2022年06月26日( 日 )
by データ・マックス

【福岡IR特別連載87】長崎IRのハウステンボス、「癌」は九州電力・西部ガス・JR九州

 九州電力の名誉職・松尾新吾氏は84歳(1938年生まれ)、元JR九州の名誉職・石原進氏は77歳(1945年生まれ)、共に後期高齢者である。両御人共にお元気な姿なのは理解する。しかし、世間から見れば「老害」という側面があり、ご本人たち自身にその認識は一切ないだろう。とくにビジネス界においては、彼らを「忖度」し、遠慮して物を言わなくなっているのだ。近年、我が国の組織人には顕著で淋しい現状である。

 その健康年齢の延びは世界のトップレベルですばらしいことだ。しかし、「散りぬべき時、知りてこそ、世の中の花も花なれ、人も人なれ」という、若くして命を絶った細川ガラシャの有名な辞世の句がある。上に立つ者、常に“潔良し”をもつべき重要な哲学である。

 筆者は、長崎IRの「区域認定申請書提出」に関し、九州電力、西部ガス、JR九州をまとめて、福岡財界の一部として名指しで非難してきたが、それぞれのサラリーマン組織の全部に責任があると言っているわけでない。ただ、その組織の現役の責任者たちが、彼らの元先輩や元上司にいうべきことを言わないで「忖度」していては、それはそれぞれの組織責任であると言っている。  

 彼らは共に、当初から長崎IRの福岡財界における一部の“積極的推進協力者”である。とくに石原進氏がいまだその中心的な積極論者なのだ。彼は1969年、当時の日本国有鉄道に入社(東京大学法学部卒)し、その後は主に管理畑を歩いてきた人物である。俗にいう「国鉄官僚」なのだ。

 ちなみに、国鉄分割民営化後の現JR九州への入社は87年で、管理畑が主たる職務であった元代表取締役社長である。つまり、戦争でいうと、外部との実戦経験は少ない軍人官僚なのだ。しかし、彼の肩書きの多さは尋常ではなく、常識を逸脱し、驚嘆するしかない。本人も覚えきれてないだろう。

 また、前述の松尾新吾氏も石原進氏と同様、九州電力で管理畑を中心に歩いてきた人である。従って、両者は共に「準役人」気質なのである。筆者は前回もお伝えしているが、人間75歳を節目に社会的立場から引退すべきだと考える。自身、心地のよい肩書きはすべて返上すべきだ!

 現在、ハウステンボスの資本金は15億円で、資本構成はHISが66.67%、九州電力ならびに九電工を合わせて18.33%、西部ガスが10%、JR九州が3.33%、西日本鉄道は1.67%だ。要は福岡財界の一部で3割強の株式を保有しているである。福岡銀行グループ(十八親和銀行など)、西日本シティ銀行グループなどの七社会や福岡地所などは一切資本参加していない。

 これには、複雑で止むに止まれぬ理由があり、積極的に実行したものではない。2010年4月、ハウステンボス閉鎖危機による会社更生手続き(日本興業銀行から野村不動産グループ下の管理運営を経て)の際に、管轄裁判所の決定で現在のHISの澤田氏が継承し、この資本構成がやむを得ず、当時確定したのである。

 この時点の前では、当時の長崎県行政や佐世保市行政からの「ハウステンボスは絶対に潰せない」との福岡財界へのたっての依頼で、時の九州電力・松尾氏が中心となり福岡財界七社会に対して資本参加の協力要請をした。しかしながら、結果は前述の通りで、福岡地所は強く反対し、各金融機関も先行き不安から参加しなかったのだ。その後、大混乱し、急展開して現在のHISが突如現れ、継承したのが過去の経緯である。

 とくに、九州電力と西部ガスは同園内に地元自治体への供給義務と責任があるエネルギーセンター(現・HTBエナジー、累積赤字で債務超過、売却先を模索中)の存在が最も避けるべき問題で、これを止むなく実行したものだ。現在もハウステンボス存続危機の最大の障壁になっているのだ。

 また、JR九州も既存の大村線に新たなハウステンボス駅を新設、特別急行ハウステンボス号を走らせている状況下で、当時、各社には「止めたくても止めれない理由」があっての資本参加であったのだ。

 彼らは、この歴史の直接の主たる関係者であり、現在もその理由に変わりはない。希望の星だった長崎新幹線も武雄で止まり、直通運転は実現できず、今回のコロナ禍問題も合わせて相当な痛手となっている。

HIS中間決算、昨年に続いて過去最大の赤字

ハウステンボス イメージ    先日6月13日付の西日本新聞ほか、各社マスコミがHISの中間決算が過去最大の赤字を出したと一斉に報道している。これは筆者が前号で予想し、お伝えした通りだが、ここでの解説は各社の記事を参照いただきたい。

 要は、上記の通りで、長崎IRの実現など直接の各関係者自身の誰もが信じてもいないのだ。もし、信じているなら、既存の株主九州電力や西部ガス、JR九州自身が本件IRプロジェクトに資金投下するという「意志表示」をすべきである。しかし、皆さん、ハウステンボスでは“年間673万人もの集客計画”など「夢のまた夢」で、絶対に採算は合わないと理解しているのだ!それでも、今回の国への「区域認定申請書提出」なのである。これらは不可解で、一般的には理解不能である。

 従って、前述のごとく、彼ら自身は、本件IRを止めることはせず、長崎県行政と一緒に積極的に推進してしまったのだ。自らの業績を否定することは、その本人にとって堪え難い屈辱感なんだろうと推察する。

 彼らは、自身のプライドと名誉からの保身に走っているだけだ。結果、各組織の現役責任者はそれを「忖度」し、遠くからうかがっているだけで、肝心の「顔」は出さないのである(本件連載83号)。

 こうした理由から筆者は、本件は高い確率で途中で崩壊すると予測している。現に、HISはハウステンボスの転売を第三者に企図し、現実に動いているものと推測する。すでに、上記同園内の「HISエナジー」の売却意向はHIS自身が公にしているではないか?これは切っても切れないパッケージでもある。

 ゆえに、これらに疎い県や市の行政役人たちや田舎の議会関係者たちは、各々にその責任を国への“区域認定申請”で回避し、国の審査にその責任を委ね、これを免れようとしているわけである。誰も承認されるとは思っていないのだ。

 よって、この姿勢こそが、それぞれの関係者の「墓穴を掘っている」と解説しているのだ。もし、HISとカジノ・オーストリア・ジャパンにCBREが本件IRに関連なく水面下で団結し転売でもしたら、長崎県行政の大スキャンダルになるだろう。彼らは「背に腹はかえられぬ」のだ。

 本件行政や福岡財界人の一部の面子などに「忖度」するはずもなく、一切を考えてはいないのだ。本件の地元各関係者の誠にお粗末な成り行きでの話である。

【青木 義彦】

(86)
(88)

関連キーワード

関連記事