2022年01月19日( 水 )
by データ・マックス

【常勝企業がなぜ負けた(1)】JR東海、リニア中央新幹線工事でトラブル続出(前)

 東海旅客鉄道(株)(JR東海)で、リニア中央新幹線の工事トラブルが続出しており、2027年とされる東京・品川~名古屋間の開業は一段と厳しくなった。東海道新幹線というドル箱路線を持ち、快走していたJR東海だが、社運を賭けたリニア中央新幹線が「疫病神」に見舞われた。

岐阜のリニア工事で初の死亡事故

 リニア中央新幹線工事で崩落事故による初めての死者が出たと共同通信(10月27日付)が全国に配信した。

 〈27日午後7時20分ごろ、岐阜県中津川市瀬戸にあるリニア中央新幹線瀬戸トンネルの工事現場で崩落が起きたと119番があった。県警とJR東海によると、発破作業後の点検で非常口にいた5人のうち作業員2人が巻き込まれ、福井県美浜町の小板孝幸さん(44)が死亡、愛知県長久手市の男性(52)が左足を骨折する重傷を負った〉

 瀬戸トンネルは本線トンネルが長さ約4.4㎞、本線への資材搬入に使う非常口トンネルが長さ約0.6㎞の計画で、2019年に着工した。

長野のトンネル工事で再び事故

 11月にも再び事故が発生した。

 〈事故は(11月)8日午前8時20分ごろ伊那山知トンネルの工区で起きた。斜坑と呼ばれる作業用トンネルを200mほど掘削した先端で、発破用の火薬を装填していた最中、作業員の1人が異常に気付き待避を指示。幅約6m、高さ5mにわたって掘削面が崩れ、待避中の50代の作業員が土砂にあたり病院へ運ばれた。右脚のふくらはぎ筋肉の炎症だった〉(共同通信11月8日付)

  リニア工事をめぐっては、17年12月に長野県中川村の県道脇で、19年4月には中津川市の非常口トンネル入り口付近で事故が起きている。

事故が多発、岐阜県知事が工事中断の継続を要望

 〈岐阜県の古田肇知事は(11月)29日、名古屋市のJR東海本社で金子慎社長と面会し、長野、岐阜両県のリニア中央新幹線のトンネル工事で相次いだ事故を受け、原因究明と再発防止策が講じられるまでは岐阜県内のトンネル工事を再開しないよう求めた〉(共同通信11月29日付)

 2027年に予定する東京・品川~名古屋間の開業は一段と厳しくなった。

総工費は当初計画を上回る10兆円超 

 リニア中央新幹線は、JR東海が磁力で浮上して走る車両を使い、東京、名古屋、大阪を結ぶ路線。最高時速は500kmで、所要時間は東京・品川~名古屋が最短40分、東海道新幹線より約1時間短縮。大阪までは同67分で、早ければ37年の大阪延伸開業を目指していた。

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 総工費は品川~名古屋間で5兆5,000億円。大阪までの総工費は約9兆円を想定していた。建設資金に財政投融資を活用し、国から3兆円を借り入れている。ところが、JR東海は今年4月に品川~名古屋間の総工費は従来計画から約1兆5,000億円増加の約7兆400億円になると修正した。難工事が多いことによるものでJR東海の財政負担は一段と増す。ドル箱の東海道新幹線の収益を食い潰しかねない事態だ。

静岡県知事選、リニア工事による大井川水量問題が争点

リニア中央新幹線 イメージ リニア中央新幹線の最大の課題は「静岡県の理解と協力」にある。静岡県を通る区間は長さ25.0kmの南アルプストンネル内の10.7kmだ。南アルプストンネルを掘れば、山の水は山梨県側に抜ける。トンネル工事により8市2町の約60万人が利用する大井川の水量が減る恐れがあるとして、静岡県の川勝平太知事が県内の工事許可を出さなかった。

 20年6月、JR東海の金子社長と静岡県の川勝知事とのトップ会談がもたれたが、決着がつかなかった。

 川勝知事がここまで強硬な背景には、静岡空港ができた際に、川勝知事がJR東海に新幹線の新駅をつくって欲しいと頼んだものの、簡単に“蹴飛ばされた”ことを根にもっているからではないか、と言われてきた。

 任期満了にともなう静岡県知事選(21年6月20日投開票)は、4選を目指す現職の川勝平太氏と、自民党県連が全面支援する党所属参議院議員の国土交通副大臣の岩井茂樹氏=静岡選挙区=の一騎打ち。川勝氏陣営には立憲民主、国民民主の両党県連と連合静岡による支援態勢を構築する。与野党が全面対決する構図だ。

 岩井氏は国交省の要職に就いていることから、リニア中央新幹線建設にともなう大井川の流量減少問題が、知事選の最大の争点になった。

 結果は川勝氏95万票(60.5%)、岩井氏62万票(39.5%)。川勝氏が30万票の大差をつけて4選をはたし、静岡県内でのリニア工事着工は絶望的になった。

(つづく)

【森村 和男】

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