明日につながる、希望ある敗退 日本1-1クロアチア(PK1-3)

サッカーゴール イメージ    カタールワールドカップ・決勝トーナメントの日本vsクロアチアの試合は、6日午前0時(日本時間)にキックオフを迎えた。

 PK戦とは、あまりにも残酷な儀式である。

 本来、サッカーの試合において90分を終えて同点なら、試合は引き分けで終わる。PKはあまりにも運に左右される形式で、その試合の本質を表しているとはとてもいえない。ワールドカップの決勝トーナメントでPK戦が行われるのは、あくまで上に進むチームを決めるためだけ。PK戦で敗れたからといって、試合そのものに敗れたことにはならない。

 日本代表は、スペイン戦の先発メンバーから3人を入れ替えてクロアチア戦に臨んだ。アビスパ福岡出身のDF冨安健洋はワールドカップ初先発となった。

 試合は高い個人技と身体能力を駆使し、繊細さとラフさを使い分けて攻撃の圧力をかけるクロアチアと、「いい守備からいい攻撃を」という言葉通りのハイプレスとショートカウンターで応戦する日本、という構図でスタートする。

 前線を走るFW前田大然は二度追い、三度追いとスプリントを重ねて相手選手を追い込み、ディフェンスラインではDF冨安、DF吉田麻也、DF谷口彰悟という九州出身の3選手が鉄壁の守備を見せる。

 走り続けたFW前田大然が、ついに報われたのが43分。日本はコーナーキックからMF堂安律がショートコーナーから鋭いクロスを上げ、DF吉田麻也が競り合ってこぼれたボールにFW前田が走りこんで先制のゴールを挙げた。

 しかし、試合巧者のクロアチアも譲らない。55分、右サイドのDFロブレンが右足で送ったクロスはゴール前中央のFWペリシッチにドンピシャリで合ってしまい、同点に追いつかれる。

 ここから試合は、ボディブローを撃ち合うようなゴツゴツした消耗戦に入っていく。日本の切り札・MF三笘薫がピッチに入ると、クロアチアは常に2人以上で厳重に警戒。相手DFのあいだをドリブルで切り裂いたMF三笘がここしかないというシュートコースに強烈な一撃を放つが、これはGKリバコビッチの正面に飛んでしまう。

 一方でクロアチアの攻撃をけん引し続けたエースMFモドリッチは、日本の守備を完全に切り崩せずに交代に追い込まれた。試合は、1‐1のまま延長まで終了。120分間、両チームの選手たちは堂々と死闘を繰り広げたのだ。

 PK戦の結果は、クロアチアの勝ち上がりとなった。だが、ここまでの日本代表の戦いは、間違いなく「新しい景色」を見せてくれた。ドイツとスペインを破って決勝トーナメントに進出したという結果はもちろんのこと、なにより素晴らしかったのは日本の選手たちが世界トップクラスの選手たちと何の遜色もなく渡り合っていたことだ。これは、Jリーグ30年の歩みが、間違っていなかったことを証明している。

 もちろん、DF冨安やMF三笘が世界最高峰のイングランド・プレミアリーグで活躍するなど、日本の選手たちが世界に進出しているという事実もある。だが、アビスパ福岡の育成組織で育ったDF冨安や、高校在学中に松本山雅(当時J2)の練習生としてキャリアをスタートしたFW前田大然のように、ワールドカップで世界と戦った日本代表選手たちは、ほとんどがJリーグで育ち、戦い、世界へ羽ばたいていったのだ。カタールワールドカップでの日本代表の躍進は、Jリーグあってこそのものなのだ。

 次のワールドカップへの挑戦は、クロアチア戦が終わった今、すでに始まっている。そこで戦う未来の日本代表選手は、もうJリーグのピッチに立っているかもしれない。

【深水 央】

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