奇跡を台無しにする惨敗 日本0-1コスタリカ

サッカー イメージ    カタールワールドカップ・グループEの第2節・日本vsコスタリカの試合は、27日午後7時(日本時間)にキックオフを迎えた。

 第1節のドイツ戦では、世界を驚かせる勝利を挙げた日本代表。だが、このコスタリカ戦は、せっかくのその勝利を帳消しにする試合となってしまった。この試合に勝っていれば、決勝トーナメント進出はほぼ確定。プレッシャーのない状態でスペイン戦を迎えることができたはずだ。

 しかし、試合はコスタリカ側の注文通りに進んでいく。堅固なブロックで守りを固めるコスタリカに対し、日本はそのブロックの外側で漫然とボールを回し、決定機をつくれない。後半になってようやく攻撃的な選手を送り込むが、ゴールは相変わらず遠いまま。そして81分、DF吉田麻也のクリアミスをコスタリカDFケイセル・フレールに決められ、そのまま敗北を喫してしまった。

 “戦犯”は、やはり森保一監督だ。

 最大の疑問点は先発メンバー。ドイツ戦から5人を入れ替え、1トップにはW杯初出場となるFW上田綺世。2列目にはこれも初出場のMF相馬勇紀とドイツ戦で得点を挙げたMF堂安律。ボランチにはMF守田英正、右サイドバックはDF山根視来という布陣だ。

 負傷が伝えられる右サイドバックのDF酒井宏樹が替わるのは理解できるが、なぜFW浅野拓磨、MF三笘薫、MF伊東純也らドイツ戦で大活躍したメンバーを先発起用しなかったのか。もし「主力メンバーを休ませよう」という発想があったなら、それはあまりにも甘すぎる。日本の決勝トーナメント進出が決まっているか、コスタリカの敗退が決まっているならまだしも、どちらにも可能性がある以上はそんな勝手な目論見が通用するはずもない。

 ドイツ戦と連続で出場したメンバーにも疑問が残る。攻撃の中心を託されたMF鎌田大地は見るからに身体が重そうで、パスにも本来の冴えが見られない。なぜ不調の鎌田を、試合終了まで引っ張ったのか。攻撃的なセンスを求めるなら、ベンチにはMF柴崎岳がいた。

 DF長友佑都はいつもどおりのハッスルプレーを見せるものの、結局は前半終了時点で交代。長友に代わって出場したDF伊藤洋輝は緊張からかプレーが固く、同じ左サイドのMF三笘薫との連携がまったく合わない。伊藤は失点にも絡んでしまい、自信を失ってしまったのではないだろうか。もし伊藤が試合開始時点からプレーしていれば、彼本来のプレーができていたかもしれない。MF三笘自身はキレのあるドリブルでチャンスをつくっていただけに、その三笘を生かす手はずを整えなかった森保監督の責任は重い。

 FW上田綺世にとっても、あまりにも酷なW杯デビューとなった。本来、上田は前線で身体を張ってボールを収めるタイプではなく、相手DFの裏を突いた動きでフリーになり、豪快なシュートを叩き込むストライカー。守備を固める相手に有効なポストプレーを求めるなら、森保監督はFW大迫勇也を招集すべきだった。

 そして、スペイン戦で大車輪の活躍が必要になる中盤守備の要・MF遠藤航は2試合連続のフル出場で疲労困憊。世界最高のテクニックを誇るスペイン代表のパス回しやドリブル突破を、どうやって止めるというのだろうか。

 「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉をよく引用していたのはプロ野球の野村克也監督だが、せっかくの「不思議の勝ち」を生かすことなく「当然の負け」を演じてしまった日本代表。決勝トーナメントに進出するためには、次のスペイン戦で勝つか引き分けなければならない。

 ドイツ戦以上の「奇跡」を起こすことができるか、日本代表の選手たちと森保一監督にこれ以上の引き出しがあるのか。スペインとの第3節は12月2日午前4時(日本時間)キックオフだ。

【深水 央】

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