2024年04月23日( 火 )

対米隷属岸田内閣支える凋落野党

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  NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。
 今回は岸田内閣安泰の要因は野党の堕落だと指摘した5月7日付の記事を紹介する。

連休に岸田文雄首相がロンドンを訪問し、金融街シティーで講演した。

岸田氏は「日本経済はこれからも力強く成長を続ける」と強調。

同時に「資産所得倍増プラン」を進める方針を示した。

岸田氏が自民党総裁選に際して掲げたのが「新しい資本主義」。

岸田氏は当初、「分配こそ重要」と述べていたが、これが「分配も成長も」に変わり、最終的に「まずは成長」に変化した。

経済政策の課題は「分配」と「成長」。

「分配」ではなく「成長」重視なら安倍・菅政治と変わらない。

岸田氏は、資本主義がこれまでにレッセ・フェール(自由放任主義)から福祉国家へ、福祉国家から新自由主義へと二度の転換を示したと述べた。

市場原理=市場経済は必然的に格差を生み出す。

資本主義が修正された主因が「格差拡大」だった。

自由放任主義は格差拡大をもたらす。

その弊害が拡大して福祉国家が追求された。

しかし、福祉国家が追求されるなかで、これが経済の効率を低下させるとして、再び自由放任に振り子が引き戻された。

結果が新自由主義の台頭である。

しかし、新自由主義が猛威を奮い、再び、福祉国家の方向に振り子を引き戻すべきとの声が広がっている。

この点について岸田氏は奇妙な主張を示す。

岸田氏は「新しい資本主義」を「資本主義のバージョンアップ」だと述べた。

意味が分からない。

岸田氏は資本主義が「市場か国家か」と「官か民か」の間で振り子のように揺れてきたとしたうえで、「新しい資本主義」においては「市場も国家も」「官も民も」の「官民連携」で新たな資本主義をつくっていくと述べた。

もっともらしく聞こえるが具体的な意味が不明。

新自由主義は埋めようのない格差拡大をもたらした。

この現実に対して、いま再び強い修正圧力が生じている。

振り子を引き戻すことが求められている。

バージョンアップだろうとグレードアップだろうと、実体のない言葉遊びにしか聞こえない。

岸田氏は格差拡大を「外部不経済の問題」と述べたが理解に苦しむ。

外部不経済とは市場を通じて行われる経済活動の外側に、個人や企業などの第三者の不利益が発生すること。

格差拡大は外部不経済ではない。

原稿を書いたのがスピーチライターであっても、正確さを欠く文章で評価を下げるのは岸田氏自身。

目新しい言葉を並べることより、政策の核心を分かりやすく明示することが大切だ。

多くの偶然が重なり岸田内閣支持率が高水準で推移しているが、本当の力量がなければメッキはすぐにはがれてしまう。

日本国民にとって必要な経済政策は意味の希薄な「バージョンアップ」でなく「分配」の是正だ。

猖獗を極める新自由主義の振り子を引き戻すことが何よりも求められている。

岸田氏の認識の甘さを象徴したのが「資産所得倍増プラン」。

金融広報委員会による「家計の金融行動に関する世論調査(2021年)」によると単身世帯の33.2%が金融資産ゼロ。

一世帯あたりの金融資産保有額平均値は1,062万円だが、分布の中央値は100万円。

ほんの一握りの者が多額の金融資産を保有しているだけで、圧倒的多数の国民が金融資産ゼロや保有金融資産100万円の状況に置かれている。

この状況を放置したまま資産所得倍増を叫んでも意味がない。

金融庁審議会は老後資金が2,000万円不足すると明らかにした。

「100年安心」と謳ってきた日本の年金制度が、100年どころか1年でも不安な状況なのだ。

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に、いま求められる経済政策の具体策を明示した。

最重要の施策はすべての国民に保障する最低水準の大幅引き上げ。

そのための具体策を明示している。

ぜひご高覧賜りたい。

岸田首相は宏池会所属の自民党議員。

2000年の森喜朗政権誕生以来、長く続いた自民党の清和政策研究会=安倍派支配構造を刷新する契機になると期待された。

岸田氏が所属する宏池会は外交におけるハト派指向、経済運営における福祉国家追求に特徴があると見なされてきた。

この意味で岸田氏が提示する「新しい資本主義」への期待が高まったが、時を経るに連れ、重要変化は生じないことが明らかになりつつある。

平和憲法に対する破壊的な取り組みも、安倍・菅路線と変わらない。

要するに、常に米国の顔色をうかがい、米国政府の命令に服従する対応だけに堕している。

ロシアのウクライナ侵攻は非難されるべき行為。

しかし、戦乱勃発の背景には、ウクライナによるミンスク合意不履行が存在する。

※続きは5月7日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「対米隷属岸田内閣支える凋落野党」で。


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植草一秀の『知られざる真実』

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