2024年05月11日( 土 )

ウクライナ紛争とバイデン大統領の深層

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回はバイデン大統領によるウクライナ動乱誘導の可能性を示唆した3月1日付の記事を紹介する。

米国がアフガニスタンに軍事侵攻した際、あるいはイラクに軍事侵攻した際、西側メディアはアフガニスタンやイラクの惨状を十分に伝えていない。

今回のウクライナ報道と天地の開きがある。

メディアが力を注いだのは、米国による軍事侵攻がいかに正当なものであるかについての解説だった。

米国はイラクが大量破壊兵器を保持しているとしてイラクに軍事侵攻した。

国連の決議を破るかたちで軍事侵攻した。

しかし、イラクから大量破壊兵器は発見されなかった。

イラク治安部隊および多国籍軍の犠牲者は2万5,000人規模とされたが、イラクの民間人の死者は10万人から60万人と推定されている。

今回のウクライナとは比較にならない規模の現地の民間人犠牲者が生み出されている。

ロシアの軍事行動を正当化する考えはないが、報道における偏向を十分に認識することは重要である。

米国のバイデン大統領は正義の騎士を演じているが、バイデン大統領の行動がロシアの軍事行動を誘発した側面を否定できない。

強硬姿勢を示すロシアに対して、米国のバイデン大統領は紛争が勃発しても米軍を展開することはないことを明言してきた。

他方、NATOもウクライナがNATOに加盟していないことを理由に、NATO軍を配備することはないことを明言してきた。

これらの行動がロシアの軍事侵攻を促進した面を否めない。

おびき寄せられて侵攻に踏み切り、その後に激しく非難されている図式が浮かび上がる。

ウクライナ問題の核心はウクライナのNATO加盟問題である。

ロシアは2つの目標を明確にしてウクライナに対応している。

第一はウクライナ国内のロシア民族の保護。

ウクライナには多数のロシア系住民が居住している。

とりわけ、東部ドネツク州、ルガンスク州ではロシア系住民が多数を占める。

ウクライナ政府と両地域の自治政府との間で戦闘行為が継続されてきた。

これら地域の住民の安全を図ることが第一。

第二は、ウクライナのNATO加盟を阻止すること。

NATOは軍事同盟であり、旧ソ連邦にまでNATOが東方拡大することはロシアにとっての重大な脅威になる。

しかし、ウクライナのゼレンスキー大統領はウクライナのNATO加盟方針を明言し、NATO諸国に加盟の早期許可を強く求めてきた。

その裏側にバイデン大統領の強力な誘導がある。

NATOの東方拡大については、1990年のソ連ゴルバチョフ共産党書記長と米国ベーカー国務長官との間でのドイツ統一をめぐる交渉のなかで、米国がNATOの東方不拡大を明示したことがゴルバチョフ回想録に明記されている。

これ以外にも、米国で開示された外交文書で事実関係を確認できることを専門家が明言している。

しかし、冷戦終結後、NATOは東方拡大を続けてきた。

NATO側が約束違反を実行してきたことになる。

ウクライナ問題の直接の契機は2014年の政変だ。

ヤヌコヴィッチ大統領は民主的な選挙で選出された正統性のある大統領だったが、暴力的革命によって追放された。

この暴力的革命を背後で指揮したのが米国であると見られている。

その中心がヌーランド国務次官補(当時)とバイデン副大統領(当時)であると見られている。

米国はウクライナ国内の極右勢力=ネオナチ勢力と結託して暴力的革命を推進したと見られる。

これにロシアが反応して、ロシア系住民が支配的なクリミアをロシアが併合した。

東部ドネツク、ルガンスク両州でも軍事衝突が発生した。

この混乱を収拾するため、ウクライナ、ロシア、フランス、ドイツによる「ミンスク合意」が締結された。

「ミンスク合意」の核は東部ドネツク、ルガンスク州の親ロシア勢力支配地域の自治を広範に認めることである。

2019年に大統領に選出されたゼレンスキーはミンスク合意の履行を公約に掲げた。

ところが、ゼレンスキー大統領は、大統領就任後、東部2州に対する自治権付与の行動を一切示さず、逆に、ウクライナのNATO加盟を強行に推し進める姿勢を示してきた。

このことから、ロシアが強硬策に出たという経緯がある。

これらの経緯を中立、公正な立場から正確に説明しなければ、一般市民はことがらの正確な実態をつかむことができない。

私たちはマスメディアが流布する情報が市民の認識を特定の方向に誘導するものである点を正確に認識しておく必要がある。

※続きは3月1日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「ウクライナ紛争とバイデン大統領の深層」で。


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