2024年05月09日( 木 )

【BIS論壇No.404】インドの時代到来か

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 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
 今回は1月15日の記事を紹介する。

インド イメージ    『週刊エコノミスト』(毎日新聞出版)は、12月27日~1月3日号の「世界経済総予測2023」特集号で「インドの時代の始まり、中国の終わり」。1月17日号で「これから跳ねる!新興国インド経済~人口世界一、10%成長でGDP世界3位に」~高成長のインド、追うインドネシア、べトナム、フィリピン~の特集号を発刊。新年早々、インドの発展に注目している。

 11月14日の日本経済新聞は「インド、途上国の盟主狙う~グローバルサウス会合オンライン開催」と報じ、本年9月8~9日インドで開催のG20(20カ国・地域)の議長国を務めるインドの動きを詳細に報じている。

 インドのモディ首相はグローバルサウス(南半球を中心とした途上国)の声をG20の議論に反映させると強調。インドは経済成長が続くなか、南アジアだけでなく、途上国全体の盟主としての立場を確立しようと、120カ国以上を招待。モディ首相は演説で「グローバルサウスは未来に関して最大の利害関係を有しており、人類の4分の3以上が私たちの国に暮らしている」と述べたという。

 人口14億人台のインドは2023年に中国を抜き、人口世界一となる。15歳から64歳の生産年齢人口は9億5,000万人と総人口の7割を占め、消費市場としても、生産拠点としても中国に次ぐ潜在力がある。4年後の27年には国内総生産(GDP)で日本を抜き、世界3位になるとIMFは予測している。

 『日本企業の今後3年間の事業展開有力国としてインドが中国を抜き、首位に立った。さらに、2050年までにインドネシアがGDPで日本を抜き、インドに次いで4位となる。「『未来の巨大市場』に出遅れまいと日本企業の『インド進出熱』は過熱するばかりだ」、「『世界の工場』と位置づけられてきた中国は米中対立から地政学リスクが高まっており、リスク分散の観点からも、インドでの『ものづくり』は有効だ」と「エコノミスト」は1月17日号で報じている。しかし、カースト身分制度など問題もある。

 筆者がコロンビア大学留学時ご指導いただいたノーベル賞経済学者・故ロバート・マンデル教授はインドが中国に迫るのにはまだまだ時間がかかるだろうとの慎重意見であった。

 このような趨勢下、インドへの日系企業の進出は4,000社を超え、日系自動車会社はインドで5割近いシェアを誇り、とくにインド進出で最大の成功例といわれるスズキは新工場での生産を100万台とし、既存の工場を合わせると年間325万台と最大の生産規模になるとみられる。インドは日本の新幹線方式での貨物高速鉄道も日本の支援で建設中である。

 日本が注力しているFOIP(自由で開かれたインド太平洋構想=ASEAN10カ国に米、印、豪、NZ、韓国、日本の16カ国が参加)や、米国のIPEF(インド太平洋経済枠組み=14カ国参加)、QUAD(米国、豪州、日本、インド)などインドは太平洋における重要国として浮上しつつある。さらに将来発展するアフリカと印僑の関係も強固で日本としてはポストチャイナとしてインドとの関係構築、強化にさらに尽力すべきである。BISは32周年記念として本年、インド訪問ミッションを派遣予定だ。興味ある会員各位の参加を期待する次第である。


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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