2022年05月19日( 木 )
by データ・マックス

【岐路に立つ中小企業】ウィズコロナ下のサバイバル 中小企業に求められるものとは?

 2020年からのパンデミックによる世界経済の停滞に、各国は巨額の財政出動で対応した。ワクチン接種が進み、コロナ禍が収束に近づきつつある現在、財政出動の反動としてのインフレ懸念から、テーパリング(中央銀行の資産買い入れを減らすこと)による出口探しが始まっている。世界経済がプラス成長からマイナスに転じたため、それをプラスに戻す作業だ。しかし、コロナ以前から経済が停滞していた日本の事情は異なる。ここでは日本経済が抱える問題を考察しながら、中小企業が向き合うべき課題について考えてみたい。

沈下する日本市場

東京 夜景 イメージ    2021年は「ウッドショック」が住宅市場に影響を与えた年だった。木材に限らず、資材価格の高騰は企業経営を圧迫した。日本の消費者は厳しく、「安くて質も良い」ことへの要求が強い。価格転嫁ができなければ、企業の利幅は薄くなる。価格高騰の要因はさまざまだが、日本の経済力が低下し「買い負け」していることが根底にある。

 日本のGDPは世界3位だが、米中に年々差を広げられている。新興国の台頭もあり、市場としてのボリュームに魅力がなくなった。同時に1人あたりの平均年収で韓国に抜かれるなど、豊かさも低下し続けている。コロナ収束で米中の経済が回復に向かい、魅力のない日本市場は後回しとなった。

 政府の「成長と分配の好循環」は当然すぎる目標だが、賃金上昇を目指すことと、外国人材の受け入れ拡大は矛盾する政策だ。さらに資材価格の高騰によるコスト高が、コスト圧縮のための人件費削減を招くため、所得が右肩上がりになる可能性は低い。そうしたなかで物価だけが上昇すれば、スタグフレーションへの突入が現実味を帯びてくる。中小企業は厳しい景気環境での経営を覚悟しておく必要があるだろう。

過剰債務社会

 コロナ禍に突入し、企業倒産は減少した。緊急措置として、いわゆるコロナ融資が実行されたためだ。経済活動をストップさせた対価だが、本来なら倒産すべき企業も生き残らせた。延命措置では市場原理による新陳代謝が進まず、多くの中小企業が過剰債務に陥っている。中小企業向けの融資は20年3月からの1年間で30兆円も増えた。ただし増えたのは信用保証付き融資と政府系金融機関の融資であり、民間金融機関のプロパー融資は減少した。銀行はしたたかにリスクを回避し、貸し倒れで代位弁済が増えれば、そのツケは国民に跳ね返ってくる。

 コロナの収束は、この異常な状態が正常な状態へと調整されていくことを意味する。本来なら倒産していたはずの企業と、コロナによるダメージで倒産してしまう企業、その双方の整理が進むはずだ。飲食業などを中心にコロナの影響を大きく受けた企業は今後、返済に追われる日々となる。抱える必要のなかった債務の返済が、長期にわたって続いていくことになる。薄利の企業であれば、心が折れて途中で投げ出すところも出てくるだろう。

デジタル後進国

 厳しい経営環境が予想されるなかで、中小企業も生産性の向上が必須条件だ。昨今、DX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性が語られるが、ビジネスモデルの劇的な変革を意味する真のDXは容易ではない。ただし、既存モデルの延長線上で推進できるIT化、デジタル化は急務だ。IT化は経営トップの理解がなければ、なかなか進まない。Z世代(25歳以下)はデジタルに強いが、ビジネスモデルや業界知識などに乏しく、若年世代に任せてもうまくいかない。重要になるのは、ミレニアル世代(25~40歳)といわれる中間層だろう。デジタルに対する抵抗感も少なく、ビジネスに関しても一定の知見を蓄えてきた世代だ。この中間層の意識がIT化に積極的か消極的かによって、組織力に大きな差が表れてくるだろう。

 組織のIT・デジタル活用力は、個人の力の総和であり可視化が難しいが、業績に歴然とした差が出る領域だ。組織としては最低ラインの底上げを図っていくことが重要で、「AIやビッグデータは大企業の話」ではなく、中小企業も活用すべきものと認識しなければならない。

真の自立した経営

東京 夜明け イメージ    日本企業の生産性が上がらない大きな理由に、解雇規制がある。正社員が既得権として守られる社会システム上で、採用と解雇に柔軟性がある世界標準の人材流動性は生まれない。現行制度がそうである以上、そこに対応していくしかないが、その場合、企業にとって最大のリスクは生産性の上がらない人材を抱え込んでしまうことだ。

 新卒のトップクラスの優秀な人材は、起業するか、給与の高い海外企業へ流れ、その次の層を国内大手が青田刈りする。中小企業では生産性の上がらない人材を抱えるリスクが高くなることは、不都合な真実だ。人材争奪戦に勝つための何か(待遇、やりがい、社会的使命)を訴えかけながら、収益向上を目指すためのビジネスモデル構築、サービス強化を進めていかなければならない。

 日本経済の競争力低下、コロナ禍、デジタル化の遅れ、人材不足と、まさに「無理ゲー」(攻略が無理なゲームの略)状態だが、そもそも自社を日本経済のなかの一企業と捉えることが間違いなのかもしれない。テクノロジーが進展しても、中期的に日本経済のダウントレンドは間違いなく、生き残るためには、自社を世界経済のなかの一企業という意識へと変える必要がある。日本経済の枠にとどまらず、環境に関係なく成長する、真に自立した経営が中小企業にも求められる時代に入ったのではないか。

【緒方 克美】

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