2024年05月05日( 日 )

【横浜市長選】小此木氏が閣僚辞任、出馬表明へ カジノ誘致が争点

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

小此木八郎氏の出馬会見(6月25日、横浜市役所)

出馬会見する小此木八郎氏
出馬会見する小此木八郎氏

 国家公安委員長を辞任した小此木八郎氏(神奈川3区)が6月25日、カジノ(IR)が最大の争点となる「横浜市長選(8月8日告示、22日投開票)」への出馬を表明、横浜への誘致を取りやめる考えを明らかにした。“影の横浜市長”と囁かれてきた菅義偉首相(神奈川2区)直系の林文子市長が推進するカジノ誘致に対して異義申立てをするかたちとなり、出馬会見ではカジノ関連の質問が相次いだ。小此木氏が出馬の意向を伝えた菅首相との面談について聞いた。
 

 ――菅総理とお話になったときに、「横浜へのカジノ取り止め」というのは菅総理も合意したのか。そうでなければ、自民党はカジノ推進の対抗馬を立てて小此木氏と戦わないと筋が通らないと思う。そうでなければ、市長選で勝つための方便、当選したら(カジノ取り止め)方針を変えると疑われても仕方がないと思うが、そのへんはとうなのか。

 小此木氏 菅総理との会話は、5月の下旬と以前の話をした。総理は横浜のことよりも国全体のことを考えるということです。私もその立場であったが、今回、閣僚を辞任して、あるいは国会を終えてから、横浜の市会議員の皆様と話をして、先ほど返事をしたというところですので、そのへん(カジノ推進か取り止めか)は調整しているということです。

 ――菅総理は「横浜へのIRはもう取止めるべきだ」という考えなのか。

 小此木 その言葉自体がない。私の考え、言葉に対して「わかった」ということですので。なぜ、そのときの話が短かったのかというと、それ以前に私の考え方を伝えていたことについて感じ取っていただけていたのではないか。あるいは、私の決意がよほど強いと感じ取ったものではないかと思う。

 ――周りの自民党の方はIRに対する考え方を変えたのか。

 小此木氏 それはいま市会議員のなかで議論をされていると思う。私は「全国のIRが駄目だ」という話ではなくて、「いま横浜にその環境が整っていない」ということの思いで話をしていますので。


林文子横浜市長
林 文子 横浜市長

 前回の2017年の横浜市長選と二重写しになる。当時の林市長はカジノについては「白紙」と訴えて当選したが、2年後の19年8月にカジノ誘致表明をした。“横浜のドン”こと「横浜港運協会」藤木幸夫会長(当時)が緊急会見で、「顔に泥を塗られた。泥を塗ったのは林氏だけど、塗らせた人がいる」と菅官房長官(当時)の影響力を示唆、「俺は命を張ってでも反対する」「(カジノ推進の)ハードパワーと闘うつもりでいる」と徹底抗戦を表明していたのだ。

 そこで、林市長と同じような方針変更の可能性や藤木会長のことについても聞いてみた。

 ――今まで林文子市長のカジノ推進、IR推進に対して自民党は「ノー」と言ってこなかったなかで、急に小此木氏が(カジノ取り止めと)言い出しても有権者、市民は信用せず、当選をしたら手の平をひるがえすのではないかと疑われてもしようがないと思うが、そのへんはどう説明するのか。

 小此木 私もその思いはある。疑ってくる思いを直接、私にぶつけてくる人もいるので、それは「そうではないのだ」ということを、これから選挙戦が始まるなか、あるいは選挙中のなかで訴えていくしかない。

 ――「藤木幸夫氏と菅総理との関係改善のためにカジノ取り止めを急に言い出した」と疑いたくなるが、藤木氏とはどんな話をしたのか。

藤木幸夫会長
藤木 幸夫 会長

 小此木 これはね、そんな簡単な話ではない。私の家と藤木家は私で3代目の付き合いがありますから、あるいは、菅総理と45年以上、私が小学校3年生ぐらいからの付き合いになる。これは兄弟分みたいなものでして、ご関係をよく御存知の上で話をしていると思うが、そういう中であえて申し上げれば、これは微妙な関係というか、面倒くさい関係でありますので、これは相談をしていたら決断はできなかったと思う。ですから誰にも相談せずに決めた。

 ――藤木氏とは話していないか。

 小此木 (6月)17日に、一番の支援者以上の方でもあるから、まず会社を訪ねた。息子さん、今の社長とお話をした。翌日(18日)、藤木幸夫会長とは電話で話をして、私の決意を伝えました。

 ――どういうふうに仰っていたのですか。

 小此木 これは内輪の話になるが、私にとっての祖父、あるいは(藤木)会長にとっての御父上の名前を挙げられて、「これは時代の絆を思い出すな」と。私は、自分の祖父も知らないが、そういったことを言われた。

 ここで「支援するということか」と質問を重ねたが、小此木氏は何も答えずにほかの記者を指名した。そこで会見終了後、写真撮影を終えた小此木氏に同じ質問をぶつけた。

 ――藤木さんのこと、聞かせていただいて。

 小此木 面倒くさい話、しないでよ。

 ――藤木氏は「支持する」と言ったのか。

 小此木 それは微妙だね。さっきの祖父の、兄弟のような関係で思い出したと。ただ「おまえ、すごい決断をしたな。これからが大変だから頑張れ」と。血はつながっていないが、親父が亡くなってからは(藤木幸夫氏は)父親代わりのような存在であったので、そういう何か肉親ではないといえないような(言葉だと)受けた、私はね。

 ――「頑張れ」ということは「支援する」ということなのか。

 小此木 そういうことだと思う。多分、「厳しい道かもしれないが、おまえの決断は尊重する」ということだと思う。

 ――藤木氏は、別の野党系候補を応援するみたいなことをこれまで言っているのですが・・・。

 小此木 それはわからない。

藤木会長は山中氏だけでなく、小此木氏も応援するのか

立憲民主党神奈川県連
立憲民主党神奈川県連

 同日(25日)、立憲民主党の神奈川県連の阿部知子会長と青柳陽一郎幹事長が会見。横浜市立大大学の山中竹春教授の推薦を県連として決定したことを発表した。そこで筆者が藤木会長からの支援が受けられるのかについて聞いてみた。

 ――藤木幸夫会長からの支援見通しはあるのか。

 青柳 先日、テレビ神奈川で放送されたが、藤木氏の生の声があったと思う。藤木氏としては「変わらず全力で応援する」という言葉をいただいたと聞いている。

 ――それは小此木氏の出馬によっても変わらないのか。小此木氏が藤木氏にも声をかけて(藤木氏から)「頑張れ」と言われているようだが、それでも変わらないのか。

 青柳 変わらない。本人から直接話を聞いている人間から「変わらない」と聞いています。


 藤木会長は山中氏だけを応援するのか、それとも小此木氏も応援するのかが注目される。総選挙の前哨戦であり、菅首相のお膝元でもあることから「菅首相にとっては絶対に落とせない市長選」(永田町関係者)。横浜市長選から目が離せない。

【ジャーナリスト/横田 一】

関連記事