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2021年09月28日 15:40

【縄文道通信第75号】陶磁器産業全盛とセラミック産業への転換~縄文道―武士道―未来道

(一社)縄文道研究所

陶磁器産業全盛時代とセラミック産業への転換

 明治に入ってからの陶磁器産業は、国内マーケットのみならず、開国にともなう世界への輸出が志向された。明治時代は、欧米化とさらなる富国強兵、殖産興業が推進された。欧化政策の推進で、欧米先進国は日本の陶磁器産業の技術力に目を付け、洋食器の需要が急速に高まった。日本の陶磁器の窯元は、欧米の嗜好に合った装飾を絵付師が施した陶磁器を積極的につくり、欧米に輸出を開始した。

 とくに瀬戸・伊万里・京都は積極的な窯元が多く、富岡の製糸工場からの生糸、静岡を中心とした日本茶と陶磁器が明治時代の3大輸出商品となり、日本の外貨獲得に貢献した。

ノリタケ イメージ 名古屋が発祥の地である森村財閥は、洋食器の開発、輸出で明治期に急成長し、ノリタケブランドで世界的に有名な地位を獲得した。江戸末期まで瀬戸から三都に陶磁器を出荷して成功した三陶屋は4代目加藤四郎左衛門景正(藤四郎)に引き継がれた。大きな時代の変遷のなかで洋食器を輸出するべく絵付師を雇い、今まで経験のない欧米への輸出を行う事業転換に舵を切った。まさに国内事業から海外事業への180度転換である。

 欧米への輸出に邁進したが、残念ながら債権の取り立てに失敗し、負債額を増やしていった。三陶屋5代目を引き継いだ瀬戸助はついに破綻して多くの地元の窯元から借金取り立てに追い込まれ、1903年に他界した。三陶屋は5代で歴史を閉じた。これらの事情は有名な陶芸家・加藤唐九郎の『かまぐれ往来」に記されている。

 瀬戸助の長男である田之助(筆者の祖父)は禁治産者となり、北海道の岩内に移住し教育者として晩年を過ごした。

 田之助の五男は筆者の父親・正之助(元平成書道連盟会長書家)であり、筆者は叔父や親戚から、加藤家の陶芸一族の栄枯盛衰の物語を聞かされた。今縄文土器、縄文文化に強い関心を持ち始めたのは、一族の歴史もその理由の1つになっていると感じる。

 三陶屋と対象的に成功した会社は、名古屋の陶磁器産業を代表し、今では総合的なセラミック産業に成長した森村財閥グループだ。

  • ノリタケグループ:陶磁器製造、販売。
  • 日本特殊陶業(株):セラミック。とくに半導体関連セラミック。
  • 日本ガイシ(株)碍子の生産、販売。セラミック材料生産。
  • TOTO(株):ウォッシュレット、衛生用具、生活用品。

 森村グループが成功した秘訣は、明治の変革時における欧米の洋食器の需要に対応するため、絵付師の有効活用、磁器の生産工程の合理化、アメリカに事務所設立を行うなど、海外需要に応じて先駆的に事業展開を行ったことである。三陶屋は江戸時代の成功体験のまま明治時代に突入したものの、明治時代の大変革に経営上の対応ができなかった。

 日本は西欧化のなかで、石炭を使用した石炭窯の使用方法や釉薬の着色技術など、ヨーロッパの産業革命以降の最新技術をドイツ人の技師、ゴットフリード・ワグネルから導入した。窯業産業は明治時代に、ガラスの制作、さらに欧風建築の普及によるセメント産業やタイル、レンガの発展が実現し、鉄鋼業などと同様に基幹産業に成長していった。

 明治時代はセラミックの歴史から見ると、天然素材(粘土)からつくる焼き物の時代から、天然原料を精製し、工業的にセラミックを生産する時代に入ったといえる。

 土器の焼成温度は800度、陶器は1,100~1,300度、磁器は1,300度で、エネルギー源として木材を使用していたが、窯業産業は20世紀の中頃からセラミック産業に転換していった。日本は戦後の廃墟から、短時間で経済力を見事に回復していった。

 筆者は、1968年に大学を卒業して総合商社に入社して配属された部署が製鉄原料部鉱石課であった。日本の高度成長の真っただなかで「鉄は国家なり」と言われる時代であり、インド、豪州、ブラジル、ペルー、南アフリカなどで主要原料である鉄鉱石を開発して輸入する業務であった。陶磁器も大地の粘土が原料であるが、鉄鉱石も大地からの賜物であり、土に縁を感じた人生でもあった。おかげでこれらの国々への出張や駐在も経験し、商社マンとして良き時代を過ごした。

 豪州駐在時にシリカ原料に関する話が舞い込み、メタリックシリコンの需要が日本で本格化しつつあった時代でもある。世界的にはエレクトロニクス時代に突入し、基礎原料としてのセラミックの需要が旺盛になってきた時代である。80年代に生まれた高純度化した原料により、機能性セラミックを的確に生産する時代に突入した。

 マイクロソフトの最初のウインドウズが世に出たのが、85年である。ここから、セラミック産業は大発展していく。最終回では、縄文土器がついにセラミック産業として高度に発展して、21世紀の最重要産業の1つとなるほどに飛躍することを述べ、まとめに入りたい。

<参考文献>
『日本やきもの史』 長谷部 楽爾著、美術出版社
『世界やきもの史』 荒川 正明他著、美術出版社
『原色陶器大辞典』 加藤 唐九郎編 淡交社
『かまぐれ往来』 加藤 唐九郎著、新潮社  
『我が心の旅路』 (一社)縄文道研究所・加藤 春一


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