2024年03月28日( 木 )

【福岡IR特別連載78】ここにきて、疑問だらけの長崎IR

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米国Bally'sが記者会見開催    3月30日、ホテルオークラ福岡(福岡市博多区)で米国の著名で歴史のあるIR投資開発企業Bally's社の社長ならびに幹部陣が来福し、福岡進出への正式な記者会見を行った(関連記事「【福岡IR特別連載】米国Bally'sが記者会見開催~民間先行の現実的計画」)。

 しかし、翌日の各報道機関の報道姿勢にはとても違和感を覚える。とくにRKB毎日放送と長崎新聞の報道姿勢は恣意的ともいえる。

 まず、すでにお伝えしているように、福岡IRの場合、今年1月末にはBally's社より、本件IR福岡進出への意志を明確に伝える"Letter of Intent(LOI)"が福岡市高島市長宛、福岡市議会伊藤議長宛、九州経済連合会倉富会長宛、九州IR推進協議会麻生名誉会長宛、在福岡米国領事館テイラー首席領事宛に提出されているのだ。

 当然ながら、このことは記者会見の席上で、MCが参加した報道陣に明確に説明している。それなのに、これらの提出先には取材もせず、提出されていない福岡商工会議所のみに取材をし、結果は"全然知らない"というコメントをひき出して、あたかも、他の組織も同様だと勘違いさせるような恣意的な報道に終始している。

 さらに、"ギャンブル依存症を理由に反対する"反対派のみを取材し、1万3,000人にのぼる福岡市への反対署名簿も露出させ、逆に、多数の賛成派、福岡青年会議所提出済みの3万0,000人の署名簿、福岡市行政へ依頼済みの"アイススケート場新設要望署名簿5万5,000人(本件IR施設に新設予定)、記者会見上のバックボードに掲載された約200社の地域を応援する中小企業とその関係者等に対して取材をせず、一切触れもせず、一方的で偏った報道をしているのだ。

 長崎IRとは比較にならない資金力のある米国企業が約5,000億円もの資金投資を当地福岡で実行しようとしているのに何を忖度しているのか?一報道機関が誰に遠慮して報道しているのか?報道機関としてあるまじき行為だ!

 とくに違和感を覚えるのは長崎新聞だ。記者会見上、彼らは執拗にBally's関係者に質問をしていたにも拘らず、翌日、福岡IRについて一切報道していない。これらはどうも長崎IRが、政治的に福岡IRに影響し、各報道機関の経済界の一部への忖度という姿勢を露呈しているのではないだろうか。

カジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパンにKYUSHUリゾーツジャパン

KYUSHUリゾーツジャパン株式会社法人登記簿(全部事項)    まず、本件落札者のカジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパン(以下、CAIJ)の本社所在地は東京都千代田区永田町2-17-17アイオス永田町で、議員会館と国会議事堂の鼻の先だ。わざわざ本社を六本木から移転しているのだ。さらに、今年2月に取締役を退任した吉村公尋氏は、現職の衆議院議員で立憲民主党の牧義夫氏の元秘書である。また現取締役の真鍋圭子氏は、林社長の妻で歌手の小林幸子さんのバンドメンバーを務めるプロのチェロ奏者だ。とてもふさわしい役員陣とは言い難い。

 さらに、同社の資本金は今年1月になって、ようやく1,000万円から1億975万円に増資している。昨年から、幾度となく、本件IRの事業資金と事業母体組織組成が見えないと言われ続け、現在も同様の状態のなかでだ。併せて、今年2月になってようやく、本件事業母体組織組成の為のSPC(特別目的会社)として、資本金僅か100万円で"KYUSHUリゾーツジャパン株式会社を設立登記している。

 共に、長崎IRの巨額な総事業費4,383億円を調達するための会社組織としては、まことに貧相で常識的には考えられない。長崎県行政は、後で日米経済安全保障問題に気付き、公開入札後に、資金力のある中華系のIR投資開発企業2社を、やむを得ず恣意的に外して、CAIJを落札者としたのだ。このお粗末な取り繕いからすべてが始まり、それは現在も進行しているのだ。

 また、KYUSHUリゾーツジャパンの代表取締役社長・大屋高志氏は、元カーチスホールディングスの代表者で、業績不振を理由に今年2月9日付けで解任され、「横滑り」で、同社に赴任している。さらに、同氏はフィールズの元代表取締役社長でもあり、パチンコ業界の大御所・山本英俊氏の傘下の幹部でもあった人物である。これらを長崎県行政は落札者として、現在も資金が付かない、組織組成ができないままで、国への区域認定申請をしようとしているのだ。

大屋 高志 氏
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 年間集客670万人(福岡IRは460万人)などの計画に投融資する金融機関などあり得ず、これでも、プライベートエクイテイ(未公開株式)ファンドなどの辻褄合わせの資金調達計画を企て、素人ばかりの長崎県行政と議会に承認させ、区域認定申請にこだわれば、さらに、長崎IRは墓穴を掘ることとなる。これらはあまりにも杜撰で、お粗末過ぎる顛末である。

 最後に、あくまでも信憑性の高い「噂」の段階ではあるが、長崎IRの中心人物、CAIJの代表者である林明男氏は、本件事業の巨額な億単位という準備資金を東京中心の投資家数人または数十人から募集し、もし本件事業が申請前に崩壊すれば、それが返済不能となり、大変なスキャンダルになるという関係者からの話もある。現実は本当に奇々怪界な状態かもしれない。

 福岡財界の一部関係者もこれらを知ってか知らずか、これに携わったことでの責任回避と自己保身を区域認定申請にこじつけ、あとは国の判断という"責任転嫁"で決着をつけようと考えているなら、とんでもない背信行為である。

 前述の記者会見の報道が誠に恣意的で違和感があることは、筆者だけではなく、多数のテレビ視聴者も同様に感じているのである。

 筆者は重ねて説明するが、本件IR誘致開発事業の対象カジノ業者は、大阪IRのMGMと福岡IRのBally'sの米国系2社しか一切チャンスはない。さらにIR関連法施設施工令(巨大なMICE施設制限)から東京、大阪、福岡の大都市圏しか採算は合わず、各投資家からみた投資効果はない。

 要は、本件の根本は「安倍・トランプ密約」での日米だけに限られた約束事なのだ。"大山鳴動"している和歌山と長崎は最初から、政府承認のあり得ない計画であり、これを理解していない各マスコミと関係者は誠に愚かで滑稽ですらある。

【青木 義彦】

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