2024年10月14日( 月 )

デザインで生み出す防犯効果 実践的指導と都市公園の賑わいづくり(1)

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福岡大学工学部社会デザイン工学科
景観まちづくり研究室 教授
柴田 久 氏

 2014年「グッドデザイン賞」、15年「第26回福岡市都市景観賞」大賞を受賞した福岡を代表する都市公園「警固公園」。この素晴らしいデザインをかたちにしたのが、福岡大学工学部教授の柴田久氏。そして、当時の教え子たちだ。単なる学び舎としてではなく、実践的な技術研鑽の場として活動を続ける同研究室にて、話を聞いた。

 ――福岡で公園といえば最初に名前が挙げられるほど有名な警固公園ですが、再整備におけるデザインを担当されるようになった、そのきっかけとは何だったのでしょうか。

警固公園の中心性評価データ 警固公園の中心性評価データ

 柴田 県警、市役所(みどりのまち推進部)、住民とが中央警察署に集って、公園内の防犯や利便性向上について議論する警固公園対策会議というのが開かれていたんです。ただ議論を進めていくなかで、話がなかなかまとまらず、新しいデザインの方も上手く決まっていかなかった。そこで、たまたま私の活動や研究についてご存知だった県警の方が、『よろしければ対策会議に参加していただけませんか?』と声をかけてくださったんです。これが最初のきっかけでした。私が実施していた活動というのは、城南区における公園の暗がり調査や、公園に設置してある電灯等の設備、さらに周辺を含めた治安の状況を調査し、地域の皆さんと一緒に、そのデータを防犯まちづくりに役立てていこうというものでした。また研究テーマの1つとして、『公園の中心性評価』にも取り組んでいました。その研究対象として中央公園、警固公園でフィールドワークを行っていたんです。そういった経緯があるなかでのご縁だったわけです。

 ――『公園の中心性評価』というのは、具体的にはどういったものなのでしょうか?
 柴田 アメリカのランドスケープ・アーキテクト(風景、庭園、空間デザインの専門実践者)のランディ・ヘスターさんが提唱する、公園がその場に集う人たちにもたらす心理的効果や、公園そのものが持つ人を引き付ける力、引力や訴求力といったものを指標化するものです。私は、それを日本の公園やそのほかの公共空間デザインにも応用していこうと、活動、研究を続けているわけです。

 ――警固公園の再整備には、そういった新しい分野からのアプローチもあったわけですね。
 柴田 最初は公園整備とはまったく関係なく、あくまで日々の活動、研究テーマとして取り組んでいたんです。人がどこをどういう風に歩いていくのか、その動線調査や調査結果のデータの蓄積。これらの実地データに中心性評価を取り入れ、周辺施設や環境との調和を念頭にデザインを手がけました。対策会議でのプレゼンでは、集まった皆さんに公園内で人が歩いている動線の調査結果を実際に見ていただき、「ここには人が集まりやすいのですが、ここは全然人が通っていませんね」「人が集まっていないところはやはり犯罪行為の温床になる傾向が強いですね」などと、わかりやすく説明することができたと思います。犯罪行為の有無については、実際に地域の防犯ボランティアの方からも話を聞かせていただき、データ上ではわかり難い利用者視点もしっかり取り入れ、新しいデザインに生かされています。

 ――ただデザインをすればいいというわけでなく、周囲の環境調査まで含め、実際の作業内容は多岐におよぶわけですね。
 柴田 そうですね。他県から観光客を呼び込めるような、単なる目立つ場所にするのではなく、地域の方にも長く愛される場所にすることが必要ですから。地方創生が声高に叫ばれるなか、どうしてもインパクトに重きを置いたデザインをという話になりやすいのですが、大事なのは『いかにその場所を日常的に使ってもらえるか』です。警固公園も、そのことを念頭にデザインさせてもらいました。加えて今回の再整備に関しては防犯面、とくに夜間の安全性が大きな課題になっていましたので、その不安を取り除けるようなデザインを実現するために、先にも述べましたが防犯ボランティアの方から直接話を聞いたり、学生と一緒に深夜まで利用者の実態調査を行ったりもしました。平日はもちろん、休日もです。大変でしたが、普段公園を利用している人たちの動きをチェックして、どこが避けられているのか、そういった危険だと思われている場所をどういう風に変えればいいのか、知ることができました。しっかり調査したうえでその結果をデザインに反映することができましたので、非常に良いものに仕上がったなと思います。

(つづく)
【代 源太朗】

<INFORMATION>
■福岡大学
所在地:福岡市城南区七隈8-19-1
創 立:1934年
TEL:092-871-6631
URL:http://www.fukuoka-u.ac.jp

■景観まちづくり研究室
所在地:福岡大学キャンパス内 5号館別館3F
TEL:092-871-6631

 <PROFILE>
柴田 久(しばた・ひさし)柴田 久(しばた・ひさし)
1970年、福岡県出身。東京工業大学大学院 情報環境学専攻博士課程修了。景観工学、都市計画学を専門とし、景観デザイン論、まちづくり演習等の講義を担当。土木学会、都市計画学会、建築学会等に所属。2014年に『グッドデザイン賞』、15年に『土木学会デザイン賞最優秀賞』『第26回福岡市都市景観賞大賞』を受賞するなど、数々の受賞歴を持つ。

 
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