ドーハの奇跡、日本ドイツを破る! 日本2-1ドイツ

サッカー イメージ    こんな結果が待っているとは、誰が予想しただろうか。

 カタールワールドカップ・グループEの第1節・日本vsドイツの試合は、23日午後10時(日本時間)にキックオフを迎えた。

 アビスパ福岡出身のDF冨安健洋は先発メンバーを外れ、中盤のかなめ・MF守田英正もベンチスタート。故障から復帰したと思われていた両選手を欠く状態で、強力なドイツ攻撃陣にどう立ち向かうというのか。SNSにはメンバー発表の時点で悲観論が吹き荒れた。

 試合が始まると、はたして日本ゴールはドイツの猛攻に晒される。トップ下のMFミュラー、中盤を支配したドイツMFキミッヒが縦横にパスを走らせ、サイドからはDFラウム、MFムシアラが攻め上がる。前線のMFハフェルツは華麗なテクニックで日本DF陣を翻弄し、何度もゴールに迫った。

 前半8分には日本がカウンターを見せ、FW前田大然がネットを揺らすがこれは明らかなオフサイド。日本は前線からプレスをかけようとするが、GKノイアーが加わるドイツDF陣にもてあそばれるようにパスをつながれた。DF長友佑都、DF酒井宏樹らベテラン勢はドイツのスピードと運動量に翻弄され続けた。

 そして32分。MFキミッヒがボールを受けると、DFラウムが完全にフリーの状態でペナルティエリアに走りこむ。絶妙なパスを受けたラウムをGK権田修一が倒し、PKを与えてしまう。MFギュンドアンが冷静にこれを決め、ドイツが先制する。

 その後もドイツはまるで攻撃練習のように自由にパスを回し、シュートを放ち続ける。ボール支配率は81%対19%、パス本数464対105と、データからも前半のドイツがいかに圧倒的な優勢を保っていたかがよくわかる。

 しかし後半開始早々、日本のサッカーファンが度肝を抜かれる事態が待っていた。森保一監督が動いたのだ。DF冨安健洋を投入し、5バックにスイッチ。さらに57分には切り札のMF三笘薫、FW浅野拓磨をピッチに送り込む。試合中のシステム変更も、攻撃的な選手を早い段階で投入することも、これまでの森保采配にはなかったことだ。システム変更で相手とのマッチアップに齟齬がなくなり、日本の攻守が嚙み合い始める。

 思わぬシステム変更に対応しきれないドイツ代表をしり目に、森保監督はさらに勝負手に出る。71分にMF堂安律を投入。74分にDF酒井宏樹を下げると、MF三笘薫とMF伊東純也をウイングバックに起用。ウイングバックは守備のタスクもあるが、前方にスペースがある状態でボールをもてるポジション。MF伊東のスピードと運動量、MF三笘の冷静なキープ力と巧みなドリブルがより生きるポジションだ。

 そしてついに、この策が的中する。75分、MF三笘が左サイドでボールをもつと、するすると持ち上がる。三笘は相手DFの動きを見極めてエリア内にスルーパスを送り、さらにペナルティエリアに侵入。反応したFW南野拓実は中央のFW浅野にグラウンダーのクロスを送る。これはGKノイアーに阻まれるが、こぼれたボールに詰めてきていたのはMF堂安律だった。殊勲の同点弾だ。

 奇跡はこれで終わらない。83分、自陣で得たフリーキックをDF板倉滉が大きく蹴り出すと、反応して抜群のスタートを切っていたFW浅野がドイツDFを置き去りにしてトラップ。GKノイアーの頭上を突き抜く浅野のシュートは、日本サッカーに消えない金字塔をもたらす一撃となった。試合はそのまま終了し、2-1で日本が勝利を収めた。

 ドイツはW杯で4度、欧州選手権で3度の優勝を誇る強豪中の強豪。それを打ち破った日本代表の選手、監督、コーチ、スタッフの皆さんには、まずは感謝の気持ちを伝えたい。だがその一方で、まだ予選リーグは1試合目。あと2試合で勝ち点を積み重ねなければ、この先に待つ決勝トーナメントに進出することはできない。日本戦の後に行われたスペイン対コスタリカ戦では、スペインが7-0という記録的なスコアで圧勝を収めている。

 奇跡的な勝利を収めたのは事実だが、ワールドカップという大会においてはまだ何も成し遂げていない。それを一番よくわかっているのは、試合後も冷静だった選手たちだ。まずはコスタリカ戦でいい結果を残し、余裕をもってスペイン戦を迎えられることを願おう。

【深水 央】

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