2021年12月03日( 金 )
by データ・マックス

二審も死刑判決の福岡県警元巡査部長 妻子を殺めるまでの家庭の内実とは?(中)

 2017年に福岡県警の巡査部長が妻子3人を殺害したとされる事件で、福岡高裁は9月15日、無罪を求める被告の控訴を棄却し、一審の死刑判決を支持した。現職の警察官がなぜ、妻子を殺めたのか。裁判で明らかになった事実に基づき、「福岡県警史上最大の不祥事」といわれる事件が起きるまでの経緯を紐解いた。

パチスロに興じ家に帰らず

事件の現場となった中田被告の自宅
事件の現場となった中田被告の自宅

 中田被告は福岡市出身。地元の高校を卒業後、地元の大学に進学した。大学時代に留年しているが、パチスロにはまったことが原因という。

 それでも大学卒業後、福岡県警に警察官として採用され、05年に看護師だった由紀子さんと恋愛結婚。結婚後は08年に長男の涼介君、10年に長女の実優さんを授かった。はた目には順調な結婚生活だった。

 だが、実際には中田被告はいろいろな問題を抱えていた。1つは、結婚後もパチスロ好きが変わらなかったことだ。由紀子さんに仕事で遅くなったと嘘をついてまでパチスロに興じ、嘘がばれて叱責されると、同僚の家に1週間ほど泊まったりもした。幼稚園で子どものイベントがある日に家に帰らないこともあったという。

 中田被告は一審の被告人質問の際、そのことを検察官に指摘されると、こう主張した。
 「私は当時、子どもの前で妻に蹴られたりしていました。家に帰らなかったのは、そういう姿を子どもに見せたくなかったからです」。

 実際、由紀子さんは気の強い人だったらしく、中田被告に対して怒ると手が出ることもあったらしい。コップの持ち方が悪いという理由で中田被告を叱責し、母親や姉、妹から「厳しすぎる」とたしなめられていたという。

 もっとも、由紀子さんが中田被告に厳しくなるのも仕方ない面もあったようだ。この被告人質問では、こんなやりとりがあった。

 検察官 「家に帰らなかったことを由紀子さんのせいにしていますが、あなたが家に帰らずにやっていたことはパチスロでしょ。だから、由紀子さんに子どもの前で怒られたのではないですか?」。

 中田被告 「家に帰らずに時間を潰す手段がほかになかったので…」。

 検察官 「あなたが家で子どもの面倒をみていれば、由紀子さんは怒らなかったのではないですか?」。

 中田被告 「子どもは習い事以外では、自由な時間がないというか…子どもは学校の友達と遊ぶ時間がなかったというか…」。

   由紀子さんは「レベルの高い中学校に行かせたい」と子どもを塾に通わせていたほか、水泳やピアノを習わせるなど教育熱心だったという。中田被告としては、子どもをもっと自由に遊ばせてやりたいと考えていたのかもしれないが、家に帰らずにパチスロに興じていたのでは説得力を欠く。

 由紀子さんの母や姉、妹は中田被告について、「普通の父親だったらできることができない」と評したが、中田被告がそれに反論するのは難しいだろう。

(つづく)

【片岡 健】

▼関連記事
【小郡母子殺害事件】説得力を欠いた元警官の冤罪主張~裁判傍聴記

(前)
(後)

関連記事