2024年04月27日( 土 )

浜田和幸・張大順「合文」書道展開催~漢字の魂に迫る(1)

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法政大学名誉教授   王 敏 氏
国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
甲骨文学者・書家  張 大順 氏

 浜田和幸氏と張大順氏による漢字の異彩~和合の美~「合文」書道展が6月13~17日、日中国交正常化50周年を記念して、東京の中国文化センターで開催された。書道展の開催にあたり、「字魂―その前生後世」をテーマに、法政大学名誉教授の王敏(わん・みん)氏、国際政治経済学者の浜田和幸氏、甲骨文学者の張大順(ちょう・たいじゅん)氏が日本と中国の文化のルーツである漢字について鼎談を行った。

漢字の魅力とは

法政大学名誉教授 王敏氏
法政大学名誉教授 王 敏 氏

    王敏氏(以下、王) 中国で生まれた漢字が、日本で使われるようになって千数百年が経ちました。日本は、高校を卒業するまでに常用漢字2,163字を学ぶ「漢字大国」です。なぜ日本でこれほどにも漢字が愛されているのでしょうか。浜田和幸氏と張大順氏のご意見を聞かせてください。

 浜田和幸氏(以下、浜田) 張氏は漢字のルーツとなる「甲骨文字」の研究の第一人者であり、甲骨文字の書家です。私たちの日常生活は漢字なしでは営めませんが、漢字の魅力は、1つひとつの文字が意味をもち、見たものすべてを表すことができる表意文字であることです。アルファベットは音で意味を表しますが、漢字は目で見るだけで意味が分かるため、漢字ほど便利で使い勝手の良いものはありません。

国際政治経済学者 浜田和幸氏
国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

    3,000年以上前に中国で生まれて日本に渡った漢字に加えて、日本から中国に渡った「和製漢字」もたくさんあります。日本で漢字が広く愛されているのは、使い勝手がよく、伝えたいことを漢字で書くことで大きなパワーがもらえるからです。ローマ字がアルファベットで「ローマンレター」と表されるのに対して、漢字は「チャイニーズキャラクター」と呼ばれるように、「キャラ」が立っています。アニメや映画も「キャラ」が勝負であるように、最も使い勝手の良い「キャラ」があるのが漢字です。日常生活で漢字の「キャラ」を研ぎ澄ませていくことが大切です。

 王 漢字にはどのような性質があり、どのように日本に入ってきたのかを教えてください。

甲骨文学者・書家 張大順氏
甲骨文学者・書家 張 大順 氏

    張大順氏(以下、張) 漢字には大きな力があります。私たちの心のなかにはまだ生まれていない多くの新しい漢字が潜んでおり、漢字は「天意」から生まれていると考えています。

 中国文化センターで4~5年ほど前に、中国の甲骨文字の講座を開催しました。漢字はただの文字ではなく、生きているため、パワーをもらうことができます。講座のなかで「漢字は、あなたにとってどのような存在ですか」と受講者に尋ねると、中国人ならば体から血が流れるような熱い言葉を選びますが、日本人の受講者は「(漢字はなくてはならない)空気のような存在」と答えました。

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 漢字の本質は、人々の身の周りのものからかたちがつくられた表意文字であり、1つひとつの文字が意味とともに命をもっていることです。私は、これまでになかった文字を新しい見方でつくり出そうという思いがあります。

(つづく)

【文・構成:石井 ゆかり】


<プロフィール>
王 敏
(わん・みん)
 中国河北省承徳市出身。大連外国語大学日本語学部卒。四川外国語大学大学院修了。宮沢賢治研究、日中比較文化研究。宮沢賢治を中国に初めて紹介したことで知られている。人文科学博士(お茶の水女子大学)。法政大学名誉教授、桜美林大学特任教授、拓殖大学客員教授、周恩来平和研究所所長。著書『周恩来と日本―日本留学の平和遺産』『嵐山の周恩来─日本忘れまじ!』(三和書籍、2019)、『禹王と日本人─「治水神」がつなぐ東アジア』(NHKブックス、2014)、『中国人の「超」歴史発想─食・職・色』(中公文庫、2013)、『鏡の国としての日本─互いの<参照枠>となる日中関係』(勉誠出版、2011)、『中国人の愛国心─日本人とは違う5つの思考回路』(PHP新書、2005)など。文化長官表彰。

浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
 1953年生まれ、鳥取県出身。国際政治経済学者。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。中国精華大学国家戦略研究院在外研究員。新日本製鐵、米国戦略国際問題研究所、議会調査局を経て、参議院議員に当選。総務大臣政務官、外務大臣政務官、2020東京オリンピック招致委員などを歴任。アルベルト・シュバイツアー国際貢献賞受賞(オーストリア・シュバイツアー協会)。アラブ諸国友好功労賞受賞(在京アラブ外交団)。日中ブロックチェーン協会理事長。現在、国際未来科学研究所を主宰。ベストセラー作家でもあり著書多数。最新作は『世界のトップを操る“ディープレディ”たち!』(ワック)。趣味の書道を通じて日中の文化芸術交流に尽力。全日中展顧問。

張 大順(ちょう・たいじゅん)
 1962年生まれ、中国西安出身。甲骨文学者、書家篆刻家、ユネスコ平和芸術家(2019)、世界華人傑出芸術家(2000、中国文化部)、甲骨文習刻図案破訳者。来日30年一途に研究・模索し、甲骨文書道独自の理論体系を確立。日本書壇の「甲骨文書道研究・表現第一人者」である。現在、甲骨文書道の古典をつくる「東京宣言」発表、甲骨文書道専門家百人育成プロジェクトや東京国際甲骨文芸術祭を実施。甲骨文書道と日本文化の融合を主な活動テーマとする。著書多数。海外華人書法家協曾聯合主席兼日本分曾主席、海外華人書道家協会連合主席、中国甲骨文芸術学会副会長、安陽学院特任教授、全日本華人書道家協会副主席、日本甲骨文書道研究会会長など。

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