2024年04月26日( 金 )

【東京-ロンドン グリーンファイナンスセミナー2021】COP26での決定をどう実現するか、金融市場の変革でESG投資本格化へ

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東京-ロンドン グリーンファイナンスセミナー2021    12月10日にオンラインで開催された「東京-ロンドン グリーンファイナンスセミナー2021」では、東京都とロンドンの金融に関する有識者が集まり、講演や対談を行った。

 今回のセミナーで話題の中心となったのが、イギリス・グラスゴーにおいて行われた「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(以下、COP26)」(開催期間:10月31日~11月13日)だ。確実に進みゆく気候変動を食い止めるために、「2030年までの約10年間で何に取り組むべきか」について話し合われた。21年はアメリカのバイデン政権が発足したことにより、世界が環境問題に対して本腰を入れる年となった。COP26での最大の決定事項は「産業革命前からの気温上昇幅を1.5℃に抑える」。世界共通の努力目標が正式に設定された。

 日本政府は20年10月、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする=カーボンニュートラルを目指すことを宣言。地球温暖化はかねてより危険と意識されていたものの、具体的な施策についてはあまり浸透せずにいた。今後はバイデン政権や今回のCOP26の決議など、世界の動きに引っ張られるように、日本国内でも本格的に自治体・会社レベルでの動きが求められていくことが予想できる。

 対談パートでは、「今後のグリーンファイナンスにおける日英協力の方向性」をテーマに、英国外務省気候変動特別代表ニック・ブリッジ氏、金融庁チーフサステナブルファイナンス・オフィサーの池田賢志氏が登壇。ブリッジ氏はまず初めに、COP26での会議内容について振り返り、長年問題視されていた気候変動のためにアクションを起こす段階に入ったことを指摘し、「これがまだスタートラインに過ぎず、壊滅的な気候変動の発生まで、私たちにはもう時間が残されていない」と語気を強めた。

 一方の池田氏は、今回のCOP26によって世界の気候変動への意識が高まり、具体的な目標ラインが設定されたと評価したうえで、その実行のためには資本の集約が喫緊の課題となっていることを挙げた。現在、日本政府や国内の金融機関ではさまざまな会議や提言が行われ、グリーンファイナンスを企業レベルに落とし込むための準備が進んでいるが、実行段階には至っていない。「日本国民としては、いまだグリーンファイナンスに対して懐疑的な姿勢をもっている。実施可能な計画を立て、金融機関、投資対象会社へとカスケードダウンしていく必要がある」と日本国内の現状を話した。

 金融ラウンドテーブルでは、「グリーンファイナンスにおける最新の取り組みと今後の展望について」をテーマに、東京都およびロンドンの有識者8名による講演が行われた。

東京都知事 小池 百合子 氏

 コロナ禍を乗り越えた先での持続可能な成長として「Sustainable Recovery」を目指し、グリーンボンドの継続的な発行、クリーンエネルギー拠点整備、サステナブルエネルギーファンドの創設などを進める方針。「シティ・オブ・ロンドン」と東京が連携をとり、お互いに発展していけることを期待している。

シティ・オブ・ロンドン
第693代ロードメイヤー
ヴィンセント・キーヴェニー 氏

 今、気候変動を食い止めるための重要なポイントに差しかかっている。金融についても深く議論されたCOP26は、「ファイナンスCOP」だったともいうことができ、資金の供与の申し出など、ファイナンス業界の人々が実際に行動し始めている。彼らの動きはトランジションのために必須で、真の課題に取り組むために重要だ。

 国家としても、環境に優しくない世界になりつつあることは良くないと認識しており、グリーンな環境に身を置きたいと望む。気候変動におけるファイナンスの役割への考え方が変わり、各国で然るべき役割を果たそうとする動きが出てくると思う。ファイナンスにつながる経路が広がるよう、規制の枠組みの整備や資本の投入などを行いたい。

(一社)東京国際金融機構
会長 中曽 宏 氏

 東京都の最新の戦略である「国際金融都市・東京」構想2.0には、3つのキーポイントがある。

 1つ目は「TGFI(Tokyo Green Finance Initiative)」。グリーンファイナンス市場の拡大のため、東京都独自のグリーンボンドの発行や他市場で同様のグリーンボンドが発行される際の支援など、グリーンボンドに関する情報プラットホームの構築を目指す。

 2つ目は「金融のデジタル化」。キャッシュ中心の社会だった日本がコロナ禍を受け、バーコード決済など、金融のデジタル化が急速に進んでおり、フィンテック企業が既存の金融サービス提供会社と協力していくことが予想される。また、グリーンファイナンスにおいては、フィンテックが重要な役割を果たし、グリーンウォッシュの排除など、健全な発展のために尽力してくれるだろう。

 3つ目は「多様な金融プレーヤーの誘致」。税制改正や外資企業のためのサポートオフィス創設、英語での登記を可能にするなど、日本への進出を考える外資系企業への支援や設立のための規制の緩和を行う。

 また、TGFIの重要な構成要素の1つとなる「トランジション(移行)ファイナンス」が挙げられる。中小企業の多重構造を持つ日本としては重要な部分で、グリーンへの移行過程においてもシステムを整える必要がある。今後のグリーンファイナンスを発展させるべく、具体的な行動が実行され始めているのが現在の状況である。

【杉町 彩紗】

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