2024年04月26日( 金 )

【常勝企業がなぜ負けた(2)】エイチ・アイ・エス(HIS)~創業者・澤田氏、増資引き受けのため澤田HDを売却(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

 新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染者が確認されたものの、国内のコロナ感染者数は減少し、大打撃を受けた旅行業界にも需要回復の兆しが見え始めている。政府が再開を検討する観光支援事業「Go Toトラベル」への期待が高まっているが、その矢先に大手旅行会社、エイチ・アイ・エスの子会社で「Go Toトラベル」の不正が発覚した。

HIS子会社2社「GoToトラベル」で不正

ホテル イメージ    (株)エイチ・アイ・エス(HIS)は12月9日、政府の旅行需要喚起策「Go Toトラベル」に関し、子会社2社で不正があったと発表した。宿泊の実態がなく、同事業の対象にならない取引があったという。

 子会社は(株)ジャパンホリデートラベル(大阪市)と(株)ミキ・ツーリスト(東京都港区)。8日に弁護士やHIS役員ら3人でつくる調査委員会を設置し、調査委で不正の内容や件数などの調査を進める。

 「Go Toトラベル」事業は、コロナ禍で低迷する観光業界を支援するため、1人1泊2万円を上限に旅行代金の最大半額を補助する仕組み。
TBS NEWSが9日午後11時にHIS子会社の不正を「調査報道23時」でスクープ報道することになったため、HISは急遽、報道の前に発表した。

 その後、報道各社は、政府関係者の話として、不正申請が少なくとも延べ1万8000泊以上ある可能性があると伝えた。上限額で1万8000泊を申請した場合、宿泊費の割引分で約2億5,000万円が補助で支払われたことになるという。

 子会社2社は不正受給で摘発されることになるだろう。親会社HISの経営者の責任問題に発展するのは避けられない。

 不正の影響を精査するため、13日に予定している2021年10月期の決算発表を延期すると発表していたが、決算の公表時期は未定。上場会社が決算発表を延期するのは、上場廃止になりかねない異常事態だ。

TBS「調査報道23時」がスクープ、GoTo不正利用

 TBSは12月10日、『「会社ぐるみで・・・やばいことをしたな」HISグループ子会社がGoToを不正利用の疑い』と題する「調査報道23時」の内容をネットで全文公開した。要約する。

 すべては、GoToトラベル事務局からある夫婦に届いた1通の手紙から始まった。

 男性:「((昨年)10月20日から12月28日までの69連泊)」

 都内のホテルに「69連泊しなかったのか」と確認を求める手紙だったが、夫婦はそのホテルの名前すら知らない。名前を勝手に使われたケースはほかにも相次いだ。

 Aさんから、情報提供窓口「TBSインサイダーズ」に、核心を突く情報が寄せられた。

 Aさんは、大手旅行会社HISの子会社「ミキ・ツーリスト」に勤めていた。そのミキ・ツーリストに「勝手に名前を使われた」というのだ。

 ミキ・ツーリストの役員が社員にあてたメール。「従業員の氏名と住宅の情報を、本人の同意を得ることなく無断で利用、ホテル側に提供した」

 ミキ・ツーリストは、社員80人の個人情報を使い、東京都内のホテルに、昨年、1部屋4人で20部屋、60泊の宿泊を契約していた。メールによると、社員80人×60泊分、つまり4800泊分が予約されていたという。

 一体なぜ・・。メールにはその背景も書かれていた。それは、東京オリンピック。

 ミキ・ツーリストは、2020年の東京五輪に向けてホテルの客室を押さえていた。しかし、新型コロナで開催は延期となり、大量の売れ残りが生じた。その損失をGoTo利用で穴埋めしようとした。その際に社員の名前を勝手に使ったというのだ。

 ミキ・ツーリストに勤めていたAさんは「会社ぐるみですよ。やばいことをしたなと。不正受給なんじゃないかと正直思いました」と語っている。

(つづく)

【森村 和男】

▼関連記事
エイチ・アイ・エス ハウステンボス売却計画の衝撃!(1)

【常勝企業がなぜ負けた(1)】
(中)

関連キーワード

関連記事