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2021年09月14日 15:30

関西スーパー争奪戦の異様~H2Oとオーケーは異なる買収方式で比較困難(前)

 関西が地盤の食品スーパー(株)関西スーパーマーケットをめぐる買収合戦に、ネット上では「判断材料が足りない」という投資家の不満を示す書き込みが溢れる。関西スーパーに買収を提案した(株)阪急阪神百貨店を運営するエイチ・ツー・オーリテイリング(株)と、首都圏を地盤とする食品スーパー、オーケー(株)の買収方式がまるっきり異なるため、どちらが株主に有利なのかわかりにくいためだ。M&A(合併・買収)に一石を投じる買収劇となった。

H2O、イズミヤと阪急オアシスとの株式交換による統合を提案

 エイチ・ツー・オーリテイリング(株)(以下、H2O、大阪市、荒木直也社長、東証一部上場)は8月31日、(株)関西スーパーマーケット(以下、関西スーパー、兵庫県伊丹市、福谷耕治社長、東証一部上場)を子会社にすると発表した。

 H2Oは関西スーパーの株式(議決権ベース)を10.66%保有する筆頭株主。関西スーパーは同社株とH2O傘下の食品スーパー、イズミヤ(株)(大阪市、非上場)と(株)阪急オアシス(同、非上場)両社の株を交換してH2Oの子会社となり、H2Oの関西スーパーへの出資比率は58%に高まる。

 関西スーパーはスーパー事業を引き継ぐ子会社を新設し、傘下にスーパー3社を収める中間持ち株会社となる。関西スーパーの東証一部上場と、各ブランドは維持する方針。

 統合によりH2Oのスーパー事業の売上高は各社の2021年3月期の単純合算で約4,000億円規模、店舗数は243店舗の関西でトップクラスの食品スーパーとなる。

オーケー、1株2,250円でのTOBによる完全子会社化を提案

株価 イメージ オーケー(株)(横浜市、二宮涼太郎社長、非上場)は今月3日、関西スーパーを買収する意向を正式に発表した。関西スーパーはH2Oの子会社になる方針を公表済みだが、オーケーは「当社提案のほうが企業価値向上に資する」としている。

 発表によると、関西スーパー株を7.69%持つオーケーは6月9日、1株あたり2,250円での株式公開買い付け(TOB)を提案した。これは、関西スーパーの前日8日終値の2倍以上の価格。2,250円は上場来の高値で、すべての株主が損をせずに売却できる価格として設定したという。その後、提案を完全子会社化に切り替え、協議するよう求めた。

 関西スーパーは筆頭株主だったH2Oとの提携強化も検討。設置した特別委員会が1株2,250円の買い付け提案を含むオーケーの提案とH2Oの提案を詳細に比較・検討したうえで、取締役会に対し、H2Oの提案を受託するよう勧告したという。

 オーケーは「実質的な協議の場」が設けられないまま、関西スーパーのH2O傘下入りを発表したとして、「株主利益の最大化の観点から公正に比較検討していただけたのか懸念している」と主張する。

 オーケーは、H2Oによる子会社化を決める予定としている10月29日の関西スーパーの臨時株主総会で、反対票を投じる考えだ。臨時株主総会でH2Oによる子会社化が否決され、関西スーパー取締役会からの賛同を得られれば、提案時と同じ条件でTOBを行うとしている。オーケーは「提案当初から敵対的な公開買い付けを行うつもりはない」と表明している。

関西スーパーとオーケー、5年にわたる攻防戦

 関西スーパー=H2Oとオーケーは、5年間にわたり攻防を繰り広げてきた。地元の神戸新聞NEXT(21年9月7日付)は、「『恩をあだで返されたようなもの…』関西スーパー争奪戦、オーケー進出巡り攻防5年」と報じた。次のような内容だ。

 〈オーケーは、自社経営の根幹において「関西スーパーを参考にしてきた」とする。過去には関西スーパーの創業者、故北野祐次氏の厚意を受け、売り場づくりや生鮮品の鮮度管理などの手法を学ぶため社員を派遣してしたこともあるという。

 そんなオーケーが成長を期し、関東圏に次いで進出を図ったのが関西だった。

 オーケーは関西進出に関し、以前から「自社出店よりも、好立地に店舗網を有する関西スーパーのグループ化を通じた進出が望ましい」と考えていたという。2016年4~8月にかけて、関西スーパー株を約8%取得。資本業務提携を目指したとされるが、協議には至らなかった。関西スーパーは同年10月、かねて打診があったとするH2O との資本業務提携を発表し、H2Oが筆頭株主となった。

 兵庫県内のスーパー関係者は、「関西スーパーからすれば、オーケーに恩をあだで返されたようなもの。懇意だったH2Oの協力を得て、オーケーの介入を防ごうとした」とみる。〉

 オーケーに対抗するため、H2Oがホワイトナイト(白馬の騎士)を買って出たということだ。

創業者の北野氏、ダイエー中内氏らとともにスーパー業態を確立

 関西スーパーは、かつお節の卸業者だった(故)北野祐次氏がスーパーマッケットの将来性に着目し、1959年に前身の相互産業(株)を設立。兵庫県伊丹市に1号店を開いた。店内の陳列棚から商品をとり、レジで一括精算するスーパーは根づいていなかった。北野氏は、ダイエーの中内功氏らとともにスーパーの業態を確立。「関西スーパー方式」と呼ばれ、全国のスーパーのモデルになったという。

 関西スーパーのホワイトナイトを買って出たH2Oは、「私鉄文化」の生みの親である小林一三氏を始祖とする阪急阪神東宝グループの小売部門。史上初のターミナルデパート(駅直結の百貨店)である(株)阪急百貨店と(株)阪神百貨店が2007年に経営統合して発足した持ち株会社だ。

 一時は、インバウンド需要で百貨店は好業績に沸いたが、コロナ禍でインバウンドが蒸発。緊急事態宣言下、百貨店は休業を迫られた。H2Oの21年3月期の連結決算は、売上高が前期比17.6%減の7,391億円、最終損益が248億円の赤字(20年3月期も131億円の赤字)と2期連続の赤字だ。

 百貨店依存から脱却するため、消費者と日常的な接点の多いスーパーを「第2の柱」とする目標を掲げた。関西スーパーの買収に名乗り上げたのは、スーパー事業の強化の一環だ。

(つづく)

【森村 和男】

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