2024年05月05日( 日 )

不正を予防する情報公開制度を構築 情報公開が行政、市民参加を活発に

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NPO法人市民オンブズマン福岡
代表幹事 児嶋 研二 氏

自治体の情報公開度を調査、情報公開条例制定を働きかける

 1990年代半ば、福岡県庁の裏金、官官接待の実態が明るみになり、世間で大きく注目された。市民オンブズマン福岡は、それらの実態解明を目的として95年12月に発足、99年にNPO法人の認証を得た市民団体である。事務所は発足の呼びかけ人である名和田茂生弁護士の事務所に置かれている。

NPO法人市民オンブズマン福岡
代表幹事 児嶋 研二 氏

 代表幹事の児嶋研二氏によると、県庁では戦前からトラブル解決などのために必要な現金を「闇給与」「カラ出張」で捻出することが常態化していた。ほかの自治体や警察なども同様で、90年代ぐらいまではマスコミなども必要悪として問題視せずにきたという。しかし時代は変わり、より高いモラルが求められるように。児嶋氏は、問題行為の発生を予防するには自治体が情報公開制度を整え運用することが必要との考えに基づき、不祥事の追及だけでなく制度全般の改善に力を入れてきた。

 市民オンブズマン福岡も参加している全国市民オンブズマン連絡会議では、97年から都道府県・政令市を対象に全国情報公開度ランキングの公表を始めた。2005年の調査で福岡県が最下位となったことが地元紙に報じられたのを機に、当時の麻生渡知事も翌年以降積極的になる。1997年当時、情報公開条例を定めていた自治体は福岡県内で2割ほど。条例制定を促すため、県内全自治体の情報公開度ランキングの公表を始めた。こうした積み重ねが奏功し、現在では県内全自治体が同条例を定めている。

 一方、情報公開が遅れているのが地方議会だ。地方自治法は議会に「会議録を作成させ、ならびに会議の次第および出席議員の氏名を記載」するよう求めている。にもかかわらず、本会議の議事録のみ作成し、委員会の議事録は職員のメモ書きのみという自治体がある。ホームページで議事録を公開している自治体も少ない。福岡市は公開しているものの、委員会の発言者名を記載していない。情報公開の制度設計をめぐる課題は多く、今後、議員の政務活動費の公開、委員会の議事録の作成およびネットでの公開などに基づくランキング調査などを計画している。

情報公開の進展は行政に反映され市民参加を促す

 全国市民オンブズマン連絡会議は2021年の第8回全国大会を9月にオンラインで開催。全国の人とつながりやすくなったと、変化を前向きに受け止めている。大会の資料はホームページで公開されている。

 児嶋氏はオンブズマンの活動を通じ、情報公開の進展は行政に反映されるという確信を強めている。活動開始から約25年経過、全国的にメンバーの高齢化が進むなか、福岡ではより身近な町内会などの問題に関心をもち、新たに参加する人が増えており、議会や自治体の在り方に疑問を抱く現職の地方議会議員や自治体職員も含まれる。従来の活動の資料をデータ化してホームページに掲載する準備も着々と進んでいる。市民が参画し、より良いまちとなるよう、オンブズマンの活動は続いていく。


<INFORMATION>
代 表:児嶋 研二
所在地:福岡市中央区薬院1-6-9-702 名和田法律事務所内
設 立:1999年9月
TEL:092-731-7172
URL:https://r.goope.jp/fombuds


<プロフィール>
児嶋 研二
(こじま けんじ)
1953年生まれ。山口県下関市出身。98年、予備校の数学講師の傍ら、市民オンブズマン福岡に参加。

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