歴史を書き換える奇跡再び! 日本がスペイン破り決勝Tへ

サッカー イメージ    カタールワールドカップ・グループEの第3節・日本vsスペインの試合は、2日午前4時(日本時間)にキックオフを迎えた。

 前節コスタリカに敗れた日本代表は、このスペイン戦で引き分け以上が必要という厳しい条件で試合に臨んだ。スペインに勝てば勝ち抜け確定、負ければ敗退。引き分けの場合は同時刻にスタートしたドイツvsコスタリカ戦の結果に左右されるという状況だ。

 相手のスペイン代表は、前節はドイツと1-1で引き分け、第1節のコスタリカ戦では7-0で圧勝した強豪。メンバーにはFCバルセロナ、チェルシー、マンチェスターシティなど世界中のビッグクラブでプレーする選手たちが並ぶスター軍団だ。

 対する日本代表は、負傷が伝えられたMF遠藤航、DF冨安健洋がベンチスタートとなり、DF谷口彰悟が先発出場。センターバックを3枚置く、3バックでゲームに入った。

 試合はスペイン代表がその代名詞でもある華麗なパスワークを発揮する展開でスタート。日本は前線のFW前田大然からプレスをかけようと試みるが、MFブスケツを中心としたスペインのパス回しに影響を与えるには至らない。8分にはMF伊東純也が決定機を迎えるが、右足のシュートは枠を外れてしまう。

 そして、先制のゴールを奪ったのはスペイン。12分、DFアスピリクエタが右サイドでボールをもつと、素早くクロスを上げる。これに反応したFWモラタがDF板倉滉を制してヘディングで合わせ、ゴールネットを揺らした。

 試合前は「スペインは引き分けも視野に入れて、積極的にゴールを狙ってこないのでは?」と希望的観測をもっていた日本のサッカーファンも多かったと思うが、スペイン代表の思惑は違った。「これは厳しい……」と、早朝のテレビの前で唇を噛んだ人も多かったのではないだろうか。日本代表はほとんどシュートまで行くことができないまま、前半が終了する。

 だが、日本代表の選手たちの考えも同じだった。彼らは引き分けるつもりも、もちろん負けるつもりもなかったのだ。

 スペイン有利の形勢が一気に変わったのは、後半開始直後だった。選手交代でピッチに立ったMF堂安律、MF三笘薫が躍動する。MF三笘は左ウイングの位置から前線のFW前田と連動してプレスをかけ、スペインのパスコースを限定していく。

 そして48分、右サイドでMF伊東が身体を張って競り合ったボールを拾ったMF堂安が一瞬のステップワークで相手のマークを剥がすと、左足を一閃。強烈なシュートはGKウナイ・シモンの手を弾いてゴールに吸い込まれたのだ。

 さらにMF堂安・MF三笘の輝きは止まらない。51分、またもMF伊東が右サイドでボールを握ると、MF田中碧からMF堂安に展開。MF堂安は今度は右足でのグラウンダークロスを選択する。ゴール前を通過したこのボールを、ラインぎりぎりに飛び込んだMF三笘が折り返し、走りこんでいたMF田中碧が身体ごと押し込んでゴールを奪う。なんと日本代表が勝ち越しに成功したのだ。

 もう1試合のドイツvsコスタリカでは、両チームの意地がぶつかり合い、一進一退が続く。一時はコスタリカがドイツをリードし、決勝トーナメント進出に手をかけようという展開に至った。日本vsスペイン戦のスタジアムにも刻一刻とこの状況が表示され、グループリーグをどの国が勝ち抜けるのかはまったく予断を許さない状況が続く。

 そして、この状況にけりをつけたのはアビスパ福岡から世界に羽ばたいた男、DF冨安だった。69分にピッチに入ったDF冨安は右ウイングバックのポジションにつき、守備を完全に安定させる。FCバルセロナ期待の若手FWアンス・ファティが何度も突破を試みるが、DF冨安はまったく危なげなく対処。左サイドのMF三笘も、英プレミアリーグ仕込みの一対一守備でFWフェラン・トーレスを完封してみせた。

 試合はこのまま2-1で終了。日本がドイツに続いてスペインを破り、グループEを首位で通過するという望外の結果となった。なお、グループEの最終順位は1位日本、2位スペイン、3位にドイツ、4位がコスタリカとなった。ドイツ代表は2大会連続のグループリーグ敗退となった。

 ドイツ戦の勝利だけで終わっていたら「奇跡」でしかなかったかもしれない。だがスペインをも撃破した今となっては、この結果はフロックではなく、日本の選手たちのクオリティが世界でも通用するものだと証明されたといっていいだろう。また、海外リーグで活躍した経験がある選手たちだけでなく、Jリーグ経験のみのDF谷口がこの舞台で堂々とプレーしたことは、Jリーグでプレーする選手たちにとっても大きな励みになるはずだ。

 そして、選手たちがこのスペイン戦勝利で満足していないことも大きい。とくに前半で退いたMF久保建英が、試合後のインタビューで「あの出来で自分が交代になるとは思っていなかった。みんな僕のコンディションが良いことはわかっていたはず」と悔しさを露わにしていたのは頼もしいところだ。

 決勝トーナメント1回戦の相手はクロアチア。2018年ロシアワールドカップで準優勝をはたした強豪。日本はワールドカップでは1998年フランス、2006年ドイツと過去2回対戦し、1敗1分けだ。クロアチア代表にはレアルマドリードのMFモドリッチ、チェルシーのMFコヴァチッチらワールドクラスの中盤が揃う。はたしてどんな戦いを見せてくれるだろうか。

 クロアチア戦は日本時間で12月6日(火)午前0時キックオフだ。

【深水 央】

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