2024年04月30日( 火 )

ストラテジーブレティン(297号)2022年の市場展望~NEXT GAFAMを担う日本企業のビジネスモデルに注目せよ~(中)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
 今回は2022年1月1日付の記事を紹介。

新プレイヤーと新投資主体(個人の積立投資)が日本株の魅力度を高める

 2022年に日本株式が相対的魅力度を高めるとしたら、その理由として以下4点ほどが指摘できる。

i. 景気拡大上方修正幅大→コロナでは健康被害最小の日本が、先進国最大の経済被害(経済成長の落ち込み)を被った。コロナ終息による景気のリバウンドは日本が一番大きくなるだろう。IMFなどは日本の経済見通しを大幅に上方修正してくるのではないか。

ii. 地政学の順風・・円安容認、日本へのハイテククラスター回帰、運命の神が日本に微笑む

iii. 個人投資家資金の流入などにより株式需給改善、バリュートラップ脱却(=日本株の割安感是正)が進展していくだろう。

iv. 日本の潜在的優良ビジネスモデル再評価へ。

 ここでとくに説明が必要なのは、iii.とiv.である。

潜在的株式投資待機資金は世界最大、証券投資講座着実に増加

 日本の家計はまったく金利が付かない現預金を1072兆円も保有している。この株式投資待機資金の大きさは世界最大である。この資金の一部でも配当だけで2%のリターンがある株式市場に回れば、株価は大きく上昇する。その萌芽は見えつつある。真剣に自分の将来を考えなければならない若者を中心にして、つみたてNISAやiDeCoなどで資産形成を行う動きが、このコロナ禍において目立つようになってきた。図表8に見るように証券口座数の増加ペースが速まっている。早晩個人の株式積立資金が最大の株式買い主体に育っていくだろう。

図表7: 日米家計の資産配分比較 / 図表8: NISA口座数の推移
図表7: 日米家計の資産配分比較
図表8: NISA口座数の推移
図表9: 証券会社一般NISA口座による買い付け額推移
図表9: 証券会社一般NISA口座による買い付け額推移

(2) NEXT GAFAMの資格を持つ日本企業群

日本産業の主役交代が急速に進んでいる

 今や日本経済を代表する企業は、経団連や経済同友会などに集う、昭和時代からの銀行、重厚長大産業(鉄鋼・化学・重電・重工)、自動車、電機企業等のエリート企業群ではない。GAFAMにも対抗できるビジネスモデルを持つ新興大企業が、日本を代表するプレイヤーになっていることは、うれしい驚きである。時価総額ランキングの推移でみると、急激に日本の担い手企業が変わっている。それらは将来GAFAMにも匹敵する潜在力をもってくるかもしれない。

図表10: TOPIX規模別株価推移
図表10: TOPIX規模別株価推移

 日本は米国と異なりリーディングカンパニーの新陳代謝が長らく起きなかった。しかしコロナ危機を挟んだ数年間のうちに、日本の将来を託するのに十分な資格を持つ企業群が台頭している。図表11の緑シャドウは武者リサーチが勝手に(恣意的に)格付けしたNEXT GAFAM時代の日本のリーディング企業であるが、2015年までは上位20社中2社程度であったものが、2021年12月末では12社と急増していることがわかる。旧態依然たる大企業の停滞・没落と新興中堅企業の台頭という図式は10数年前から進行し、それは図表10に見るようにTOPIXの規模別株価パフォーマンスに如実に表れていた。その花形役者交代がいよいよ、ひのき舞台で起きつつあるのである。

図表11: 日本株式時価総額トップ20社推移
図表11: 日本株式時価総額トップ20社推移

GAFAMの既存ビジネスは収穫逓増期から収穫逓減期への過渡期にある

 今世界ではGAFAMが飛ぶ鳥をも落とす勢いで繁栄し、米国株価もそれにより突出したパフォーマンスを続けている。それはGAFAMが支配するインターネットプラットフォーム産業が収穫逓増期にあるからである。

 商品や産業は、1.収穫逓増期、2.収穫逓減期、3.衰退期、4.安定期(or 絶滅期)と言うライフサイクルをもっている。これをビールの飲酒量と効用の関係で考えてみよう。最初のミニグラスでは到底満足できないが大ジョッキーで一気に乾いたのどを潤すときに大いなる満足が得られる。ここまでが収穫逓増期であり、飲めば飲むほど、最初の一杯よりも次の一杯の方が大きな満足が得られる。しかしさらに飲み進めると徐々に快感が薄れる限界収穫逓減期に入る。そしてさらに飲み進むと悪酔いが始まり、快感は不快感に変わり、ついにはビールを飲むことを止める、これが減衰期である。農業の歴史を振り返ると、原始採集経済段階にあった人類が、農耕を始め飛躍的に生産力を高めたBC4000年以降、日本ではAC200年頃が収穫逓増期であり、超過リターンが人口増と、ピラミッド・古墳などの巨大構築物をもたらした。しかし古典派経済学が農業を分析の対象にした中世末期、近代初期には収穫逓減期に入り、産業革命とともに衰退期に入り、今ようやく安定期に入っている。

図表12: 商品と産業のライフサイクル
図表12: 商品と産業のライフサイクル

(つづく)

(前)
(後)

関連キーワード

関連記事