のなかで五輪の有観客開催を強行しようとする菅義偉氏に対する批判が沸騰している。最新世論調査でも今夏の東京五輪開催に賛成の国民は全体の3分の1もいない。開催する場合には無観客にするべきだとの主張が圧倒的多数。これが主権者の総意=民意。

五輪開催を強行すれば、これまで反対意見を示していた人も五輪の歓喜の渦に巻き込まれると述べているのは御用芸人、御用コメンテーター、あるいは浅はかな考えの持ち主だけ。日本の主権者である国民は冷めた目で五輪開催強行に突き進む菅義偉氏を批判的に眺めている。

IOC関係者の知性に欠ける言動、カネに執着する姿を見て、圧倒的多数の人が五輪に対する基本的認識を変えた。これまでは気にも留めず「平和の祭典」という言葉を鵜呑みにしてきた。しかし、実態がまったく違うことを多くの人が認識した。

本間龍氏は初めからこの点を厳しく突いてきた。五輪が「平和の祭典」であるとするのは実態を隠すためのカムフラージュに過ぎない。

元米五輪代表で米パシフィック大教授のジュールズ・ボイコフ氏が5月11日付の米ニューヨークタイムズ紙に「スポーツイベントはスーパースプレッダーになるべきではない」と題するオピニオンを寄稿し、「科学に耳傾け危険な茶番劇止める時」と訴えた(https://bit.ly/3y2EMFZ)。

ボイコフ氏は次のように指摘した。
“And yet, the Olympic steamroller rumbles forward. There are three main reasons: money, money and money. And let’s be clear: Most of that money trickles up, not to athletes but to those who manage, broadcast and sponsor the Games.”

「それでも、オリンピックは強引に突き進む。三つの主要な理由がある。カネ、カネ、そしてカネだ。そして、はっきりさせておこう。そのカネのほとんどは、アスリートではなく、五輪を管理し、放送し、スポンサーする者に滴り落ちる」。

東京五輪の基本が三つある。滅私奉公・国威発揚・学徒動員。五輪組織委をはじめIOC関係者が暴利をむさぼるなかで、市民がタダ働きさせられる。タダボラ五輪が第一の基本。五輪が国威発揚の場として利用される。さらに、学童・生徒が五輪観戦に駆り出される。

その五輪を開催する最大の目的はカネ。IOCは五輪開催強行で巨大な利益を獲得する。この「カネ」のために日本国民の命と健康と暮らしが犠牲にされる。

IOCのバッハ会長、コーツ調整委員長に「帰れコール」を浴びせることが正しい。日本国民の尊厳と命を損なう野蛮な守銭奴に対して「帰れコール」を提供することは非礼にはあたらない。

カネのことで頭がいっぱいで、それ以外の何も考えることができないのだろう。東京五輪に大きな意義があるとすれば、すべての人々が五輪の薄汚い正体を知ることができたこと。東京五輪を境に五輪を取り巻く環境は一変する。商業五輪・利権五輪・悪徳五輪に終止符を打つ。五輪を終わらせる五輪終が東京五輪の最大成果になる。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

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