2024年04月26日( 金 )

大統領弾劾に直面するバイデン

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は「ウクライナ戦乱は米国が仕組んだ」と訴える6月9日付の記事を紹介する。

ウクライナ戦乱の本質は何か。

本質の見極めが重要だ。

見かけ上は2月24日にロシアがウクライナ領域での軍事行動を全面的に展開したから、「ロシアによる侵攻」とされている。

しかし、この直前の2月16日以降、ウクライナ軍が東部地域に対して大規模軍事攻撃を実施したことも明らかになっている。

ロシアの行動はミンスク合意を一方的に破棄するウクライナへの対抗、および東部「独立」共和国からの集団的自衛権行使要請に基づく行動との説明も存在する。

ウクライナ東部の2共和国は国際承認されていない。

このことから、ロシアの行動が国際法違反に該当するとの見解が欧米からは提示されている。

いずれにせよ、紛争の解決に武力を用いることは回避されねばならない。

国連憲章に反する行為。

この意味でロシアが批判されることには根拠がある。

ただし、国連憲章に反して紛争の解決に武力を行使してきた国はロシアに限らない。

国連憲章違反の軍事行動を展開してきた筆頭は米国である。

2003年に勃発したイラク戦争は米国による侵略戦争だった。

イラク文民の犠牲はウクライナ戦乱の比ではなかった。

しかし、米国を「悪の帝国」として批判する論調は広範には観察されなかった。

ウクライナ戦乱の背景に2004年と2014年のウクライナ政権転覆がある。

政権転覆を工作したのは米国である。

ウクライナの親ロ政権を米国が工作活動によって転覆した。

2004年政変は大統領選挙で選出された大統領を引きずり下ろすため、「選挙に不正があった」との主張が押し通され、強引に再選挙が実施され、政権が転覆された。

2014年政変は事実上の軍事クーデターである。

この軍事クーデターを工作したのも米国である。

米国はウクライナに潜伏するネオナチ勢力と結託して、市民による平和デモを暴力デモに変質させ、暴力革命によってウクライナ政府を転覆した。

創設された新政府は憲法の手続きによらずに樹立された。

この非合法政府を米国が率先して国家承認した。

ウクライナ東部で独立を宣言した2つの共和国を欧米は非合法政府だと主張するが、合法であるか非合法であるかは依って立つ立場によって変化する。

米国が二共和国を非合法政府と位置付けるなら、ロシアがウクライナ政府を非合法政府と位置付けることも可能になる。

2014年に樹立されたウクライナの非合法政府は政府樹立時点から東部ロシア系住民支配地域に対する弾圧、人権蹂躙、軍事攻撃を展開した。

これに対して東部二地域の独立共和国が応戦し、内戦が勃発した。

クリミアでは住民が投票によってロシア帰属を決定した。

ウクライナ内戦を収束させるために協議が行われミンスク合意が制定された。

2015年に制定されたミンスク2において東部二地域に対する高度な自治権付与が決定された。

2019年に大統領に就任したゼレンスキーはミンスク合意履行による東部和平の確立を公約に掲げた。

ところが、ネオナチ勢力に代表されるウクライナ民族主義者はミンスク合意履行に強く反対した。

2020年米大統領選でバイデンが当選すると、ゼレンスキーのスタンスが明白に変質した。

ゼレンスキーはミンスク合意履行による和平確立の方針を撤回。

ミンスク合意を破棄してロシアと軍事対決する方針を明示した。

2021年3月に発出した大統領令で軍事安全保障戦略を決定。

ロシアとの軍事対決路線を鮮明にするもので、クリミア武力奪還の方針を示すものだった。

同時にウクライナはNATO加盟の方針を鮮明にした。

2021年10月にはドローンによる東部二地域に対する軍事攻撃も実行した。

ウクライナが善でロシアが悪という図式は現実に適合しない。

ウクライナの対ロシア軍事対決路線を尖鋭化させ、ロシアの軍事行動を誘発した影の主役は米国である。

ウクライナ戦乱勃発は影の主役である米国が熱望し、誘導した事象であることを見落としてはならない。


※続きは6月9日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「大統領弾劾に直面するバイデン」


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