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【BIS論壇 No.359】一帯一路と中央アジアの動向

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 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
 今回は2021年11月23日の記事を紹介。

中央アジア イメージ 中国やロシア、中央アジア諸国、それにインド、パキスタンなどが参加し、中国の広域経済圏構想、「一帯一路」にも加入している諸国が参加する上海協力機構(SCO)首脳会議が9月16日から2日間、タジキスタンの首都、ドウシャンべで開催された。「タリバン」が制圧したアフガニスタン問題も主要テーマになった。SCOは30年前の1991年にソ連崩壊後のロシア、カザフスタン、タジキスタン、キルギスの4カ国と中国が国境策定を目的に会議を上海で開催。開催地の名称を活用「上海ファイブ」が前身である。2001年にウズべキスタンが加盟。SCOとして発足。17年に西南アジアの有力国インドとパキスタンが加盟。

 SCOは加盟8カ国で人口は世界の4割。GDPは2割、国土は将来発展が予想されるユーラシア大陸の過半を占める。さらに今回の首脳会議で、オブザーバー国のイランの加盟を認めた。これでSCOの反米色がさらに強まるとみられる。SCOを中心とする中央アジアは21世紀に経済発展が予想され、一帯一路をけん引する地域だ。

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 中央アジアとともに発展しつつあるASEAN諸国もSCOのオブザーバーとして参加しており、SCOとASEANとの関係も注目する必要がある。中国の習主席は11月22日ASEANとの首脳会議をオンラインで開催。中国、ASEANの対話関係樹立から今年が30周年になることを記念して双方の関係を「包括的戦略パートナーシップ」に格上げすることを決定。

 「一帯一路」海のシルクロードのASEANとの関係強化に拍車がかかることになった。中国は長年、中国南部の南寧でも毎年中国、ASEAN見本市を開催。貿易拡大に力を注いでいる。今日、中国はASEANにとって最大の貿易相手国に成長しており、中国はこのASEANを足場にCPTPP(包括的環太平洋経済連携協定)への参加に関心を示している。アジアには華僑、華人4,000万人が居住しており、今後中国とASEANとの関係がさらに強化されるものと思われる。11月21日のNHK報道によれば中国はカンボデイアの港湾活用を目指し、タイの運河建設のFeasibility Studyを開始したとのことで、運河建設が実現すればアジアさらには世界の物流に一大変革をもたらすとみられ、その動向を注目する必要があろう。

 一方、トルコは11月12日イスタンブールで「チュルク語系諸国協力会議(チュルク協議会・加盟国~トルコ、アゼルバイジャン、カザフスタン、ウズべキスタン、キルギスの5カ国にオブザーバーにハンガリー、トルクメニスタン~2009年に設立)で「チュルク諸国機構」に改組を決定。トルコは中央アジア諸国のイスラム圏の利益を守ることで、将来発展するこの地域への影響力を強め、ロシア、中国、インド、イランと力を競う戦略とみられる。

 一方、中央アジアではロシアもEEU(Eurasia Economic Unionーユーラシア経済連合~ロシア、キルギス、カザフスタン、ベラルーシ)を結成しており、今後、中央アジアをめぐる、中国主体のSCO,ロシアのEEU,トルコのチュルク諸国機構、さらにSCO加盟国、インド、パキスタン、イランなどの協力と競争(Cooperation & Competition)の利害関係、動向に注目することが肝要であると思われる。


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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