2022年01月25日( 火 )
by データ・マックス

無秩序膨張から賢く衰退へ 今こそ考えるべき持続可能な都市とは

建築家 有馬 裕之 氏

多様性で成り立つ都市 錯乱のニューヨーク

ニューヨーク    我々建築家の立場から見ても、コロナ禍をきっかけとして、建築に対する考え方や価値観、さらには都市の在り方そのものが、劇的に変わってきているのを感じています。現在、SDGsの考え方が世界的な潮流になっていますが、効率性や機能性の向上だけを追求してきた、これまでの20世紀型の都市の在り方が次第に立ち行かなくなり、個々の都市が、それぞれ持続性をもった魅力をいかにつくっていくかを問われるようになりつつあるように思います。

 たとえば、40年以上前に書かれたオランダの建築家・レム・コールハースの著書『錯乱のニューヨーク』では、ニューヨーク・マンハッタンの建築群がどのように形成されていったかについて触れられています。ニューヨークというまちの何が面白いかというと、エリアによって住む人が異なり、各々の文化によって、それぞれの個性がすごく表現されている点にあります。そうした全体として一定のパターンがない都市の在り方が、当時の建築家目線では「錯乱」とも見えるようですが、良いかどうかは別にしても、それによっていろいろな人が集まる仕組みができて、経済や文化を多様性に導き、世界最高峰の都市・ニューヨークの地位を築き上げています。これからのSDGs的な次なる都市の流れを生み出そうというときに、こうしたニューヨークの都市としての在り方は、どこかつながってくる部分があるのではないかと感じています。

賢く、美しく調整しながら都市を縮小させていく

建築家 有馬 裕之 氏
建築家 有馬 裕之 氏

    人口が減少していく今の日本においては、高度成長期にスプロール化した都市とその周辺部を、「コンパクトシティ」というかたちで集約していくことが取り沙汰されています。そしてこれからは、「スマートデクライン(Smart Decline)」――つまり「賢く衰退していく」ことも考えていかなければならないのではないでしょうか。「衰退」というと少々言葉が過激かもしれませんが、要するに、今まで拡大して膨張してしまった都市を、賢く、美しく調整しながらデザインし、縮小させていくということです。都市における人口減少を許容したうえで、必要な機能は残しながら、緩やかにわざと衰退させていく仕組みを考えていくことは、これからのSDGs的な都市の在り方を考えるうえで、新しい概念として表れてくるように思います。

 奇しくもコロナ禍をきっかけとして、バーチャルではないリアルの都市の価値――つまり、その場所に実際に人々が集まることに対する意味が問われるようになりました。「建築とは何か」、そして「都市とは何か」について、SDGsの観点も踏まえながら、今こそ改めて問い直していく必要があるように思います。


<プロフィール>
有馬 裕之
(ありま ひろゆき)
1956年、鹿児島県生まれ。80年に(株)竹中工務店入社。90年「有馬裕之+Urban Fourth」設立。さまざまなコンペに入賞し、イギリスでar+d賞、アメリカでrecord house award、日本で吉岡賞など、国内外での受賞暦多数。作品群は、都市計画から建築、インテリア、グラフィックデザイン、プロダクトデザインなど多岐にわたり、日本・海外を含めたトータルプロデュースプログラムを展開している。

関連記事