2024年12月10日( 火 )

浜田和幸・張大順「合文」書道展開催~漢字の魂に迫る(2)

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法政大学名誉教授   王 敏 氏
国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
甲骨文学者・書家  張 大順 氏

 浜田和幸氏と張大順氏による漢字の異彩~和合の美~「合文」書道展が6月13~17日、日中国交正常化50周年を記念して、東京の中国文化センターで開催された。書道展の開催にあたり、「字魂―その前生後世」をテーマに、法政大学名誉教授の王敏(わん・みん)氏、国際政治経済学者の浜田和幸氏、甲骨文学者の張大順(ちょう・たいじゅん)氏が日本と中国の文化のルーツである漢字について鼎談を行った。

「合文」書道展に込めた思い

 王 日本では、言葉に宿っている力は「言霊」と呼ばれます。「言霊」とは、自然に備わった天意と人間の魂の交信ができたときに声がもつ力です。日本では、中国から渡った漢字を真似るだけでなく、新たに創造してきました。室町時代には、日本ではすでに1,000字以上の漢字をつくりました。明治時代には西洋の文明を漢字語に翻訳してアジアに向けて思想や技術を発信しました。言霊により、東西の文化が混ざり合いました。浜田氏は、今回の書道展のタイトルである「合文」という言葉にどのような気持ちを込めていますか。

 浜田 『大漢和辞典』には5万字、中国の『中華字海』には8万字を超える漢字が載っていますが、日常生活で使うのは1万種類と言われています。張氏とともに創作漢字に挑戦したいという思いから、今回の書道展を「合文」と名付けました。漢字は中国から日本に渡るとともに、日本でつくられた和製漢字も中国に渡り、漢字文化を通じた日中の交流が今日まで続いています。

 私はこれまで69冊の本を執筆しましたが、今回の書道展では、今までに執筆した69冊のうち25作品を選び、1冊の本に込めた思いを創作漢字1文字で表現することに挑戦しました。創作した漢字は中国にも日本にもない文字で、これからの世界を考えたときに大切な意味をもつ漢字25字となっています。

 未来の歴史1,000年を書いた本、『2001-3000 浜田和幸と100人の未来学者』の思いを伝える漢字では、2001年から3000年の1,000年間で予想もしないことが起こる可能性があるため、意識のアンテナを高く掲げて、感度を研ぎ澄まさないといけないという思いを、新しい漢字1文字で表しました。本のなかに「2020年に世界に感染症が爆発的に広がるため要注意」と書いたのは、未来を予見していたのです。

 日本から中国に渡った和製漢字としては、寿司屋で使われている魚編の漢字のほとんどが、日本でつくられたものです。日本の食文化の影響で、中国にはなかった漢字が広がりました。

 私の25作品と張氏の甲骨文字の作品25点を合わせて、日中国交正常化50周年を記念する50点の作品となっています。日中の新しい文化交流の時代を、新しい漢字で切り拓いていきたいと考えています。

1冊の本に込めた思いを創作漢字1文字で表現した浜田和幸氏の作品
1冊の本に込めた思いを創作漢字1文字で表現した
浜田和幸氏の作品

(つづく)

【文・構成:石井 ゆかり】


<プロフィール>

王 敏(わん・みん)
法政大学名誉教授 王敏氏    中国河北省承徳市出身。大連外国語大学日本語学部卒。四川外国語大学大学院修了。宮沢賢治研究、日中比較文化研究。宮沢賢治を中国に初めて紹介したことで知られている。人文科学博士(お茶の水女子大学)。法政大学名誉教授、桜美林大学特任教授、拓殖大学客員教授、周恩来平和研究所所長。著書『周恩来と日本―日本留学の平和遺産』『嵐山の周恩来─日本忘れまじ!』(三和書籍、2019)、『禹王と日本人─「治水神」がつなぐ東アジア』(NHKブックス、2014)、『中国人の「超」歴史発想─食・職・色』(中公文庫、2013)、『鏡の国としての日本─互いの<参照枠>となる日中関係』(勉誠出版、2011)、『中国人の愛国心─日本人とは違う5つの思考回路』(PHP新書、2005)など。文化長官表彰。

浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際政治経済学者 浜田和幸氏    1953年生まれ、鳥取県出身。国際政治経済学者。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。中国精華大学国家戦略研究院在外研究員。新日本製鐵、米国戦略国際問題研究所、議会調査局を経て、参議院議員に当選。総務大臣政務官、外務大臣政務官、2020東京オリンピック招致委員などを歴任。アルベルト・シュバイツアー国際貢献賞受賞(オーストリア・シュバイツアー協会)。アラブ諸国友好功労賞受賞(在京アラブ外交団)。日中ブロックチェーン協会理事長。現在、国際未来科学研究所を主宰。ベストセラー作家でもあり著書多数。最新作は『世界のトップを操る“ディープレディ”たち!』(ワック)。趣味の書道を通じて日中の文化芸術交流に尽力。全日中展顧問。

張 大順(ちょう・たいじゅん)
甲骨文学者・書家 張大順氏    1962年生まれ、中国西安出身。甲骨文学者、書家篆刻家、ユネスコ平和芸術家(2019)、世界華人傑出芸術家(2000、中国文化部)、甲骨文習刻図案破訳者。来日30年一途に研究・模索し、甲骨文書道独自の理論体系を確立。日本書壇の「甲骨文書道研究・表現第一人者」である。現在、甲骨文書道の古典をつくる「東京宣言」発表、甲骨文書道専門家百人育成プロジェクトや東京国際甲骨文芸術祭を実施。甲骨文書道と日本文化の融合を主な活動テーマとする。著書多数。海外華人書法家協曾聯合主席兼日本分曾主席、海外華人書道家協会連合主席、中国甲骨文芸術学会副会長、安陽学院特任教授、全日本華人書道家協会副主席、日本甲骨文書道研究会会長など。

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