2024年04月26日( 金 )

【ロングインタビュー】立憲民主党福岡県連の代表代行に城井崇氏 保守層と無党派への浸透を目指す(前)

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 立憲民主党福岡県連合会は今月13日に常任幹事会を開き、福岡3区で落選した山内康一・県連代表の辞任を承認したうえで後任を城井崇・衆院議員(福岡10区)を軸に調整する方針を決めた。城井氏は当面、県連の代表代行に就き、12月4日の県連大会で新代表を決定する。城井氏は北九州市門司区出身の48歳。県立門司高校(現・門司学園中高)を経て京都大学総合人間学部卒。松下政経塾を経て、民主党代表などを務めた前原誠司氏の秘書に。2003年の衆院選で福岡10区から出馬して自民党の自見庄三郎氏に敗れるも、比例九州で復活当選。今回で4回目の当選。

必勝の法則のもと、保守層の切り崩しと無党派への浸透で勝利

立憲民主党の城井崇・衆院議員
立憲民主党の城井崇・衆院議員
(小倉北区の事務所で)

 ――立憲民主党福岡県連の新代表に内定されました。

 城井崇氏(以下、城井) 12月4日に福岡県連の定期大会があります。それまでは私が代表代行を務めることを決めたところです。定期大会までには国会議員団で改めて討議して、新しい代表を決定します。

 ――衆院選を振り返って。情勢調査では選挙前から終盤まで安定してリードを保っていた。余裕の勝利では。

 城井 マスコミを含めてそういう分析をされる方が多いのですが、現場の感触としてまったく違っていました。そもそも選挙というのは単純な足し算ではありませんし、街頭に立って戦った者としては「自分で直接お願いした数しか(票は)入らない」ということを再認識させられました。事前予想と違って投票率も下がりましたから。

 ――福岡県については自民党の独占が崩れました。立憲民主党(立民)は、小選挙区では5区の堤かなめさんと10区の城井さん、比例復活でしたが2区の稲富修二さんも当選しました。9区では無所属の緒方林太郎さんも勝っています。ただし全国的な総括でいうと、立民は惨敗したと言わざるをえない。

 城井 議席を減らしたわけですから当然、敗北という評価になるでしょう。そんななかでも福岡県については最小限の責任が果たせたのではないか。党の総括はこれからで、県連での総括も各総支部段階での議論をふまえたうえで県連大会で議論することになると思います。

 福岡2区はずっと接戦を続けていて、稲富さんは週刊誌報道などのハンデを抱えながら運動量でカバーして歯を食いしばった。現役の防衛副大臣相手によくぞ踏ん張られたと思います。5区の堤さんについては準備不足もありましたが、相手方(自民党)の分裂という構図と支援者の後押しに恵まれました。自民党の栗原渉さん陣営の一部が支援してくださったのもありがたかったですね。野党一本化の効果が足し算できた稀有な例だと思います。候補者が新人であまり嫌われていなかったのも力を合わせやすかった。次からは同じようにはいかないと、ご本人も気を引き締めているようです。

 10区については厳しい情勢を踏ん張って、なんとか小選挙区当選にたどりつけました。本来であれば、自民党候補との1対1対決の構図に持ち込みたかったが、2区と同様に10区も維新の候補が立つことになりました。ほかに計算外だったのは、いわゆる「野党共闘」についての東京の党本部と地元の温度差のようなものです。野党の一本化までは計算にありましたが、他の野党に対する距離感が直前に変更されたのは、もともと描いていた作戦とずれたという意味ではやりにくかった。具体的にいうと、大きく2つの意味でズレを感じていました。1つは連合さんと国民民主党さんを含めたズレで、もう1つが日本共産党さんとの距離感のズレです。

選挙戦での城井氏
選挙戦での城井氏

 選挙に臨むにあたって、私を応援してくださっている方々に対しては「今回は総がかりで挑む」と宣言していました。「立民だけでは勝てない。自民党に勝つには地元の地方議員さんも無党派層にも国民民主党さんにも加わっていただき、連合も官公労も民間労組も総がかりでやることが必要なんだ」と。ただし共産党さんとの距離感については、私が思っていた距離感と党本部との距離感がズレたものですから、地元で見えている私の姿と永田町から発信される距離感が違うことについて、すごく苦しみました。連合さんも結局、私個人を信用くださる方と東京の距離感が影響する方に二分されてしまった。したがって、私が「絆(きずな)の結び直し」と呼んでいた部分に大きなエネルギーを割くことになりました。

 稲富さんと私の違いがどこにあったのかというと、結局は連合さんが持っている力を束ねきれたかどうかだったと思います。結果論にはなりますが、私だけを応援した大きな民間労組もあったため、ここが最後の詰めの部分で効いてきました。ここがズレていた部分の修正を一生懸命に最後まで取り組めた部分でしょう。

 私はもともと今回の選挙で勝つためには保守層に切り込み、無党派層に応援していただくことが必要だと考えていました。その根拠になったのが、民主党時代から長く受け継がれている「9:6:3の法則」です。小選挙区で勝つには野党支持者の9割、無党派の6割、自民党支持者の3割の得票が必要だということで、私は選挙戦を通してこの数字を目標にしていました。しかし党本部が発信した野党共闘の中身はその構図が崩れるくらいの大激震になりました。共産党さんにしてみれば候補者を降ろすことは比例票が減るのも覚悟のうえだった、他党のことながら大きな決断だったと思います。ただし私は共産党さんとの距離を縮めて勝つという作戦はとっていなかったので、支援者の方々から違う心配をされてしまいます。

 本部が野党候補者一本化に力を尽くしたのはわかりますが、現地でがんばっている私は保守や無党派を自認する方々に対しても「私にやらせてほしい」と訴えることでなんとか踏ん張れた。共産党の支援は受けたものの従来の支援者が離れて総崩れという選挙区もあったなかで、福岡10区についてはそこで頑張れたのかなと。これは日頃の政治活動とご縁の積み重ねという部分が大きかったですね。とくに出身地である門司区を固められたことは本当にありがたかったですし、小倉北区はもともと地方議員の数も少なくて難しいなかで互角の勝負ができた。自民党はかなり業界団体を締め付けたうえに、公明党さんもしゃかりきになったなかでの戦いでしたが、出口調査でも1割以上の方が私に投票してくださった。日ごろの関係構築があったからこそだと思います。

共産党との共闘で「逃げた」票も多い?~科学的分析が必須

 ――立民の枝野前代表自身も「野党共闘」という言葉については否定していた。共産党やれいわ新選組も含めた他野党との距離の近さは必ずしも力にならなかったと。

10月31日、当選を決めた城井氏
10月31日、当選を決めた城井氏

 城井 もちろん、戦術として野党候補の一本化は必要でした。問題は共闘の組み方ですね。なぜ組むのか、何を一緒にやるのかが見えにくかったために、共産党さんやれいわさんのマイナスイメージが先行して「数あわせではないか」といった批判を受けた。一緒にやるのはコロナ対策や雇用、教育、社会保障、安全保障の一部の話なんだと限定的協力についてきちんと説明してはいたものの、それが一般有権者の皆さんの口にのぼるくらいわかりやすいかというとそれは足りなかった。

 最初から「政権の中には入らない」「立場が違う政策は持ち込まない」ということも言っていたのに、閣外協力の話が連合政権への共産党の参加というかたちに意図的に置き換えられたのはずいぶんなレッテル貼りだったと思います。福岡10区でも、青年会議所主催の公開討論会で自民党の山本幸三さんが「今回の選挙は革新政権か民主的政権の選択かの戦いだ」みたいなことをおっしゃったので、「山本先輩、それはあんまりですよ。共産党の話については立場が違うものは持ち込まないと確認しているので大丈夫です」と申し上げました。理屈が立つ説明があっても有権者の皆さんに届かなかったとすれば、この影響は大きかったと思います。

 野党共闘で得た票があれば逃げた票もあります。小選挙区はわかりにくいのですが、比例に限ってみると、共産党さんが候補者を立てなかったことによって得た小選挙区票が約300万票、他党に逃げた票が800万くらいあると読むことができます。最終的な精査はまだですが、非自民・非共産で戦ってきた構図と今回の限定的協力のどちらがリーズナブルだったのか。野党候補の一本化が必要なのは論を待ちませんが、それ以上踏み込むべきだったどうか、数字の裏打ちもみたうえで科学的に検証すべきですね。

 ――読売新聞などは、接戦区を増やしたという意味で野党共闘に効果はあったと分析しています。

 城井 着目点が違うんです。小選挙区の接戦区を増やしたのは一定の効果といえますが、これは私もそうでしたが、さまざまな野党の力あわせだと「比例区は立憲に」と言いにくくなったのです。そうすると「城井さんはいいけど立憲は……」「城井さんはいいけど枝野さんはちょっと」とか「共産党はいやだ」と。それで自民でも立民でもなく維新に流れた面がありました。あとは略称「民主党」問題というのも影響したのではないかと。

 比例票が伸びなかったことで、本来なら枠を確保できて押し上げられたはずの有為な人材を落としてしまいました。接戦区を増やしたプラスと本来比例区で確保すべきだった枠のマイナス、野党第一党の旗が見えにくくて分散したマイナスをきちんと総括すべきですね。

【国政取材班】
※城井氏の近影を除く他の写真は城井氏のTwitterから

(後)

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