2022年08月20日( 土 )
by データ・マックス

円キャリーではない、バフェットキャリーだ~日本資産デフレの最終章~(後)

 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
 今回は6月27日号の「円キャリーではない、バフェットキャリーだ~日本資産デフレの最終章~」を紹介。

バフェットキャリーの威力

 ブルーベイ・アセット・マネジメントのポジションの問題は、日本国債ショートにあるのではなく、円キャリーにある。2%のインフレターゲットが実現し、日銀がYCCを停止する時期はいずれ訪れる。とすれば、10年債利回りはYCC上限の0.25%を大きく下回る可能性は小さく、長期的にはYCCが変更されて0.25%を上回っていく可能性が高い。0.25%で10年国債をショートする(調達する)ポジションは的外れとはいえない。

 問題は日本国債ショートで調達した資金をどこで運用するかである。外貨資産ではなく、日本国内のハイリターンアセットに回せば大いなる利益を得られる可能性が出てくる。これを(運用スタイル、投資期間の違いはあるが)バフェットキャリーと呼んでみよう。

 それまで一貫して日本株投資に後ろ向きであったW・バフェット氏は2020年8月、約60億ドル(6,400億円)を投じて大手商社5社(時価総額合計14兆円)の5%を取得した。20年8月末、5大総合商社の株価は640~2,724円だった。現在の株価が 1,216~3,959円である5大総合商社投資分の評価金額は1兆円を超え、投資して2年足らずで2倍近いパフォーマンスを実現したとみられる。

 バフェット氏の投資資金は19年9月、20年4月の合計6,255億円の円建て債発行で調達されている。そのコストは平均ゾーンの10年債では利率0.44%、それに対して商社各社は配当利回りだけで4~6%という超ポジティブキャリーの状態にあった。これに資源価格急騰に連動した株価の値上がり益が加わり、大きな成果が得られた。

バフェットキャリーの次のターゲット不動産か

 円資金調達、円資産投資というバフェットキャリーの有効性を証明したといえる。これからバフェットキャリーの運用対象として有望なのは不動産、J-REIT、日本株(とくに高配当のバリュー株)であろう。ブルーベイ・アセット・マネジメントは日本国債ショートで調達した資金を高いリターンを持つ日本資産に振り向ける運用に踏み切るかもしれない。

 まずはグローバル投資家の円資金調達による不動産投資が期待される。日本の不動産価格は世界の趨勢からかけ離れて低迷しており、他国に比べ著しく割安になっている。また、2010年以降の金利低下趨勢のなかでもキャップレート(投資事業利益/不動産価格)は高水準を保っており金利との乖離が拡大、相対的に投資の魅力が高まっている。

図表3: 各国実質住宅価格推移

図表4: J-REITのキャップレート推移

 実際、海外からの不動産投資需要が高まっている。図表5は20年10月~22年3月に決済された10億円以上の国内不動産案件の集計による投資額上位20社であるが、そのうち10社が海外投資家(大半がファンド)となっている (東洋経済6月25日号)。これらの多くが円での資金調達をしていると推察される。

図表5: コロナ禍下での日本不動産投資額上位20社

日本株ブームの鏑矢になる可能性

 商社から始まり、今不動産で大きく飛躍しようとしているバフェットキャリーは、広範な日本株式への外国人投資の鏑矢となるのではないか。それこそ日銀が希求し続けてきたポートフォリオリバランスを通しての資産デフレ脱却を確実にする。図表6は日本の不動産価格であるが、黒田日銀の異次元金融緩和以降、大きく上昇に転じ、今回のYCC堅持により一段と弾みがつく趨勢にあることがうかがわれる。

 経団連による調査では、大手企業105社の夏のボーナス上昇率は13.8%と1981年以来最高の伸びとなっている。賃金上昇率も高まり2%インフレターゲット達成が視野に入ってくるかもしれず、今は円での資金調達のラストチャンスとも考えられる。

 ヘッジファンドによる日本国債ショートは日本売りではなく、日本株買いにつながる動きだと考えるべきだろう。

図表6: 日本不動産価格指数

(了)

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