2024年03月29日( 金 )

建設テック協会結成、自動化で課題解決へ

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(一社)建設テック協会
代表理事 中島 貴春 氏

(一社)建設テック協会 代表理事 中島 貴春 氏

 建設テック(建設×テクノロジー)に関する調査や環境整備などを通じて、国内における建設産業を持続的に発展させるための社会基盤実装を目的に、4月1日、(一社)建設テック協会が設立された。自身も建設テック企業の代表を務める建設テック協会の代表理事・中島貴春氏に、設立の背景と今後の予定について聞いた。

 ──建設テック協会を設立した背景について、お聞かせください。

 中島 スタートアップが業界団体に携わると、PRや営業目的と思われがちですが、もちろんそうではなく、建設テックを盛り上げるためです。協会では、国・事業者・消費者・有識者など多種多様な関係者が、利害関係なく気軽にコミュニケーションを取れるような仕組みづくりと、その運用をメインに行っていきます。

 きっかけは、私が代表を務める(株)フォトラクションがAIを活用したサービス開発を行う際、3つの研究室の建築学生とともにAI研究を行ったことでした。「建設AIスクール」と名付けて3年ほど続けてきたのですが、この活動は事業として建設テックに関わる私にとっても非常に有益でした。そのため、この取り組みをもっと広く、民間企業を巻き込んでやるべきだという結論に達し、協会の設立に至りました。

 建設AIスクールでは、コロナ禍でもウェブ会議を活用し、建設とAIに関する論文を8本出すことができました。建築学生は他大学と交流することが少ないので、学生にとっても貴重な機会となったのではないかなと思っています。また、こういった成果物に囚われず、関係者がコミュニケーションを取れる場が、建設テックにとってもっと広く必要だと思い、協会設立に至りました。一般的な業界団体と違う点は、成果物を求めないところです。

 ──建設業界は、他産業と比べてIT化が遅れていると思いますか。

 中島 とくに建設業界が遅れているとは思っていません。もちろん、歴史ある業界ですし、歴史ある企業も多いので、業務フローが変わることに対する抵抗はあるでしょう。ただ、現場ではスマートフォンやタブレットの普及以降、こういったデバイスが活用されているケースは珍しくありません。ただ強いていえば、大規模建築物は企画から完成まで数年かかることもあり、PDCAサイクルがどうしても長くなり、IT化しても効果が見えるまで時間がかかる特徴があります。

建設支援クラウド「Photoruction(フォトラクション)」 イメージ
建設支援クラウド「Photoruction(フォトラクション)」
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 ──学生時代からBIMに関わってきたようですが、業界のBIM活用についてはいかがでしょう。

 中島 設計フェーズでは、すでに普及段階にあるといっていいんじゃないでしょうか。ただ、施工フェーズではまだまだ普及しているとは言い難い状況だと思います。というのも、職人が優秀すぎるのです。2D図面を理解でき、施工精度も高いため、BIMの導入コストのほうが高くなってしまうのだと思います。また、2D図面は紙やPDFに簡単に出力でき、使い勝手が良いところもBIM普及の壁といえるでしょう。本来、BIMは後ろの工程を前倒しで行えるフロントローディングが最大のメリットなのですが、まだまだ生かしきれていないのが現状ではないでしょうか。

 ──地方の地場ゼネコンに効果的な建設テックとは。

 中島 当社の建設支援クラウド「フォトラクション」もそうですが、業務改善ツールは多くがクラウドサービスです。初期費用も少額なため、まずはいくつか試してみる、という感じからスタートするのがおすすめです。施工管理アプリは、数多くリリースされています。また、必ずしも施工に関わる部分ではないところから始めてみるのも、良いのではないでしょうか。

 ──建設テック協会の会員は、どういった構成なのでしょうか。

 中島 現在は芝浦工業大学、ジャスト、東京電機大学、戸田建設、BIMobject Japan、SBエンジニアリング、フォトラクションといった構成です。今後も大学などの教育機関、ゼネコンなどの建設会社、フォトラクションのような建設テック企業といった構成は継続していく予定です。新規会員は、今のところ既存会員の紹介でのみ募集しています。成果物は求めないという方針のため、いたずらに会員を増やすことはしないほうが良いという判断です。

 今後は、オンラインを中心に会員間で情報交換を行える「会員ネットワーク」、会員大学の学生を中心とした「建設テックゼミ」の開催、テーマごとに調査研究を行う「分科会ワーキンググループ(以下、WG)」の開催を積極的に行っていきます。

 「会員ネットワーク」では、自社だけでは気づけなかった建設テックの活用法や生産性向上のための取り組みを、気軽なコミュニケーションのうえで共有できるものにしていきたいですね。「建設テックゼミ」では、建設テックに触れる機会を提供し、建築学生へ多様な選択肢を提示できればと考えています。「分科会WG」では、たとえばAIやNFT、ブロックチェーンといったように、テーマを限定した調査研究チームを結成し、良質な議論の場として活用してほしいと考えています。主にこれら3種のコミュニティを通じて、「テクノロジーによる建設産業のさらなる発展を目指したエコシステムを創出する」というミッションをクリアしていきたいと考えています。

【永上 隼人】


<プロフィール>
中島 貴春
(なかじま・たかはる)
1988年生まれ。2013年、芝浦工業大学大学院建設工学修士課程を修了。同年、(株)竹中工務店に入社。大規模建築の現場監督に従事した後、建設現場で使うシステムの企画・開発およびBIM推進を行う。16年3月にCONCORE'S(株)(現・(株)フォトラクション)を設立。22年4月、(一社)建設テック協会を設立し、代表理事に就任した。

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