2024年04月25日( 木 )

歯止めがかからない原油価格高騰(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

「脱炭素」が価格高騰の要因

原油 高騰 イメージ 原油価格が高騰しているが、その理由は需要拡大による供給不足が市場で懸念されているからだ。OPECプラスではこのような懸念を払しょくするため、少なくとも年内は現行の日量40万バレルの増産ペースを維持すると表明しているが、市場の反応は鈍い。

 原油価格が高騰しているもう1つの要因として過去の設備投資不振が上げられる。14~16年にかけての原油価格下落により石油・ガスの上流投資が半減し、設備投資の不振によって、現在の需要増加に対して十分な供給体制が用意できていないことが指摘されている。

 また、世界は「脱炭素」を目指し、再生可能エネルギーへの投資拡大ブームの最中にあり、化石燃料への投資が抑制されていることも価格高騰の原因となっている。要するに、脱炭素社会という風潮のなか、石油産業への投資が縮小したことが、このような結果を招いているのだ。加えて、原油高になると、短期間で増産できるシェールオイルが、従来は相場の上昇を抑える役割を演じてきたが、現在のシェールオイルは、そうした役割をはたせていない。

 シェールオイル開発に“リスクマネー”が注ぎ込まれる「シェールバブル」が数年前に弾け、現在はシェールオイルに対する投資が慎重になり、シェールオイルがすぐに原油価格の上昇を抑えるような状況になっていない。

世界経済にマイナスの影響

 また、中国の電力難も原油価格高騰の要因となっている。中国では現在、電力不足が深刻となっており、中国の31の地域のうち、20地域で電力供給が中断されたり、制限されたりしている。大規模工業団地が立地している遼寧省では「電力不足警報」が発令されているほどだ。こうした中国の電力不足は原油高の原因となり得る。中国政府は脱炭素社会を目指しており、従来の発電燃料である石炭の消費を減らさざるを得ない。石炭の使用を減らすと、天然ガスや石油の需要増加につながる。

 最近の中国の電力不足は中国政府の脱炭素政策とオーストラリア産石炭の輸入禁止措置による石炭価格の上昇が原因である。しかし、中国政府が脱炭素政策を掲げても、再生エネルギーの比重を一気に高めるのは難しい。そのため当分の間、石炭の代わりとなる石油や天然ガスに頼らざるを得ず、原油価格の上昇を招いてしまっている。

 世界が「脱炭素」の実現を急げば急ぐほど、原油価格高騰のリスクが高まるジレンマに陥っている。原油価格高騰は世界経済にも悪影響を与え、経済成長率を押し下げたり、消費の下押し圧力となったり、インフレを巻き起こしたりする危険性を孕んでいる。とくに、韓国のように中国への貿易依存度が高い国は、中国の電力不足によってサプライチェーンが崩壊する懸念がある。実際、半導体など、中国で供給される部品の調達に支障をきたしており、自動車業界、電子業界などへの影響は深刻である。

 北欧最大手・ノルデア銀行のアナリストによると、エネルギー価格の上昇で、来年の米国の予測経済成長率は3.5%から1.5%に下方修正されている。原油、天然ガス、石炭など、各種エネルギー価格の上昇が止まらず、世界経済に暗い影を落としそうだ。季節的にも暖房などで原油の需要は高まるし、エネルギー開発には少なくとも6カ月や1年くらいはかかるため、今すぐ投資をしたとしても供給が増えるのはその先のことである。当分は原油価格の上昇が続き、世界経済にマイナスの影響を与えそうである。

(了)

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